スー族のピアッシングの苦行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/03/09 14:11 UTC 版)
「サンダンスの儀式」の記事における「スー族のピアッシングの苦行」の解説
19世紀のピアッシングは、代表格の一人がこの苦行を行うものだったが、ストレスの多い現代では、大勢のサンダンサーがこれを行う。ピアッシングを行う踊り手は、儀式の前に聖なるパイプを頭上に捧げ、「ピアッシングの誓い」を立てる。これを誓ったものは、4年間、必ずピアッシングの儀式を行わなくてはならない。まず、踊り手は呪い師らに手伝ってもらって、胸の肉(女性は手首の肉)をつまんで引っ張ってもらい、鷲の爪や串をこれに突き刺して通し、バッファローの生皮で柱と繋ぐ。そして体重を後ろにかけ、再び日の出から日没まで、やはり飲まず食わずで太陽の踊りを踊るのである。 この苦行は流血を伴い、踊り手の体力を極限まで奪う、非常に苛烈なものである。傷口には蠅がたかり、意識は朦朧となって、最後には肉が断ち切れたところで儀式は最高潮を迎え、一斉に女たちがビブラートでこれを讃える中、踊りは終わる。首尾よく肉が切れた場合は良いが、いつまでも切れなければ、友人たちが身体を引っ張るか、呪い師やクワ・キヤーピがナイフで肉を切って解放する。柱に繋ぐよりももっと痛みを伴うものは、バッファローの頭蓋骨を生皮で身体に繋いで走るピアッシングである。この場合、友人たちが頭蓋骨が割れるよう手伝ってやる。 この苦行は白人たちに「若い戦士が勇気を誇示する通過儀礼である」と解釈され、これに基づく文献も多いが、これは誤りである。彼らはかけがえのないものとして自分の肉体と痛みを大精霊に捧げ、部族の安寧と発展をただ祈るのである。スー族の戦士チェイスト・バイ・ベアーズはこの苦行についてこう語っている。「身体は自分のものだから、誰かに自分の身体や肉を与えることは、自分の本当に唯一のものを与えるということだ」。またレイムディアーは、「キリスト教では2千年前にイエスが自分の身体を神に捧げたというが、我々インディアンは人々を救うために、自分たちを直接捧げるのだ」とこれを説明している。 カナダではアメリカ国境そばの平原オジブワ族、クリー族、ブラックフット族がサンダンスを行う。シャイアン族やカイオワ族など、太陽の踊りを行う他の平原部族も、ピアッシングの苦行は行わない。マンダン族のオーキーパが弾圧され途絶えた今、インディアン部族では、ここまでの苦行はスー族独特のものとなっている。
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