シンクロナイズド・フローティング・トレモロ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/16 16:42 UTC 版)
「ビブラート・ユニット」の記事における「シンクロナイズド・フローティング・トレモロ」の解説
1958年に発表されたフェンダー・ジャズマスター用に開発されたもので、1961年発表のベースVI、1962年発表のジャガーにも採用されている。アームの操作でテイルピースが動くのだが、それに合わせてブリッジも動き、チューニングの安定度を高める仕組みである。ブリッジの脚の先の尖ったネジが、ボディに打ち込まれたすり鉢状のアンカーの底に点で接しており、アーミングに伴って揺動するという仕組みである。ブリッジが固定されていない(フローティング状態)ことが名称の由来である。 アームの装着方法はシンクロナイズド・トレモロのねじ込み式に対し差し込み式となり、着脱がより容易になった。アームを使わない際にテイルピースを固定するトレム・ロックという機構を備えているが、ライト・ゲージには対応しておらず、現在ではその機構が使用されることはほとんどない。その操作ボタンは、バズ・ストップ・バー(弦落ちを防いでサステインを稼ぐ他社製パーツ)の取り付け台座にされることが多い。 シンクロナイズド・トレモロなどに比べアーミング操作が非常に軽いのが大きな特徴であり、繊細なビブラート効果を得やすい。またアームの動きが柔らかいため、クリケット奏法(アームを叩くなどして微振動を起こし独特のサウンドを得る)にも向いている。ブリッジとテールピースの距離が長いため、その部分の弦を弾く奏法(ブリッジ外奏法)も行いやすい。 フェンダーが1964年に発売したムスタングのダイナミック・ビブラートは、シンクロナイズド・フローティング・トレモロの発展型と言える。1967年に発売したテレキャスター専用ビグスビー・トレモロ・ユニットにも、フローティング・トレモロと同様の機構が盛り込まれている。 フェンダーは「ストラトキャスターのシンクロナイズド・トレモロよりチューニングの安定度が高い」と優位性を主張し、'60年代前半のサーフミュージック全盛期には高い人気を誇った。しかし音程の可変幅がシンクロナイズド・トレモロより小さく、ブリッジ位置が安定しないため実際にはチューニングが狂いやすい。ブリッジとテイルピースの距離が長いため、現在主流の細いゲージの弦を張り激しく演奏すると弦落ち(弦がブリッジから外れる)を起こしやすい。フローティング・ブリッジはボディ側に点で接触しており、弦振動がボディに伝わりにくい。こういった欠点がクローズアップされ、ディストーションサウンド(歪んだ大音量サウンド)を多用する'60年代後半以降のロックミュージック勃興期には人気が低下した。1981年にジャズマスターの生産が終了すると共にフェンダーのカタログから消えたが、後にジャズマスターやジャガーのリイシュー(再生産)モデルが登場し、それに伴ってフローティング・トレモロも復活している。 50年代のモデルではシンクロナイズドの綴りに誤りがある。
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