スクリーニング細胞診と診断細胞診
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/26 19:01 UTC 版)
「細胞診断」の記事における「スクリーニング細胞診と診断細胞診」の解説
細胞診検査にはスクリーニング細胞診(スクリーニング的細胞診)と診断細胞診(診断的細胞診)が含まれている。スクリーニング細胞診の材料は子宮頸部スメア、喀痰等である。診断細胞診は病変部の穿刺吸引材料、胸腹水、病変部擦過など材料は多岐にわたる。前者は、異常細胞を拾い上げ(screening)ることが主な目的であり、後者は病変部の診断(diagnosis)が目的である。目的が異なり、精度管理要件も異なる両者を区別せずに考えることにはいささか無理がある。 細胞診検査は子宮頸ガンや肺ガンの検診で広く用いられてきた。子宮頸部表面を綿棒やブラシでこすりガラスに細胞を転写して顕微鏡で観察する。ガンや異形成など異常があれば、かなりの精度で病変をとらえることができる。喀痰細胞診では気管支や肺門部肺ガンの病変を推定できることがある。スクリーニング細胞診というべき細胞診検査の分野である。スクリーニングを目的とする婦人科細胞診検査等は臨床検査技師である細胞診検査士が実施し、陰性の結果は細胞診検査士の裁量で報告することが慣わしになっている。 スクリーニング細胞診も診断細胞診と同じように病理診断科等の医療施設が行う医行為であるとの考え方もあるが、偽陰性のリスクを認識した上で、病変部の診断を目的としないスクリーニング細胞診を細胞検査士(臨床検査技師)が行うことができる形態学的検査業務(hospital fee)として認めるほうが、肺門部肺癌、子宮頚癌などのがん対策のためには有益ではないかとの考え方もある。検体採取した臨床医が細胞診検査士に任せることのできる相対的医行為という考え方である。 スクリーニング細胞診と対比される診断細胞診は病変部の診断を目的とする細胞診の分野である。乳腺や甲状腺にシコリや塊があるときに、針で刺して細胞を採り、ガラスに塗って顕微鏡で病変部を調べる穿刺吸引細胞診がその代表である。ガンがあれば一定の確度または精度で診断可能である。メスで切らずに注射で済むため外来で行うこともでき、実施頻度の高い検査である。細胞検査士が標本作製し異常細胞があればマークし、疑陽性と陽性標本は病理医等が診断(病変部の病名を判断)する。 病変部診断を目的とする診断細胞診は絶対的医行為であるから陰性についても病理医が診断する施設もある。なおCAP(CAPCollage American Pathologist:米国病理学会)の検査室認定プログラムでは婦人科細胞診以外の細胞診(non-gynecological cytology)は陰性陽性の区別無く医師が行う規格になっている。日本では診断を目的とする場合の細胞診については診療報酬が整備されておらず、細胞診が医行為であるとの評価(doctor fee)は明確ではない。 病変部の細胞診検査は病変部についての補助診断と考えるべきであるが、他の検査所見を考慮するなどして病理診断と同等とされる場合がある。腫瘍についての治療方針が細胞診検査の結果にもとづいている場合には細胞診検査が持つ特性について十分な説明を受けたうえでのインフォームドデシジョンが必要となる。なお病院等医療施設によっては病理診断科が開設され病理専門医・細胞診専門医などから診断細胞診の結果について説明を聞くことができる場合がある(ファースト・オピニオン、セカンドオピニオン)。
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