シドニーオリンピックでの誤審騒動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/02 03:41 UTC 版)
「ジュリー (柔道)」の記事における「シドニーオリンピックでの誤審騒動」の解説
2000年9月のシドニーオリンピック100kg超級決勝における篠原信一対フランスのダビド・ドゥイエ戦でもまた誤審騒動が発生した。この試合では1分半過ぎに篠原が繰り出した内股すかしを副審の1人が篠原の一本と判断した。しかし、主審であるニュージーランド出身のクレイグ・モナハンがドゥイエの有効と判断すると、もう1名の副審もそれを黙認したために、ドゥイエの方にポイントが付くという「誤審」が起こった(柔道では審判員の判断が分かれた場合は、多数決によりどちらの選手のポイントかが決まる。但し、主審と副審の意見が分かれて、もう一方の副審が何も意見しなかった場合は、主審の判断が優先される)。試合を止めて審判団に意見を述べる権限を有しているはずのジュリー2名は、この時点でこの判断に対して何の反応も示さなかった(なお、ジュリーの1人だった川口孝夫は、篠原に有効ポイントが与えられたものだと勘違いしており、ドゥイエに有効が与えられていたことに終盤になってからようやく気付くというありさまだった)。この後、篠原が注意まで取ってポイントで並ぶが、終盤にドゥイエが内股返で有効を取り返したために有効1つの差で篠原が敗れた。終了直後に代表監督の山下泰裕が篠原の内股すかしは篠原の一本であったとして抗議したものの、IJF試合審判規定にある「一度審判員が判定を下して畳から離れたらその判定を変えることはできない」という条項に抵触することもあって、こちらは木本のケースと異なり、結果として抗議が受け入れられることはなかった。当時審判理事であったカナダのジム・コジマは試合会場において、「個人的見解では篠原の一本だと思うが、3人の審判が決めたことだから覆せない。篠原にはかわいそうなことになった」と誤審であるとの認識を示す発言を行った。その一方で、「審判委員(ジュリー)が介入するようなクリアな状況ではなかった」「技の有効度に対する判定は審判個人に委ねられている」とも発言している。 その後全柔連はIJFに判定への抗議文書を提出した。これに対してIJFは、篠原の内股すかしは技として不完全でどちらのポイントでもなかったので、ドゥイエの有効ポイントも無効だったとして、事実上「誤審」を認めることになった。但し、これにより試合結果が覆ることはないとの見解も示した。これを受けて全柔連は、今後試合結果が覆される可能性は少ないと判断して、CASへの提訴を行わないことに決めた。しかし、IJF理事の間で内股すかしという技が理解されていない現状に強い不満と危機感を抱いたことから、引き続きIJFに対して内股すかしの技術的な再検証を要請することになった。
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