トルコの態度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/20 14:26 UTC 版)
第二次世界大戦後の国際法の取扱いでは、自然に出来た海峡等を航行する艦船に対し、海峡に面する国は制限を加えることができないという概念が成立しており、かかる慣習は国連海洋法条約第3部に法典化されている。ボスポラス海峡等も同条約上の国際海峡に該当し、通過通航権の行使として軍艦等も含めた自由航行ができてしかるべき考えに至るが、トルコ政府は、ボスポラス海峡等は海洋法条約第35条(c)により通過通航権の対象外となる旨主張して、一貫してモントルー条約の緩和には否定的な態度を取っている。 これは、トルコにとっては一度喪失した主権を長年の交渉で自国に有利な形で取り戻したという経緯から、緩和することで再び海峡地帯に他国が干渉してくることへの警戒感があること。海峡が地政学上の要衝であり、東西冷戦時には海峡の出入り口付近に米ソの艦艇が対峙し、一触即発状態にあったこと。また、1980年代以降、タンカーなどの船舶の大型化と航行量が急増したことにより海難事故が頻発、海峡の過密化が深刻な問題となっているからである。 特に、冷戦終結後は後者が問題となっている。海峡に面した大都市イスタンブール近辺で、海難事故に起因するアンモニア流出事故が発生[いつ?]。風向きによっては、甚大な人的被害が発生してもおかしくない大事故となった。このためトルコ政府は、有害物質を積載した船舶の航行に非常に神経質となっており、自国法により廃棄物等を載せた船舶の航行を制限するなど、むしろ強化を図りたい意向を持っていると推測される。 本来海峡の空母通過は認められていないが、ウクライナ空母ヴァリャーグが中国へ回航される際には、中国側がトルコへの観光客増加を約束するという政治的折衝で妥協し通過を許可した。 2022年2月のロシアのウクライナ侵攻を機に、黒海の沿岸国かどうかを問わず、すべての国に対して軍艦の海峡通過を認めないとする通告をトルコ政府は2月28日に発表した。ただし、条約により沿岸国の船舶が母港に寄港することは例外的に認められているとしている。また、戦争の当事国であるか否か、また黒海沿岸国であるか否かを問わず適用されるとしている。
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