アメリカ_(ヴァレーズ)とは? わかりやすく解説

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アメリカ (ヴァレーズ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/10 15:44 UTC 版)

アメリカ》(フランス語: Amériques)は、エドガー・ヴァレーズによって作曲された管弦楽曲

概要

1918年から1921年にかけて作曲され、1927年に演奏時間や楽器編成を縮小する形で改訂が加えられた。1925年には出版されている。初演は1926年4月9日レオポルド・ストコフスキー指揮のフィラデルフィア管弦楽団によって行われ、改訂版の初演は1929年5月30日ガストン・プーレフランス語版指揮のコンセール・プーレ(les Concerts Poulet)[1]によって、サル・ガヴォーで行われた。これ以降再演は行われなくなったが、作曲者と弟子の周文中が初版譜の大量の誤りを訂正した版が1973年リコルディ社から出版され、現在ではヴァレーズの代表作の一つとして盛んに演奏・録音が行われている。

ヴァレーズがアメリカに移住して最初に書かれた作品である。彼の最初の作品ではないが、初期作品のほとんどが破棄されているために事実上の「作品1」(ヴァレーズ自身はこの表現を使わなかったが)に当たる作品となる[2] 。題名についてヴァレーズ自身は「単に地理的なものではなく、発見というものの象徴として――大地に、空に、そして人の心の中にある新世界たち」[3]と説明している。

批評においては作品の原始的な力や[4]、(パトロールカーのサイレンが轟く)ニューヨークの鮮烈な描写がよく指摘される。ニコラス・スロニムスキーは次のような説明を残している。「複数形の題名によって抽象的と具体的、現在と過去のすべてのアメリカが包括されている。巨大なオーケストラのために、機能的な主題の分子からなる不協和な対位法によって組み立てられており、組織された音響の集合体へと絶えず結晶化していくことで音楽は進行していく」[5]

楽器編成

拡大された打楽器セクション(サイレンを含む)を持つ非常に大きな編成のオーケストラのために書かれている。

  • 1921年初版
編成表
木管 金管
Fl. 4, Picc.3, Alto Hr. 8 Timp. 2名 Vn.1 16
Ob. 4, E.Hrn., Heckelphone Trp. 6 13名 B.D.2、Cym.S.D.Xylo.Glock.Tri.Tamb.GongCast.WhipSlapsticksRatchetSleigh BellLion's RoarSirenBoat WhistleWind Machine、"Crow Call"、Cel. Vn.2 16
Cl. 4, Es., Bs., C.Bs. Trb. 4, Bs. Va. 14
Fg. 4, C.Fg.2 Tub. Bs, C.Bs2 Vc. 10
バンダ(Tp.4, Tb.3) Cb. 10 (低音Cが必要)
その他 Hp.2
  • 1927年改訂版[6]
編成表
木管 金管
Fl. 2, Picc.2, Alto Hr. 8 Timp. 2名 Vn.1
Ob. 3, E.Hrn., Heckelphone Trp. 6 9名 B.D.2、C.Cym.S.Cym.、"Crash Cymbal attached to B.D. 1"、S.D.Xylo.Glock.Tri.Tamb.GongCast.WhipLow RattleSleigh BellLion's RoarSirenCel. Vn.2
Cl. 4, Es., Bs. Trb. 4, Bs., C.Bs. Va.
Fg. 3, C.Fg.2 Tub. Bs, C.Bs Vc.
Cb. ● (低音Cが必要)
その他 Hp.2

作品

演奏時間は23分前後(改訂版による)の単一楽章で書かれている。

作品はアルトフルートのソロを含む「ドビュッシー風の響き」[7]で静かに始まり、活動的な力によって急速に高まっていき、イゴール・ストラヴィンスキーの『春の祭典』のそれをより大規模に展開させたような巨大なクレッシェンドによって区切られていく。猛烈な不協和音や、打楽器や管楽器に託された複雑なリズムの対位法が特徴的である。短い動機を繰り返し、展開ではなく並列させていくことによって音楽は進行していく。

作品の象徴となっているサイレンはヴァレーズにとって(標題的な意味だけでなく)音楽構造的にも重要なものであり、十二平均律を超えたところでピッチの連続体を発現させている。

出典

  1. ^ Gaston Poulet
  2. ^ Composer Biography - Varese, Edgard
  3. ^ Cambridge Companion to the Orchestra (2003) ed. Lawson, p. 63
  4. ^ Varèse and the Music of Fire | Rudhyar Archival Project | Musical Works and Writings
  5. ^ Amériques (James M. Keller, 2012)
  6. ^ Edgard Varèse: Ameriques (Score), Colfranc, New York 1973, 周文中校訂
  7. ^ Gramophone Magazine, September 2001

「アメリカ (ヴァレーズ)」の例文・使い方・用例・文例

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