セーフティーネットとコーディネーター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/01 14:12 UTC 版)
「ラ・マシア」の記事における「セーフティーネットとコーディネーター」の解説
ピッチ内でのセーフティーネットも充実している。バルセロナでは育成年代で指導する監督に、全選手にシーズン中最低40%の出場時間を与えることを義務付けている。2014年までコーディネーターを務めた。アルベルト・プッチは「バルセロナが獲得する選手であれば、その才能や技術は保証されているので、全員を均等に使うことを求めるのは当たり前」と語る。勝つために「補欠」を設けることは許されず、全選手が同じチャンスを与えられる。 また、育成組織の中で複数のコーディネーター(調整役)のポストを用意し、「監督と選手」という関係のみで選手が一面的に評価されてしまわないように、より多角的な評価システムを構築している。プレー面で選手が悩みを抱え、それを監督やチームスタッフに相談できないときには、コーディネーターが間に入れるよう、彼らは毎日担当する全チームの練習に足を運び、積極的に選手たちに声をかける。 戦力外になった選手へのセーフティーネットも整備されている。バルセロナは地元カタルーニャ州に業務提携を結ぶ町クラブを15ほど抱えていて、戦力外となった選手の行き先を親身に探す。そのため、でていく選手には「来季の戦力ではないが、町クラブで試合に出てレベルアップすればバルセロナに戻るチャンスはある」と言って送り出し、提携先のクラブからもその後の成長ぶりについて定期的な報告を受ける。復帰が望める選手に対しては、実際にスカウトを派遣するなど、常に選手の動向、成長をチェックしている。 彼らは長年の経験から、セーフティーネットがしっかりと整備された環境下で、選手を激しく競わせながら一貫性を持って育てれば、2%の確率でトップ昇格できる真のエリートが生まれてくるのみならず、それまでの過程で競争からふるい落とされていく98%の選手たちの人間教育も可能になると理解している。表面上は育成に巨額の予算を投じて、』豪華な施設や生活環境を整えているが、中にいる指導者や寮のスタッフといった関係者はみな、人間味溢れる教育者なのである。今もフォルゲラ寮長は「スポーツ選手として大成できなくとも、ラ・マシアでの生活や学業面での努力を生かして立派な社会人になってもらうことこそが一番の成功例です」と述べる。取材を受けるたびに、トップ昇格した有名選手ではなく、Bチームに在籍しながら難関大学の学位を取得した無名選手を成功事例として出す。 初日からあえて厳しい現実を選手たちに突きつける一方で、自身は24時間、365日、選手のために身を粉にして働く。バルセロナの育成というのは、そういう人間に支えられながら20年、30年という年月をかけてブラッシュアップされている教育機関なのである。
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