トンネルの全体設計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 02:31 UTC 版)
「笹子トンネル天井板落下事故」の記事における「トンネルの全体設計」の解説
事故の原因である天井板は、トンネルにおける「換気ダクト」の役割を果たす為の空間を構成していた。 吊り金具同士の間は隔壁で仕切られており、覆工コンクリートと天井板・隔壁で仕切られた一方はトンネル内の車の排ガスを換気機を使って排出する排気用、もう片方は外部の新鮮な空気を取り入れる送気用の空間として利用されていた。これは「横流換気方式」と呼ばれる構造で、コスト面で不利となるが、交通換気や自然風に影響されないもっとも安定した換気方式として長大トンネルや海底トンネルで多く採用されてきた方式である。笹子トンネルは交通量が多く大量の換気が必要とされていたため、天井板からトンネル最上部まで5.3メートルあり、他のトンネルと比べて点検が困難だったという。 今回の事故では天井板が崩落したことにより換気ダクトや煙除去装置の機能が失われ、煙の除去が困難になった。また、崩落した天井板は、1枚の隔壁に幅の長さが同じ天井板が左右2枚ずつ直角に交わる形で固定されていたことがわかっており、1枚が崩落すると同時に隣接する天井板が連鎖的に崩落したものと見られている。西山豊は天井板のトンネル全体にわたる連結構造が大惨事をまねいたとして、設計ミスを指摘している。また、車両の天井板接触事故(2005年、2008年、2012年)が天井板崩落の引き金になったのではないかとしている。笹子トンネルの現地計測を踏まえて、大月側L断面内の非常駐車帯(A-3)の設計と施工が、崩落に大きな関係があるのではとしている。 なお、横流換気方式は自動車の排ガス抑制技術の向上もあって2012年当時では少数派になりつつあり、笹谷トンネル(山形自動車道)、安芸トンネル・武田山トンネル(ともに山陽自動車道)のように不要になったとして天井板を撤去するトンネルもあった。同様の構造であった笹子トンネル下り線でも、今回の事故に併せて換気方式を横流換気方式から変更し、天井板を除去している(後述)。
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