スーパーアナライザー
「スーパーアナライザー」は理化学研究所が5年計画で進めている分析装置の研究開発プロジェクトです。どんな分野の研究開発でも、対象物を観察、測定し、分析することから始まります。ところが、最先端の分野では、観察や分析に必要な装置が十分にはそろっていないという問題があります。
とくに今、注目のバイオテクノロジーの分野では、細胞や遺伝子の観察、測定、分析、加工などを効率的にこなす機器や装置が少なく、理研でも海外製の装置を仕方なく使うというのが実情でした。そこで理研は、理研が持っている独自の加工技術を軸に、バイオテクノロジーなどの最先端研究に必要な装置のプラットフォーム(基盤)を整備するプロジェクトに着手したわけです。
計画では観察や分析装置のキーとなる部品を高精度かつ迅速につくり出す技術のプラットフォームを構築することになっています。最終的には「もっと詳しく見たい」、「特殊な環境中で観察したい」といった研究者の要望に応じ、オン・デマンドで部品から装置まで提供できるようなプラットフォームとする計画です。
具体的には、プロジェクトのグループヘッドである大森整主任研究員が開発した電解インプロセスドレッシング(ELID)という鏡面加工技術などを使ってキー部品の製作技術を開発します。理研にない技術があれば、大学などの技術も導入、さらに海外のELID研究者などとも連携していく方針で進めているそうです。
21世紀は「知の大競争時代」といわれ、最先端の研究開発成果の創出が産業の競争力に直結する時代といえます。しかし、新分野では研究開発の基本である観察、分析の手法が確立していないため、装置メーカーが標準品を供給するにはリスクがあります。この領域を理研がカバーすることによって、わが国の新分野の研究開発が加速されることになれば、産業にとっても国際競争力強化につながるでしょう。
かつての理研は、新分野の研究開発に必要な分析装置や実験装置を内部で開発、研究成果とともに開発装置自体が産業として自立し、わが国のモノづくりの基盤を形成したという経緯があります。その意味で、今回のプロジェクトはバイオなどの研究加速と同時に分析装置産業の競争力強化につながる方向を目指してほしいと思います。
(掲載日:2008/02/15)
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