デバイvs.アインシュタイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 07:21 UTC 版)
「デバイ模型」の記事における「デバイvs.アインシュタイン」の解説
デバイ模型とアインシュタイン模型はどの程度実験値と一致するのであろうか?どちらも驚くほど近い結果を示すが、特に低温ではアインシュタイン模型よりもデバイ模型がよい一致を示すことが知られている。 2つの模型はどのように違うのだろうか?質問に答えるには、同じグラフに2つの結果を描くのがよいだろう。アインシュタイン模型もデバイ模型も熱容量の「関数形式」を導く。両方とも数学「模型」であり、スケールのない数学模型はありえない。スケールにより、数学模型は実世界での対応するものと結びついている。アインシュタイン模型の比熱は以下の式で与えられ、 C V = 3 N k ( ϵ k T ) 2 e ϵ / k T ( e ϵ / k T − 1 ) 2 {\displaystyle C_{V}=3Nk\left({\epsilon \over kT}\right)^{2}{e^{\epsilon /kT} \over \left(e^{\epsilon /kT}-1\right)^{2}}} そのスケールは ε / k である。一方、デバイ模型のスケールはデバイ温度 TD である。両方のスケールは、模型を実験データにあてはめることで得られる。(デバイ温度は理論的には音速と結晶の次元から計算される。)双方の手法は固体の比熱に違った方向や違った形でアプローチしているため、アインシュタインとデバイのスケールは異なる。すなわち ϵ k ≠ T D {\displaystyle {\epsilon \over k}\neq T_{D}} であり、よってこれらをそのまま同じグラフへと描くことは意味がない。同じものを取り扱っている模型ではあるが、スケールが異なるのである。そこでアインシュタイン温度を T E = d e f ϵ k {\displaystyle T_{E}\ {\stackrel {\mathrm {def} }{=}}\ {\epsilon \over k}} と定義することもできるが、当然 T E ≠ T D {\displaystyle T_{E}\neq T_{D}} である。そこで二つの温度の間の比 T E T D = ? {\displaystyle {\frac {T_{E}}{T_{D}}}=?} を探しだす必要がある。 アインシュタイン固体は単一の周波数 ε = ћω = hν をもつ量子調和振動子で構成されている。この周波数が実際に存在するとすれば、固体中の音速と関連しているはずである。固体中の音の伝播が、互いに衝突している原子の連続であると想像するならば、明らかに振動の周波数は原子格子が維持する最小の周波数 λmin と一致するはずである。 ν = c s λ = c s N 3 2 L = c s 2 N V 3 {\displaystyle \nu ={c_{s} \over \lambda }={c_{s}{\sqrt[{3}]{N}} \over 2L}={c_{s} \over 2}{\sqrt[{3}]{N \over V}}} これはアインシュタイン温度をつくり T E = ϵ k = h ν k = h c s 2 k N V 3 {\displaystyle T_{E}={\epsilon \over k}={h\nu \over k}={hc_{s} \over 2k}{\sqrt[{3}]{N \over V}}} よって求めたい2つの温度の比は以下のようになる。 T E T D = π 6 3 {\displaystyle {T_{E} \over T_{D}}={\sqrt[{3}]{\pi \over 6}}} これにより、両方のモデルを同じグラフへと描くことができるようになった。付け加えると、この比は3次元球の8分円の体積 1/84/3πR3 とそれを含む立方体の体積 R3 の比の3乗根である。これはちょうど、エネルギー積分を近似する際にデバイによって用いられた補正因子でもある。
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