シェパーズ・クルークとは? わかりやすく解説

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羊飼いの杖

(シェパーズ・クルーク から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/19 17:08 UTC 版)

羊飼いの杖
アーサー・ハッカー英語版油彩画の中で描かれている羊飼いの杖

羊飼いの杖(ひつじかいのつえ、牧民の杖牧杖とも、英語: shepherd's crookシェパーズ・クルークまたはシェパード・クルーク)は、片方の端にフックが付いた長くて頑丈な棒で、その先端が外側に広がっていることが多く、羊飼いが羊を管理したり時には捕まえたりするために使用する。さらには杖は、捕食動物攻撃から身を守るためにも役立つこともある。起伏の多い地形を横断する際には、杖はバランスを取ることを手助けする。羊飼いは、迷子の羊や潜在的な捕食動物を探す際に、(例えば、牛追いの道英語版の路辺にある)深く生い茂った下草をかき分けるためにこの長い道具を使うこともある。

象徴的用法

フック(湾曲した形)の発明により、倒れた動物の首や脚を捕らえて立ち直せさせることが容易になった。このため、羊飼いの杖は(特に困難な状況における)ケアを示す宗教的シンボルとして使用されており、それにはキリスト教の司教の司教杖も含まれている[1]

羊飼いの杖は農業用の殻竿と対となってファラオの権威の象徴英語版を形成し、牧杖は王権を、殻竿は土地の肥沃さを象徴する[2]

ラーメド英語版の表記
フェニキア文字 𐤋
ヘブライ文字 ל
アラム文字 𐡋
シリア文字 ܠ
アラビア文字 ل
フェニキア文字から派生した文字
ギリシア文字 Λ
ラテン文字 L
キリル文字 Л

セム語派ラーメド英語版 の文字は、羊飼いの杖や突き棒英語版に由来し、ラテン文字の「L」はそこから派生したと考えられている[3][4][5]

古代ギリシャ人はこれをコリュネー(κορύνη)、ラゴーボロン(λαγωβόλον)、カラウロプス(καλαῦροψ)と呼び、彼らの芸術では羊飼いの杖はパーンの手に収められているのが頻繁に見られ、また牧歌ミューズであるタレイアの通常にみられる象徴でもある[6]

医学の分野では、『羊飼いの杖』という用語は、異常に高く曲がりくねった経路をたどる右冠動脈を表すのに用いられる。この変形は約5パーセントの有病率で見受けられ[7]血管形成術の手順において技術的な問題を引き起こす[8]。また、骨疾患である繊維性骨異形成症でも特徴的な高度な骨変形は『羊飼いの杖変形(Shepherds crook deformity)』と呼ばれる[9]

ギャラリー

関連項目

出典

  1. ^ Caeremoniale Episcoporum (Vatican Polyglott Press, 1985)
  2. ^ Steele, Philip (2002). Ancient Egypt. The Rosen Publishing Group. p. 12. ISBN 1435851730 
  3. ^ The Journal of Egyptian Archaeology. Egypt Exploration Society. (1916年03月03日). https://books.google.com/books?id=1HOTejRVNP8C&q=*lamed-+goad+%22proto+semitic%22 
  4. ^ Psalm 119:89-96 | ל Lamedh” (英語). tanyaremkiv (2021年6月24日). 2025年3月2日閲覧。
  5. ^ Ancient Hebrew Research Center”. 2015年1月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月12日閲覧。
  6. ^ A Dictionary of Greek and Roman Antiquities (1890), Pedum
  7. ^ Shriki, Jabi E.; Shinbane, Jerold S.; Rashid, Mollie A.; Hindoyan, Antereas; Withey, James G.; DeFrance, Anthony; Cunningham, Mark; Oliveira, George R. et al. (2012年03月01日). “Identifying, Characterizing, and Classifying Congenital Anomalies of the Coronary Arteries”. RadioGraphics 32 (2): 453–468. doi:10.1148/rg.322115097. ISSN 0271-5333. PMID 22411942. 
  8. ^ Gossman, David E.; Tuzcu, E. Murat; Simpfendorfer, Conrad; Beck, Gerald J. (1988年01月01日). “Percutaneous transluminal angioplasty for shepherd's crook right coronary artery stenosis” (英語). Catheterization and Cardiovascular Diagnosis 15 (3): 189–191. doi:10.1002/ccd.1810150313. ISSN 1097-0304. PMID 2973842. 
  9. ^ 先天異常疾患”. 金沢大学附属病院整形外科. 2025年3月2日閲覧。
  10. ^ Songs of Innocence, copy B, object 4 (Bentley 5, Erdman 5, Keynes 5) "The Shepherd"”. ウィリアム・ブレイク・アーカイブ英語版. 2014年1月17日閲覧。

外部リンク

  • ウィキメディア・コモンズには、羊飼いの杖に関するカテゴリがあります。
  • ウィクショナリーには、羊飼いの杖の項目があります。

シェパーズ・クルーク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 07:13 UTC 版)

羊飼い」の記事における「シェパーズ・クルーク」の解説

羊は、家畜農業には適していない山地帯などに生え丈夫な牧草食べることができる。そのため、季節ごとに山岳ルート沿って、ドロヴァーズロード(英語: drovers' roads、家畜追いの道)と言われる道が形成される。こういった山岳の道でバランス取り捕食動物から羊を守る武器として危険な下草調べるため、多目的にシェパーズ・クルーク(英語:Shepherd's Crook羊飼いの杖)は使われるフック落下した羊の首や足に引っ掛け群れへの復帰補助するために導入された。このような理由から、困難な状況にある信徒助けシンボルとしてミトラ教父やキリスト教司教が持つ司教杖取り入れられている。 斧 東ヨーロッパでは、斧と組み合わせた羊飼いの斧(英語版)が使用されるスポーツ 棒高跳び起源は、羊飼いが川や柵を超える際に使ったのが始まりとされる急峻な地形を持つカナリア諸島では、のような使用して移動した昇り降りするサルト・デル・パストール(英語版)(羊飼いジャンプ)という伝統競技がある。

※この「シェパーズ・クルーク」の解説は、「羊飼い」の解説の一部です。
「シェパーズ・クルーク」を含む「羊飼い」の記事については、「羊飼い」の概要を参照ください。

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