ストローク符号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/30 08:08 UTC 版)
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| ストローク符号 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ストローク(英語: stroke)は、ダイアクリティカルマーク(発音区別符号)の一種で、文字を横切る斜線ないし横棒である。
概要
Unicode の文字名称では、さまざまな長さや方向の線をもつ字がいずれも「WITH STROKE」(ストローク付き)とされている。ただし、ストロークを除いた部分が同じで、線の向きや横切る位置によって区別されるふたつの文字は、どちらかにストロークとは異なる名前が付けられる。例えば、ł の名称は L WITH STROKE、ƚ は L WITH BAR となっている。また、ø の名称は O WITH STROKE、ɵ の名称は BARRED O である。
Đ (U+0110、đ の大文字)、Ð (U+00D0、ðの大文字)、Ɖ (U+0189、ɖ の大文字) の3つは見た目の区別がつかない。Unicode の文字名称では最初のひとつ以外「ストローク」を含んでいない。JIS X 0213 には ð の大文字のみが存在する。
ストロークの用途はさまざまである。歴史的には省略表記 (英語版記事) にストロークに似た多様な記号がつけられることがあった。£ など、通貨記号にもしばしばストロークがつく。数字のゼロ(0)にストロークを加えてオーと区別しやすくすることも行われる(斜線付きゼロ)。
よく似た記号
単独の斜線については「スラッシュ (記号)」を参照。
⌀ (U+2200)は直径、∅ (U+2205)は空集合を表す記号である。
ℏ (U+210F)はディラック定数(換算したプランク定数)を表す記号である。
国際音声記号で軟口蓋化した側面音を表す /ɫ/ についているのはチルダであって、ストロークではない。
Ø ø と国際音声記号の ɸ またはギリシャ文字の Φ φ と Θ θ はしばしば混同される。
キリル文字の Ѳ ѳ (U+0472, U+0473) は、Ө ө (U+04E8, U+04E9) とは異なる。
各言語における用法
ラテン・アルファベット
- デンマーク語、ノルウェー語、南部サーミ語
- ø を用いる。/ø/ を表す。
- アイスランド語
- ð を用いる。/ð/ を表す。
- フェロー語
- ð, ø を用いる。
- 北部サーミ語
- ŧ, đ を用いる。それぞれ /θ/, /ð/ を表す。
- スコルト・サーミ語
- đ, ǥ を用いる。それぞれ /ð/, /ɣ/ を表す。
- ポーランド語、ソルブ語
- ł を用いる。/w/ を表す。ポーランド語で ł の斜線は、ć ń ó ś ź の上のアキュート・アクセントとともにクレスカ(kreska)と呼ばれる。
- セルビア・クロアチア語
- đ を用いる。口蓋化した /dʑ/ を表す。
- マルタ語
- ħ, għ を用いる。前者は咽頭摩擦音 /ħ/ を、後者は母音の咽頭化を表す。
- ベトナム語
- đ を用いる。/d/ を表す。
- サーニッチ語
- Ⱥ, Ȼ, ₭, Ƚ, Ⱦ, Ŧ を用いる。なおサーニッチ語では小文字は使用しない。
キリル・アルファベット
ө がモンゴル語や多くのチュルク語で使用されている。円唇中舌半狭母音 /ө/ を表す。
セルビア・クロアチア語のキリル文字表記では、ђ, ћ が使われ、それぞれ /dʑ/, /tɕ/ を表す。また、現在の正書法で採用しているところはないが、古いキリル文字には ѣ という字があった。キルディン・サーミ語にはよく似た ҍ が口蓋化を表すのに使われている。これらの文字について、Unicode の文字名称では STROKE という言葉を使っていない。
それ以外のストロークつき文字を使っている言語は以下のものがある。
- アブハズ語
- ҟ を用いる。/q'/ を表す。
- アゼルバイジャン語 (キリル文字旧正書法)
- ғ, ҝ, ө, ҹ を用いて、それぞれ /ʁ/, /ɟ/, /ө/, /dʒ/ を表していた。
- カザフ語
- ғ, ұ を用いる。それぞれ、/ʁ/, /ʊ/ を表す。
- タジク語、バシキール語
- ғ を用いる。/ʁ/ を表す。
- ハンティ語
- ө, ӫ を用いる。
- ニヴフ語
- ӿ を用いる。
音声記号
国際音声記号では、単独の補助記号としてはストローク記号は存在しない。ストロークを含む文字には、中舌の /ɨ/, /ʉ/, /ɵ/ のほか、ø, ð, ɟ, ħ, ʡ, ʢ, ʄ などがある。
正式な用法ではないが、しばしば摩擦音の /β/, /ð/, /ɣ/ のかわりに、対応する破裂音の字に横棒や斜線を加えて表すことがある。スペイン語の発音を表すときにしばしば見られる。
符号位置
| 記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
|---|---|---|---|---|
| ̵ | U+0335 |
- |
̵̵ |
COMBINING SHORT STROKE OVERLAY |
| ̶ | U+0336 |
- |
̶̶ |
COMBINING LONG STROKE OVERLAY |
| ̷ | U+0337 |
- |
̷̷ |
COMBINING SHORT SOLIDUS OVERLAY |
| ̸ | U+0338 |
- |
̸̸ |
COMBINING LONG SOLIDUS OVERLAY |
| 大文字 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 小文字 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Ⱥ | U+023A |
- |
ȺȺ |
ⱥ | U+2C65 |
- |
ⱥⱥ |
サーニッチ語 |
| Ƀ | U+0243 |
- |
ɃɃ |
ƀ | U+0180 |
- |
ƀƀ |
ジャライ語、カテュ語 |
| Ȼ | U+023B |
- |
ȻȻ |
ȼ | U+023C |
- |
ȼȼ |
サーニッチ語 |
| Đ | U+0110 |
- |
ĐĐ |
đ | U+0111 |
1-10-48 |
đđ |
セルビア・クロアチア語、北部サーミ語、スコルト・サーミ語、ベトナム語 |
| Ð | U+00D0 |
1-9-39 |
ÐÐÐ |
ð | U+00F0 |
1-9-70 |
ððð |
アイスランド語、フェロー語、古英語 |
| Ɖ | U+0189 |
- |
ƉƉ |
ɖ | U+0256 |
1-10-78 |
ɖɖ |
エウェ語 |
| Ɇ | U+0246 |
- |
ɆɆ |
ɇ | U+0247 |
- |
ɇɇ |
|
| Ǥ | U+01E4 |
- |
ǤǤ |
ǥ | U+01E5 |
- |
ǥǥ |
スコルト・サーミ語 |
| Ħ | U+0126 |
- |
ĦĦ |
ħ | U+0127 |
1-10-93 |
ħħ |
マルタ語 |
| Ɨ | U+0197 |
- |
ƗƗ |
ɨ | U+0268 |
1-11-12 |
ɨɨ |
国際音声記号 |
| Ɉ | U+0248 |
- |
ɈɈ |
ɉ | U+0249 |
- |
ɉɉ |
|
| Ł | U+0141 |
1-10-3 |
ŁŁ |
ł | U+0142 |
1-10-14 |
łł |
ポーランド語、ソルブ語 |
| Ƚ | U+023D |
- |
ȽȽ |
ƚ | U+019A |
- |
ƚƚ |
サーニッチ語 |
| Ø | U+00D8 |
1-9-46 |
ØØØ |
ø | U+00F8 |
1-9-77 |
øøø |
デンマーク語、ノルウェー語、フェロー語、南サーミ語 |
| Ɵ | U+019F |
- |
ƟƟ |
ɵ | U+0275 |
1-11-15 |
ɵɵ |
アゼルバイジャン語旧正書法(今はö) |
| Ᵽ | U+2C63 |
- |
ⱣⱣ |
ᵽ | U+1D7D |
- |
ᵽᵽ |
|
| Ɍ | U+024C |
- |
ɌɌ |
ɍ | U+024D |
- |
ɍɍ |
|
| Ŧ | U+0166 |
- |
ŦŦ |
ŧ | U+0167 |
- |
ŧŧ |
北部サーミ語、サーニッチ語 |
| Ⱦ | U+023E |
- |
ȾȾ |
ⱦ | U+2C66 |
- |
ⱦⱦ |
サーニッチ語 |
| Ʉ | U+0244 |
- |
ɄɄ |
ʉ | U+0289 |
1-11-13 |
ʉʉ |
国際音声記号 |
| Ɏ | U+024E |
- |
ɎɎ |
ɏ | U+024F |
- |
ɏɏ |
|
| Ƶ | U+01B5 |
- |
ƵƵ |
ƶ | U+01B6 |
- |
ƶƶ |
アゼルバイジャン語旧正書法(今はj) |
関連項目
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