シャーマニズムの定義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 16:33 UTC 版)
「シャーマニズム」の記事における「シャーマニズムの定義」の解説
シャーマニズムの定義は学者によって様々である。まず地域であるが、北アジアに限られるとする説と、世界中の他の地域で見られる諸現象を含める説がある。 また超自然的存在と交信する際、脱魂と憑依(憑霊)のどちらを基本と捉えるかについても意見が分かれている。エリアーデは脱魂(ecstasy)のほうを本質的だとするが、マッカロック(J. A. MacCullock)は憑依(possession)を重視し、I. M. ルイスは一方を強調することを批判する。例えばシベリアなど北東アジア研究者は脱魂を重視し、東南アジアや南米の研究者は憑霊を重視し、日本や朝鮮半島の研究者は憑霊ないし折衷説をとる傾向がある。多くの学者は地域・民族・文化などの相違によってそのいずれかが積極的な意味をもつものと考えている。パウルゾン(I. Paulson)は、脱魂と憑依を区別しつつ、脱魂ではシャーマンはトランスの中でみずから行動するのでトランスが解けた後で体験内容を説明することができるのに対して、憑依ではシャーマンに憑依した精霊や死霊が活躍するのでトランスから覚めても本人は何事が生じたのか説明できないとした。 佐々木宏幹は、シャーマニズムには次のような3つの要素があるとする。 トランスという特別の精神状態において脱魂(ecstasy)または憑依(憑霊)(possession)が行われる 神仏・精霊などの超自然的存在と直接接触・交流・交信 社会的に一定の役割を持つ信仰と行動の体系 トランスは、ある種の異常心理状態ではあるが、平常の社会人と半ば交流できる状態でもある。また演技的なものもあると考えられている。「脱魂」とは、ある人物の霊魂が身体を離脱することであり、「憑依(憑霊)」とは、神霊・精霊がある人物の身体に憑くことである。脱魂したシャーマンは、その間、超自然的存在と交流していて、その事情を報告する場合もあるが、憑依されたシャーマンは、その間のことを正気に返った時にまるで覚えていない場合が少なくない。また「憑霊(憑依)」はトランス状態になくても起こっていると考えられる場合がある。(トランスパーソナル心理学と変性意識状態も参照。) なお上記の定義からも分かるように、シャーマニズムという概念は、別の学術的概念「アニミズム」にも分類可能な要素を含んでいるので、一般に、実際の宗教はただシャーマニズムである、ということにはならない。
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