タクシー数とK3曲面
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 23:35 UTC 版)
「シュリニヴァーサ・ラマヌジャン」の記事における「タクシー数とK3曲面」の解説
ラマヌジャンが1729という数字を何故意識していたのか、没後90年以上よく分っていなかったが、21世紀に入って理由が判明した。 2013年、エモリー大学のケン・オノはアンドリュー・グランヴィル(英語版)と共にケンブリッジ大学が所蔵するラマヌジャンの遺稿を調査した。その際、インド帰国後の1919年に病床で記したノートの中に、1729の計算とそれにまつわる覚書があるのを発見した。オノとグランヴィルが驚いたことに、ラマヌジャンはその中で次数3である場合のフェルマーの最終定理の「反例に近い値」を無限個生成する式を与えていた。つまり、a3 + b3 = c3 + 1 または a3 + b3 = c3 − 1を満たす a, b, c を探すという問題に対する答である。1729は103 + 93 = 123 + 13としてこの計算の中に現れる。 オノはこの発見を持ち帰り、彼の指導院生であるSarah Trebat-Lederと共に精査した結果、この時ラマヌジャンは答を導出する過程で1729と楕円曲線から今日で言うK3曲面を構成していたことを発見した。これはアンドレ・ヴェイユによるK3曲面の再発見と命名に30年以上先行する仕事である。更にラマヌジャンのK3曲面はランク≧2の楕円曲線を無限個生成するという特別な性質を持っていた。プリンストン大学のマンジュル・バルガヴァはこれを「これまで未知だった性質を示す素晴らしい例」であり、数学にまた新たな発展をもたらすだろうと述べた。 具体的には、ラマヌジャンは一般に X 3 + Y 3 = Z 3 + W 3 {\displaystyle X^{3}+Y^{3}=Z^{3}+W^{3}} を考察し(有理数解を与える一般的な公式は既にレオンハルト・オイラーによって発見されており、そこから無限個の整数解が得られるが、すべての整数解を与える一般的な公式は知られていない)、1913年に無限個の解を与える公式 ( 6 A 2 − 4 A B + 4 B 2 ) 3 + ( − 3 A 2 − 5 A B + 5 B 2 ) 3 = ( 4 A 2 − 4 A B + 6 B 2 ) 3 + ( 5 A 2 − 5 A B − 3 B 2 ) 3 {\displaystyle (6A^{2}-4AB+4B^{2})^{3}+(-3A^{2}-5AB+5B^{2})^{3}=(4A^{2}-4AB+6B^{2})^{3}+(5A^{2}-5AB-3B^{2})^{3}} を発見し、その後オイラーの一般有理解と等価な一般有理解の公式を得ている。 オノらは、上記の整数解で t = A/B としたもの ( 6 t 2 − 4 t + 4 ) 3 + ( − 3 t 2 − 5 t + 5 ) 3 = ( 4 t 2 − 4 t + 6 ) 3 + ( 5 t 2 − 5 t − 3 ) 3 {\displaystyle (6t^{2}-4t+4)^{3}+(-3t^{2}-5t+5)^{3}=(4t^{2}-4t+6)^{3}+(5t^{2}-5t-3)^{3}} は楕円曲線 X 3 + Y 3 = k ( t ) , k ( t ) = 63 ( 3 t 2 − 3 t + 1 ) ( t 2 + t + 1 ) ( t 2 − 3 t + 3 ) {\displaystyle X^{3}+Y^{3}=k(t),k(t)=63(3t^{2}-3t+1)(t^{2}+t+1)(t^{2}-3t+3)} の2つの有理点を与え、さらにこの楕円曲線は関数体 Q ( t ) {\displaystyle \mathbb {Q} (t)} 上の楕円曲線とみると階数2をもち、 ( 6 t 2 − 4 t + 4 , − 3 t 2 − 5 t + 5 ) , ( 4 t 2 − 4 t + 6 , 5 t 2 − 5 t − 3 ) {\displaystyle (6t^{2}-4t+4,-3t^{2}-5t+5),(4t^{2}-4t+6,5t^{2}-5t-3)} によって生成されることを示した。特に、与えられた有理数 t に対して(有限個の例外を除き)この楕円曲線は有理数上2以上の階数をもつ。また曲面 X 3 + Y 3 = k ( Z ) {\displaystyle X^{3}+Y^{3}=k(Z)} は楕円K3曲面であることを示したのである。
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