アボカドブームに伴う水資源の枯渇・森林破壊
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 05:33 UTC 版)
「アボカド」の記事における「アボカドブームに伴う水資源の枯渇・森林破壊」の解説
亜熱帯果実であるアボカドは、特定の生態系でしか育たず、育成には大量の水と土地の栄養を必要とする。限られた育成可能な地域で生産が急速に拡大している。 チリ最大のアボカド生産地であるバルパライソ地域のペトルカ県は、元々旱魃が多い地域で、夏季の旱魃は緊急事態が発令されるほど深刻であったが、貧しい農家が細々と作物を栽培し、家畜を飼育していた。ペトルカに参入した資金豊富なアボカド輸出業者は、何百ヘクタールもの大規模栽培を開始すると、水道管や井戸を違法に設置して河川から水を引き、その結果地下の帯水層と河川が枯れ、旱魃が発生した。メキシコ中部は、メガドラウト(megadrought)と呼ばれる長く厳しい大旱魃による少雨の影響に加え(バルパライソ地域の2019年の降雨量は過去の最低記録を下回り例年の20%以下)、1981年の法律で水資源が土地から切り離され売買可能になり、水資源がほぼすべて民営化されていることが、状況の悪化に拍車をかけている。政府はペトルカを水の「緊急地域」であるとしたが、アボカド生産を制限することはなかった。地域の農業の継続は困難になり、住民たちの生活用浄水はほぼ枯渇し、住民は政府の給水トラックの水を飲まざるを得ない状況に陥った。40万世帯約150万人が、1日あたり50リットル(日本人が1日に必要とする水の量の4分の1から6分の1)で生活している。 ペトルカの住民は、「給水トラックの水は汚染されている」と訴えており、給水トラックの水からは本来糞便に含まれる大腸菌が高レベルで検出されている。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の中で、水資源の枯渇で感染予防に必要な手洗いもできず、チリ中部が同流行に対して脆弱となった。ペトルカでこのように生産・収穫されたアボカドは、テスコ(Tesco)、アルディ(Aldi)、リドル(Lidl)を始めとする巨大スーパーマーケットチェーンに、その大部分が降ろされている。 アボカド産業による環境破壊・地域社会の破壊はあまり注目されていなかったが、2018年にドイツの公営放送DWがドキュメンタリー『Avocado - a positive superfood trend?』を放送し、その事実が広く知られるようになった。
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