ギリシャ語における二つの語彙の概念差
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/14 15:11 UTC 版)
「地獄 (キリスト教)」の記事における「ギリシャ語における二つの語彙の概念差」の解説
ギリシャ語においては、英語で "hell" と訳される語彙として、γέεννα(古典ギリシャ語再建音:ゲヘンナ、現代ギリシャ語転写:ゲエンナ)と、ᾍδης(古典ギリシャ語再建音:ハデース、現代ギリシャ語転写:アディス)の二つの語彙があり、両語彙とも旧約聖書・新約聖書に使われている。 ゲヘンナは原語では「ヒンノムの谷」の意である。この谷ではアハズ王の時代にモロク神に捧げる火祭に際して幼児犠牲が行われたこと、ヨシヤ王の改革で谷が汚されたことがあり、町の汚物の捨て場とされた。このような経緯から、新約聖書ではゲヘンナは「来世の刑罰の場所」として考えられるようになった。一方、ハデースはギリシャ語の「姿なく、おそろしい」の意から派生したもので、ヘブライ語のシェオルに当たる。古代の神話では死者の影が住む地下の王国とされた。 キリスト教内でも地獄に対する捉え方が教派・神学傾向などによって異なり、ゲヘンナとハデースの間には厳然とした区別があるとする見解と、区別は見出すもののそれほど大きな違いとは捉えない見解など、両概念について様々な捉え方がある。 厳然とした区別があるとする見解の一例に拠れば、ゲヘンナは最後の審判の後に神を信じない者が罰せられる場所であるとされる。一方、ハデースは死から最後の審判、復活までの期間だけ死者を受け入れる中立的な場所であるとする。この見解によれば、ハデースは時間的に限定されたものであり、この世の終わりにおける人々の復活の際にはハデースは終焉する。他方、別の捉え方もあり、ハデースは不信仰な者の魂だけが行く場所であり、正しい者の魂は「永遠の住まい」にあってキリストと一つにされるとする。 上述した見解例ほどには大きな違いを見出さない見解からは、ゲエンナ(ゲヘンナ)、アド(ハデース)のいずれも、聖書中にある「外の幽暗」(マタイ22:13)、「火の炉」(マタイ13:50)といった名称の数々と同様に、罪から抜け出さずにこの世を去った霊魂にとって、罪に定められ神の怒りに服する場所である事を表示するものであるとされる。
※この「ギリシャ語における二つの語彙の概念差」の解説は、「地獄 (キリスト教)」の解説の一部です。
「ギリシャ語における二つの語彙の概念差」を含む「地獄 (キリスト教)」の記事については、「地獄 (キリスト教)」の概要を参照ください。
- ギリシャ語における二つの語彙の概念差のページへのリンク