シャルガフの経験則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 00:59 UTC 版)
「エルヴィン・シャルガフ」の記事における「シャルガフの経験則」の解説
シャルガフは、研究人生の中でシャルガフの経験則と呼ばれることになった2つの法則を提案した。 1つ目の、そして最もよく知られたものは、生物の持つDNAにおいてはアデニン(A)の数とチミン(T)の数が等しく、シトシン(C)の数とグアニン(G)の数が等しいというものである。例えばヒトのDNAでは、A=30.9%、T=29.4%、C=19.8%、G=19.9%となっている。この事実は、DNAに含まれる4種類の塩基(A、T、C、G)が、AとT、CとGの塩基対を形成していることを強力に示唆しているが、シャルガフ自身はこの関係に気付かなかった。この研究はテトラヌクレオチド仮説(Phoebus Leveneによる、広く受け入れられていた仮説で、DNAはATCGの多数の繰り返しから構成されている、とする仮説である)の反証となった。それまでの多くの研究者は塩基比の等モル(A=T=C=G)からの逸脱を実験誤差と考えていたが、シャルガフはその差が実在のものであり、一般に[C+G]の存在量のほうがわずかに少ないと発表した。シャルガフはこれらの結果を、新しく開発されたペーパークロマトグラフィーや紫外線分光光度計を用いて入手した。1952年にシャルガフはケンブリッジでフランシス・クリックとジェームズ・ワトソンに会い、これらの結果を伝えた。シャルガフの研究結果は後に、ワトソンとクリックによるDNAの二重らせん構造の発見につながった。 2つ目の法則は、生物の種ごとにDNAの塩基(A、T、C、G)の構成比は異なる、というものであった。このような分子的な変異の存在は、遺伝子の本体として、タンパク質よりDNAの方が相応しいことを予想させた。 DNAの分子構造の発見につながるこれらの重要な業績のほかに、シャルガフの研究室ではアミノ酸、イノシトール、血液凝固、脂質、リポタンパク質の代謝や、ホスホトランスフェラーゼの生合成の研究も行った。
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