ザリスキー位相とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > ザリスキー位相の意味・解説 

ザリスキー位相

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 14:58 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
この多項式のグラフは、アファイン平面においてザリスキ閉である。

代数幾何学可換環論において、ザリスキ位相英語: Zariski topology)は代数多様体に定義される位相であり、最初はオスカー・ザリスキによって導入された。ザリスキ位相は可換環素イデアル全体の集合に対しても定義され、その環のスペクトルと呼ばれる。

ザリスキ位相によって、基礎位相体でないときでさえ、代数多様体の研究に位相空間論の道具を使うことができるようになる。このような手法はスキーム論の基本的な考えの1つであり、多様体 (manifold) が局所座標系(実アファイン空間の開部分集合)を貼り合わせて構成されるのと同じように、一般の代数多様体はアファイン多様体を貼り合わせて構成される。

代数多様体のザリスキ位相は、多様体の代数的部分集合の全体を閉集合系とする位相である。複素数体上の代数多様体の場合には、ザリスキ位相は通常の位相よりも粗く、任意の代数的集合は通常の位相でも閉集合であるが、逆は一般には正しくない。

可換環の素イデアル全体の集合へのザリスキ位相の一般化は、代数閉体上定義されたアファイン多様体の点全体と多様体の正則関数環の極大イデアル全体との間の1:1対応を確立するヒルベルトの零点定理から従う。この定理より、可換環の極大イデアル全体の集合上のザリスキ位相は、ある与えられたイデアルを含む極大イデアルの全体を閉集合とし、かつそのような集合のみが閉集合である、と定めればよいことが示唆される。グロタンディークのスキーム論のもう1つの基本的な考えは、極大イデアルに対応する普通の点のみならず、すべての(既約)代数多様体、これは素イデアルに対応する、をもとして考えることである。したがって、可換環の素イデアル全体の集合(スペクトル)上のザリスキ位相は、ある固定されたイデアルを含むような素イデアル全体の集合の全体を閉集合系とする位相である。

多様体のザリスキ位相

古典的な代数幾何学(つまりスキーム(1960年頃グロタンディークによって導入された)を用いない代数幾何学)において、ザリスキ位相は代数多様体上に定義される[1]。ザリスキ位相は、多様体の点全体の上に定義されるのであるが、閉集合の全体が多様体の代数的集合全体であるような位相である。最も初等的な代数多様体はアファイン多様体射影多様体であるから、この両者の場合に定義をより明示的にしておくと有用である。以下では固定された代数閉体 k 上で考える。(古典的な幾何学では k はほとんどいつも複素数体である。)

アファイン多様体

まずアファイン空間

ℤ のスペクトル
  • k のスペクトル Spec k は、一つの元からなる位相空間である。
  • 整数ℤのスペクトル Spec ℤ は、素数 p に対応する極大イデアル (p) ⊂ ℤを閉点として持ち、零イデアル (0) を閉でない生成点英語版(generic point)(すなわち、閉包は全空間となる)として持つ。従って、Spec ℤ の閉集合全体は、ちょうど有限個の閉点の合併と全体空間からなる。
  • k 上の一変数多項式環のスペクトル Spec k[t] は、 で表され、アフィン直線(affine line)である。体上の一変数多項式環は主イデアル整域であることが知られていて、既約多項式は k[t] の素元である。k が例えば複素数体のような代数的閉体であれば、定数でない多項式が既約であることと、線型で k のある元 a により t − a の形であることとは同値である。従って、スペクトルは k の全ての元 a に対応する閉点と零イデアルに対応する生成点から構成される。k が例えば実数体のような代数的閉体でなければ、非線型な既約多項式の存在により、描像はさらに複雑になる。例えば、ℝ[t] のスペクトルは、ℝ の中の a に対する閉点 (x − a) と p, q が ℝ の元であり、負の判別式 p2 − 4q < 0 であるような (x2 + px + q) と最後に生成点から構成される。任意の体に対し、Spec k[t] の閉集合全体は閉点の有限個の合併と全体空間である。(これは代数的閉体に対しては上記の議論より明らかである。一般的な場合の証明は、いくつかの可換代数、つまり k[t] のクルル次元は 1 であるという事実 - クルルの主イデアル定理を参照 - 必要とする。

参照項目

参考文献

  1. ^ Mumford, David (1999) [1967], The red book of varieties and schemes, Lecture Notes in Mathematics, 1358 (expanded, Includes Michigan Lectures (1974) on Curves and their Jacobians ed.), Berlin, New York: Springer-Verlag, doi:10.1007/b62130, ISBN 978-3-540-63293-1, MR 1748380 
  2. ^ Dummit, D. S.; Foote, R. (2004). Abstract Algebra (3 ed.). Wiley. pp. 71–72. ISBN 9780471433347 

関連書籍


ザリスキー位相

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 05:30 UTC 版)

位相空間」の記事における「ザリスキー位相」の解説

P = { 2 , 3 , 5 , 7 , … } {\displaystyle P=\{2,3,5,7,\ldots \}} を素数集合とする。各整数 n ∈ Z {\displaystyle n\in \mathbb {Z} } に対し、 V ( n ) = { p ∈ P ∣ n {\displaystyle V(n)=\{p\in P\mid n} はpの倍数 } {\displaystyle \}} と定義し、V(n)全体集合閉集合系とするP上の位相をP上のザリスキー位相という。ザリスキー位相はP上のいかなる距離から定まる位相とも一致しないことが知られており、距離から定まらない位相なおかつ数学重要な研究対象となっているものの代表例である。ザリスキー位相の概念一般可換環Rの素イデアル全体集合に対して定義する事ができる事が知られている。 一方、これとは全く異な角度からザリスキー位相を定義する事ができる。Kを複素数体(もしくはより一般に代数的閉体)とし、Kn考える。そしてK上の多項式任意の集合Sに対し、 V ( S ) = { x ∈ K n ∣ ∀ f ∈ S   :   f ( x ) = 0 } {\displaystyle V(S)=\{x\in K^{n}\mid \forall f\in S~:~f(x)=0\}} と定義し、V(S)全体集合閉集合系とする位相Kn上のザリスキー位相という。 以上で述べた2種類のザリスキー位相は一見全く異なるように見えるが、実は同種の概念別の角度から見たのである事が知られている。これら2つ同種である事は代数幾何学の最も基本的な定理一つとなっている。

※この「ザリスキー位相」の解説は、「位相空間」の解説の一部です。
「ザリスキー位相」を含む「位相空間」の記事については、「位相空間」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ザリスキー位相」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ザリスキー位相」の関連用語

ザリスキー位相のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ザリスキー位相のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのザリスキー位相 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの位相空間 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS