テレコネクションの発見と研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/25 21:53 UTC 版)
「テレコネクション」の記事における「テレコネクションの発見と研究」の解説
18世紀後半、あるデンマーク人の日記にデンマークの冬が例年より寒いとグリーンランドは例年より暖かく、その逆もあり得るということが記されていた。10世紀後半から15世紀ごろには、北欧に点在したヴァイキングの間でこのことが知られていたと考えられている。20世紀に入ってヤコブ・ビヤークネスは、現在でいう「テレコネクション」の大まかなメカニズムを示した。その後、1924年にギルバート・ウォーカーはこの現象に「北大西洋振動」と名付け、その後長い間研究が進められた。1970年代から1980年代にかけてエルニーニョに関連した研究が進み、太平洋赤道域の海水温異常が世界各地の異常気象と連動する仕組みが詳細に解明され始めた。 テレコネクションによって気圧が変動すると世界各地で大雨、洪水、旱魃、高温、低温、竜巻や熱帯低気圧の増加・減少などの異常気象が発生し人的被害、社会的・経済的被害をもたらすためいくつかの気象機関や専門研究機関がテレコネクションの発生を予測しようと試みている。PDO、QBO、TBO、SAOなど周期が決まっているものは比較的容易に予測ができるように思われるが、複数のテレコネクションパターンがそれぞれ影響し合っているため、周期がずれたり規模(気圧の変動幅や変動する地域)が異なったりすることが多い。これは周期が決まっていないENSOなどでも同様である。しかしある程度の決まったパターンが判明しており、テレコネクションによる異常を捉えるために世界規模で気温・気圧・風向・風速・水温などの監視体制ができている。国際的な取り組みとしては1985年から10年間行われた熱帯海洋・全球大気研究計画(TOGA)によって太平洋赤道域を中心とした監視体制が作られたほか、アメリカ海洋大気庁が北米や北大西洋、北太平洋などに監視網を作っている。また各国機関の研究基地が多数点在する南極においても、さまざまな観測データをテレコネクションの監視に利用しようとする動きがある。 近年、地球温暖化(気候変動)に関する研究が進む中でテレコネクションやそれに伴う周期的な天候変動が地球の気候に大きな影響を及ぼしていることが分かった。長期的な気象予報の分野では、予報の誤差の原因となるテレコネクションによる天候変動を考慮した予報に関する研究が進んでいる。 ただテレコネクションを数値で表現し、数値予報モデルを用いて再現・予報するのは現段階では困難である。大気波の伝播は数式に表すことができるが、それがテレコネクションに変わっていく詳細な仕組みがまだ解明されていないためである。現段階でテレコネクションの予測方法は、規則性から予測する方法と発生の兆候を捕らえる方法の2つにとどまっている。テレコネクションによる天候の偏移は従来からの規則性をもとに行われる気象予報が大きく外れるリスクであり、予報上の重要な問題となっている。
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