アンドロゲンの効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/11 04:30 UTC 版)
出生前のアンドロゲンレベルの上昇によって起こる先天性副腎過形成症(CAH)の女性は、たいていの場合低い、男性的な2D:4D比を示す。他に起こりうる生理学的効果としては、陰核の拡大と浅い膣が挙げられる。 CAHの男性は対照群の男性より低い2D:4D比を示すが、このことも出生前アンドロゲンが2D:4D比に影響を及ぼすことを裏付ける。なぜなら羊水検査によるサンプルでは、CAHを有する男性はテストステロンの出生前レベルが高めの正常範囲にある一方で、弱めのアンドロゲンであるアンドロステンジオンのレベルが、対照群の男性に比べて数倍高いからである。これらの測定値は、アンドロゲンの総量でみると、CAHの男性が対照群の男性に比べて出生前により高い濃度で曝されることを示している。 生涯にわたってテストステロン分泌量が対照群の男性より少ないクラインフェルター症候群の男性の指比は、父親や対照群の男性に比べて大きく(すなわち女性的に)なる。 女性の非臨床的サンプルでは、指比が肛門性器間距離と期待される方向に相関していた。すなわち、出生前アンドロゲン曝露量が多いことを意味する、肛門性器間距離の大きい女性は、指比が大きい傾向にあった。 男性における指比は、アンドロゲン受容体遺伝子の遺伝的変異と関係している。 (CAG配列が多いために)テストステロンへの感受性が低いアンドロゲン受容体を産生する遺伝子をもつ男性は、指比が女性的な値になる。 この結果は再現性がないという報告も複数ある。しかし、より多くのCAG配列をもつアンドロゲン受容体を有する男性は、恐らくゴナドトロピンに対する負のフィードバックが減少した結果として、より多くのテストステロンを分泌することにより、感受性の低い受容体を補っている。 したがって、2D:4D比が出生前アンドロゲンレベルを正しく反映していても、CAG配列との相関が期待できるかは明らかではない。 アンドロゲン不応症(AIS)を有するXY個体(男性)は、アンドロゲン受容体の機能不全遺伝子に起因するが、アンドロゲンホルモンが指比に影響を及ぼすならば当然予測されるように、概ね女性的な指比を示す。この結果は同時に、指比の性差がY染色体それ自体とは無関係であることも示している。 2D:4D比における性差は、人間の出生前に存在しており、両性の指の成長に異なった形で影響を与える可能性のある社会的影響を排除する。これまでの哺乳動物の体の性差はすべて、アンドロゲンによる男性化または性染色体の影響によることが分かっている。さらにAISの結果によって性染色体の性差への役割が排除されたため、出生前の性的二形性から、アンドロゲンが出生前に働きかけて指比に影響を及ぼしていることも分かる。 33の羊水検査サンプルで測定されたテストステロンとエストラジオールの比は、子供のその後の2D:4D比と相関する。一方、羊水中のエストロゲンのレベルは2D:4D比の高さとは相関しておらず、検証の結果からは、男性と女性のエストロゲンレベルに差異は見出せなかった。 マウスでの研究は、出生前アンドロゲンが主に第4指の成長を促進することによって作用することを示している。これがテストステロンとエストロゲンに対する胎児の曝露を反映しているという証拠もある。
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