ジレットの新機軸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/06 22:36 UTC 版)
1901年、アメリカの発明家キング・キャンプ・ジレットはウィリアム・ニッカーソンの協力を得て、使い捨ての薄い刃を使った安全剃刀を発明した。専用のホルダーに刃をねじ留めする構造を採用し、切れ味が鈍った刃は使い捨てて新しい刃に取り換えることで、極小の刃を研ぐ面倒な手間を省いた。長方形に加工された小さく薄い鋼片の長辺2辺に刃が付けられており「両刃」と呼ばれる。 ホルダーに装着された刃は大部分をカバーされて刃先だけがわずかに露出しており、使用中の深い創傷を防ぐようになっていた。このため、大多数の人々が初めて自分で安全にヒゲを剃れるようになった。 当時の競合他社も似たような安全剃刀を発売していたが、いずれも刃は使い捨てではなく研いで使い続ける方式で、昔ながらの革砥を使うか専用の機械に刃を通して研ぐ必要があった。それらに比べてジレット式の使い捨て刃では使い勝手が格段に改善された。また刃を研いでの再利用を考慮する必要が無く、研ぎ代の厚み確保が不要なため、剃刀に必要な高品質の刃物鋼は最小限の使用で済み、製造資材コストの面でも有利となった。 ジレットの着想が卓抜していた点は、安全剃刀自体の完成度の高さに留まらず、その構造を活かしたビジネスモデル構築に成功したことにあった。ホルダー部分を安く売って普及させれば、消耗品として継続した替え刃の市場が生まれ、そこで長期的な利益を上げられると思いついたのである。ロスリーダーとは異なり補完的な商品に依存しないこのビジネスモデルは「剃刀と替え刃のビジネスモデル」と呼ばれ現代ではインクカートリッジ商法など多数に応用されている。 このアイデアを実現すべくジレットは1901年12月3日に特許を申請し、1904年11月15日にアメリカ合衆国特許 #775,134が発効した。 1902年、ジレットはこの剃刀の生産を開始したがホルダー本体51個、替え刃168枚しか売れなかった。しかし、ホルダー本体を飲料などのおまけ景品として無料配布したところ、1904年には9万個の剃刀と12万3000枚の替刃を売り上げ、ビジネスは次第に軌道に乗り始めた。
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