コブラ_(特殊部隊)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > コブラ_(特殊部隊)の意味・解説 

コブラ (特殊部隊)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/04 13:49 UTC 版)

コブラ
創設 1973年 (GK)
1978年 (GEK)
2002年 (EKO)
所属政体  オーストリア
所属組織 連邦憲兵隊
→ 公共安全総局(GDföS
兵種/任務/特性 対テロ特殊部隊
人員 約700名
上級単位 連邦内務省(BM.I)ドイツ語版
テンプレートを表示

EKOコブラドイツ語: Einsatzkommando Cobra)は、オーストリア連邦内務省の対テロ特殊部隊[1][2][3]

来歴

GKの創設

1967年第三次中東戦争の際に、ソビエト連邦イスラエルとの国交を断絶した。また国内では反シオニズムキャンペーンが展開され、東側諸国に住むユダヤ人アシュケナジム)への人種差別が急激に増大したことで、国外への移民(アリーヤー)は加速度的に増加し、1960年代にはわずか4,000人だったのに対して、1970年代には25万人となった[4]

これらの移民の相当部分が列車でオーストリアに入国し、ウィーン国際空港からエル・アル航空機でイスラエルに飛び立つまでの間、バーデン郡シェーナウに所在する移民センターに滞在していた。1972年ミュンヘンオリンピック事件もあって、これらの移民を警護するための対テロ作戦部隊として、1973年5月1日連邦内務省(BM.I)ドイツ語版は、連邦憲兵隊の隷下にバート・フェスラウ憲兵コマンドー(Gendarmeriekommando Bad Vöslau, GK)を創設した[1][2][3]

GEK・EKOへの改編

1970年代中盤、オーストリアでは2度に渡って人質事件が発生し、GKも出動したものの、いずれも政府は強硬策を避けて、要求に屈していた。しかし他国では、イスラエル国防軍エンテベ空港奇襲作戦1976年)、GSG-9ルフトハンザ航空181便ハイジャック事件1977年)のように特殊部隊の突入を成功させていた。このことから、1978年、GKを対テロ作戦に対応できるように増強改編して、突撃コマンドー憲兵隊(GEK)「コブラ」が設置された。この改編の際には、GSG-9やサイェレット・マトカルからの支援を受けている[1][2]

2001年アメリカ同時多発テロ事件を受けて、2002年、オーストリアは対テロ資産の再編成を決定した。これにより、GEKを基幹として、機動出動コマンド(MEK)や特殊作戦班(SEG)など、計23個の特殊部隊が統合された。部隊は突撃コマンドー部隊(EKO)「コブラ」に改称され、内務省の直轄下となった。また2013年にも指揮系統が再編され、司令部機構として内務省に特殊部隊局が設置されるとともに、対テロ捜査班、爆発物処理班、監視チームが統合された[2][3]

編制

組織

拠点の配置図

2013年の再編以後、EKOコブラは、対テロ捜査班、爆発物処理班、監視チームとともに、連邦内務省(BM.I)公共安全総局(GDföS)において、特殊部隊局(Direktion für Spezialeinheiten, DSE)の指揮下にある[3]

2000年代初頭、EKOとして改編された直後の時点では、コブラの隊員は合計170名、うち60名は教官や装備の専門家で、残る110名がウィーナー・ノイシュタットの治安部隊センターで即応体制をとっていた[5]。その後、2013年の再編によって、対テロ作戦要員は700名を越え、オーストリア全土での作戦行動に対応できるようになった[2]

部隊は5ヶ所の基地(ウィーナー・ノイシュタットウィーングラーツリンツインスブルック)および3ヶ所の事務所(ケルンテンザルツブルクフォアアールベルク)を拠点として、全土のどの場所にも70分以内に緊急展開できる体制を整えている[3]

EKOの出動回数は極めて多く、2015年だけでも、1,052件の介入作戦、1,800件以上の警護任務を実施した[2]

人材

壁面を懸垂下降する隊員
 
部屋への突入の訓練展示

隊員は、オーストリア連邦警察から募集され、選抜される[2]。志願者には医学・心理学・体力のテストが課される。厳しい選抜基準に合格したものだけが、計1,200時間・6ヶ月に及ぶ基礎教育訓練を経て、実施部隊に配属される[5]

本部隊は、あらゆる交通機関への高い突入能力で知られており、このために、戦闘泳者やパラシュート降下の専門チームも設置された。特に、山岳国というオーストリアの地勢もあって、登攀や高所でのロープを使用した戦闘技術は高く評価されており[2]アトラスネットワークでは、ビルの襲撃作戦についての戦技研究を担当している[6]

装備

活動史

創設直後の1973年9月28日には、さっそく、パレスチナ・ゲリラによる人質事件が発生した(マルヒェック人質事件)。オーストリア政府は冒険を避けて解放策を採ったため、現場に出動した憲兵コマンドーには出番がなかったものの、これで一躍有名になった[2]

1975年に、ジャッカルパレスチナ解放人民戦線テロリストがウィーンの石油輸出国機構(OPEC)本部を襲撃した際も (OPEC siege、憲兵コマンドーは出動したものの、やはりオーストリア当局は介入作戦に踏み切れず、既に3人の犠牲者が出ていたにもかかわらず、オーストリア政府は身代金を支払い、カルロスとテロリストは逃亡した[2]

1996年には、アエロフロート・ロシア航空Tu-154で、ナイフで武装したナイジェリア人がハイジャックを試みた。しかし同機には犯人護送中のGEK隊員4人が便乗しており、ハイジャック犯は速やかに制圧された。これは対テロ部隊が飛行中の飛行機で事件を解決した唯一の例であり、ウラジーミル・プーチン大統領はGEK隊員に勲章を贈った[2]

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b c ライアン, スティルウェル & マン 2004, pp. 49–50.
  2. ^ a b c d e f g h i j k ネヴィル 2019, pp. 81–84.
  3. ^ a b c d e Riegler 2013.
  4. ^ Alekseyeva, Ludmila (1992) (Russian). History of Dissident Movement in the USSR. Vilnius 
  5. ^ a b 笹川 2004, pp. 244–258.
  6. ^ ネヴィル 2019, pp. 146–153.

参考文献

外部リンク


「コブラ (特殊部隊)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「コブラ_(特殊部隊)」の関連用語

コブラ_(特殊部隊)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



コブラ_(特殊部隊)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのコブラ (特殊部隊) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS