クルーの判断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 10:16 UTC 版)
「KLMシティホッパー433便墜落事故」の記事における「クルーの判断」の解説
緊急時マニュアルでは、エンジン油圧低下の警報灯が点灯しても、その時の油圧計指示値を読み取り、30psi 以上あればそのまま通常の飛行を続ける、と記されていた。実際には油圧を読み取る前に機長がスロットル操作でアイドルにしてしまっていたが、そのアイドル状態でも油圧計指示値は50psi であった。したがって、当該機は当初の目的地まで飛行しても差し支えなかった。だが、なぜかクルーらはスキポール空港に戻るという判断を行った。飛行を継続するかしないかの判断は一に機長がおこなうものであり、緊急時マニュアルに従わなくてはならないものではない。しかし、機長は戻るという判断が正しかったかどうかを疑問に思っていた可能性があることがCVRに記録されたその後のコックピット内の会話の分析から指摘されている。また、会話の中にはスキポールに戻らなくてはならない明確な理由があると推定できるような要素は確認できない。 なお、事故後の調査で、警報は油圧センサー(一定の油圧で警報をON/OFFにするスイッチ)の内部ショートによるもので、エンジン自体には何ら問題がなかったことが判明している。 上述のように、第2エンジンは出力を上げても問題はない、あるいは少なくとも一度は出力を上げる事を試してみるべき状況だったが、墜落するまでずっとアイドル状態であった。これに関しても、どうして一度も出力を上げようとしなかったを明確に示すような会話は記録されていない。報告書では、もしクルーらにこの第2エンジンの出力を上げることを躊躇させる何らかの深刻な理由があったとしたら、アイドル状態ではなくむしろエンジンを停止させていたはずであると述べられている。 スキポールへの降下の最中にブリーフィングが行われたが、これの内容も片エンジン不作動状態ではなく、通常の両エンジン作動時のもので、各スレッシュホールドにおける速度等のパラメータも通常時のそれが読み上げられている。また、CVRの会話には、機長および副操縦士の両方ともが、第2エンジンを停止してプロペラをフェザリングするよりもアイドルにしたままの方が良いという誤った解釈をしていたと推定できる部分がある。したがってそのような状態(片発アイドル)で着陸しようとしたらどんなことが起こるのかも、理解していなかったことになる。 さらに、スキポール管制塔は着陸する滑走路として06と01Rの二つを提示し、機長は前者(06)を選択した。だがこの06滑走路は事故当時若干の追い風状態だった。通常であれば問題になるほどの風速ではなかったが、片発アイドル状態では一層操縦が難しい状況となった。
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