シャニダール4号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/13 01:29 UTC 版)
「シャニダール洞窟」の記事における「シャニダール4号」の解説
シャニダール4号 (Shanidar 4)は、30歳から45歳の成人男性である。1960年、ソレッキによって発見された際には、左側を下にして、部分的に胎児のような姿勢(Fetal position)で葬られていた。 シャニダール4号は長年にわたり、ネアンデルタール人が埋葬のための儀式を行ったことの強力な証拠を示していると考えられてきた。人骨の周りから土壌サンプルを採取することは所定の作業であり、花粉を分析することによって遺跡の古季候と植生の歴史を再構築するためのものであり、分析は発見後8年経ってから行われた。土壌サンプルのうち特に2つからは遺跡で見つかった通常の花粉に加えて花粉の完全な塊が発見され、しかもそれは被子植物全体(少なくともその花弁)が墓穴の中に持ち込まれたことを示唆していた。さらに花の種類を検討したところ、特定の薬効成分のために花が選ばれた可能性が示唆された。花粉の中に含まれていたセイヨウノコギリソウ、ヤグルマギク、Bachelor's buttons、St. Barnaby's Thistle、キオン属 (Ragwort or Groundsel)、ムスカリ(ブドウヒヤシンス)、Joint Pine or Woody Horsetail、タチアオイ属は、いずれも利尿薬、精神刺激薬、収れん作用薬、抗炎症薬として、古くからその治療効果が知られてきた植物であった。このことから、彼はおそらくシャーマンであり、シャニダールのネアンデルタール人の間で呪医(Medicine man)としての役割を務めていたのではないかという推測も行われた。 しかしながら近年は、花粉が動物によって墓穴に持ち込まれたことを示唆する研究もあらわれている。付近にはペルシャスナネズミ(Persian jird)をはじめとするスナネズミ類の巣穴がいくつも発見されており、これらスナネズミは巣穴に種子や花を大量に保存することが知られている。このことは、洞窟内のほかの人骨の埋葬には同様の儀礼的な扱いが欠如していることについて、シャニダール4号の埋葬状況が文化的な起源に基づくのではなく自然に由来するものであるという主張の論拠に用いられている。 Paul B. Pettittは「花が意図的に置かれたものだという説はもはや説得力を失っている」と述べ、「墓穴の掘られた地層の微小動物相の調査からは、穴を掘るペルシャスナネズミ (Meriones persicus) の活動によって花粉が集積されたと示唆される。シャニダールにおいてありふれた微小動物相の活動であり、現在も観察することができる」としている。
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