アシツキとは? わかりやすく解説

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あし‐つき【×葦付】

読み方:あしつき

ネンジュモ科藍藻(らんそう)。淡水藻で、葦の根、芝地などの土の表面生える。細胞が1列に連なって寒天質包まれ糸状になる。食用あしつきのり。


あし‐つき【足付き/脚付き】

読み方:あしつき

歩く格好。歩くようす。あしどり。「酒に酔ったような—」

道具器物に足が付いていること。また、そのもの。「—のお膳(ぜん)」


葦付

読み方:アシツキ(ashitsuki)

ネンジュモ科藍藻


葦附

読み方:アシツキ(ashitsuki)

所在 富山県高岡市

地名辞典では2006年8月時点の情報を掲載しています。

アシツキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/02 15:18 UTC 版)

アシツキ
1. アシツキの群体全形 (上) と細胞糸 (下)
分類
ドメイン : 細菌 Bacteria
: シアノバクテリア門 (藍色細菌門) Cyanobacteria
: ネンジュモ目 Nostocales
: ネンジュモ科 Nostocaceae
: ネンジュモ属 Nostoc
: アシツキ Nostoc verrucosum
学名
Nostoc verrucosum
Vaucher ex Bornet & Flahault 1886[1]
シノニム
和名
アシツキ (葦付、葦附)[2][3]、アシツキノリ (葦付苔、葦附苔)[4]、コトブキノリ (寿苔)[3]、コトブキタケ[3] (寿茸)、ミトクノリ (三徳苔)[3][5]、シガノリ (滋賀苔)[3][5]、カモガワノリ[5][6][注 1] (鴨川苔)、キブネノリ[5][注 1] (貴船苔)、シラカワノリ[5][注 1] (白川苔)、アネガワクラゲ[7][6][注 1] (姉川水母)、カワタケ[8][注 2] (川茸、河茸)

アシツキ(葦付、葦附、学名: Nostoc verrucosum)は、ネンジュモ属に属する藍藻の1種である。多数の細胞糸が寒天質基質に包まれた藻塊(群体)を形成し(図1)、清冽な流水や湧水池で石などに付着している。日本では古くから食用とされ、『万葉集』にもアシツキを詠んだ歌がある。近年は減少し、天然記念物[10]や準絶滅危惧種[11]に指定している地域もある。

別名・地方名が多く、アシツキノリ(葦附苔)、コトブキノリ(寿苔)、コトブキタケ(寿茸)、ミトクノリ(三徳苔)、シガノリ(滋賀苔)ともよばれる[3][4][5]。アシツキの別名として、他にカモガワノリ(鴨川苔)やキブネノリ(貴船苔)、シラカワノリ(白川苔)、アネガワクラゲ(姉川水母)なども挙げられるが[5][11][7]、これらの名は近縁種のイシクラゲを指すこともある[4]。カワタケ(川茸、河茸)とよばれることもあるが[8]、この名はアシツキやイシクラゲ以外に、遠縁の食用藍藻であるスイゼンジノリを指すこともある[9]。また菌類のコウタケ(Sarcodon aspratus; 担子菌門ハラタケ綱イボタケ目)も、カワタケ(革茸)と呼ばれることがある[12]

特徴

多数のトリコーム(細胞糸)が粘質多糖に埋没した藻塊(群体)を形成し、水中の岩などに付着している[5][13]。群体表面は薄いが丈夫な外皮となり、内部は軟質。色は暗褐色から暗緑色。群体は最初は中実で球形から半球形だが、次第に表面は凸凹で瘤状隆起の集まりのようになり、全体は平面的で不定形になる(上図1上)。古い群体では表面に孔が開いて内部の軟質部が露出し、また所々がわずかに中空になる。大きいものは直径10センチメートル (cm) 以上になる。

細胞糸は湾曲しており(上図1下)、群体周縁部では細胞糸が密集しているが、中心部では粗である[5][13]。群体周縁部では、各細胞糸の鞘は黄褐色で明瞭。細胞糸を構成する細胞は短樽形、直径3-4マイクロメートル (µm)。異質細胞は亜球形、直径 5–6 µm。アキネート(耐久細胞)は楕円形、大きさ 5–7 × 7–8 µm、アキネートの細胞壁は平滑で黄色。

多量の粘質多糖(細胞外高分子物質)を産生することやトレハロースを蓄積する点では、陸生の近縁種であるイシクラゲと類似しているが、水生のアシツキは乾燥耐性を示さない点で異なる[14]。マイコスポリン様アミノ酸 (MAAs) として、主にポルフィラ-334 (porphyra-334) をもつ点で特異である[15]。また細菌の増殖を抑える脂肪酸を産生することが示されている[3]

分布と生態

北米南米アフリカヨーロッパ中東南アジア東アジアオーストラリアニュージーランドなど世界各地に分布する[1]。日本でも本州(関東、中部、近畿、中国地方)や九州から報告されている[5][8]

低温の清流や湧水池に季節的に出現する[3][4]。ふつう水中の岩や石に付着しており、またヨシ(アシ、葦)など植物の茎に付着していることもあるとされる[4]

人間との関わり

アシツキは、日本やタイで食用とされることがある[3]。日本では古くから記録があり、『万葉集』にアシツキを採取する女性たちを詠んだ大伴家持の歌が記されている[2][5][16][17][18](下記)。雄神河は庄川の古称であり、この歌は現富山県礪波郡で詠まれた[18][19]

雄神河 をかみがは くれなゐにほふ 娘子 をとめらし 葦附 あしつき採ると 瀬に立たすらし
大伴家持万葉集』巻17-4021

多数の地方名があることから(上記参照)、身近な食用藻であったと考えられている[3]。河川改修など生育環境の悪化により、現在ではまれな存在になった[3]。近年では培養が成功しており、食品にも利用されている[20][21][22]

分類

分子系統学的研究からは、狭義のネンジュモ属イシクラゲなどが含まれる)に近縁ではあるものの、系統的にはやや異なることが示唆されている[23]

脚注

注釈

  1. ^ a b c d ただし、同じネンジュモ属に属し食用ともされるイシクラゲを意味することもある[5][4]
  2. ^ ただし、遠縁の食用藍藻であるスイゼンジノリを意味することもある[9]

出典

  1. ^ a b c d Guiry, M.D. & Guiry, G.M. (2021年). “Nostoc verrucosum”. AlgaeBase. World-wide electronic publication, National University of Ireland, Galway. 2021年9月26日閲覧。
  2. ^ a b "葦付". 精選版 日本国語大辞典. コトバンクより2021年9月28日閲覧
  3. ^ a b c d e f g h i j k Oku, N., Yonejima, K., Sugawa, T. & Igarashi, Y. (2014). “Identification of the n-1 fatty acid as an antibacterial constituent from the edible freshwater cyanobacterium Nostoc verrucosum”. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 78: 1147-1150. doi:10.1080/09168451.2014.918484. 
  4. ^ a b c d e f 米田勇一 (1962). “アシツキノリとカモガワノリ”. 植物分類 地理 20: 313. 
  5. ^ a b c d e f g h i j k l 廣瀬弘幸 & 山岸高旺 (1977). “Nostoc verrucosum”. 日本淡水藻図鑑. 内田老鶴圃. pp. 31, 99. ISBN 978-4753640515 
  6. ^ a b "ノストック". ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. コトバンクより2021年10月1日閲覧
  7. ^ a b 片岡博尚 (1990). “藻類光反応変異体分離の現状と夢”. 植物の光反応機構の解析と変異株. 東北大学遺伝生態研究センター. pp. 13-24 
  8. ^ a b c “河川の自然環境”. 球磨川水系の流域及び河川の概要. 国土交通省河川局. (2006). p. 19. https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/kihonhoushin/060719/pdf/ref5.pdf 
  9. ^ a b 川茸”. 全国観るなび. 公益社団法人 日本観光振興協会. 2021年9月28日閲覧。
  10. ^ 日本の身土不二 編集部 (2019年7月29日). “万葉集でも詠まれた富山のアシツキ 培養技術確立 藍藻の機能性素材開発に向けて前進 富山県立大”. 2021年9月26日閲覧。
  11. ^ a b アシツキ”. 日本のレッドデータ 検索システム. 2021年9月28日閲覧。
  12. ^ "皮茸". 動植物名よみかた辞典 普及版. コトバンクより2021年10月1日閲覧
  13. ^ a b York, P. V. & Johnson, L. R. (2002). The Freshwater Algal Flora of the British Isles: an Identification Guide to Freshwater and Terrestrial Algae. Cambridge University Press. p. 109. ISBN 0-521-77051-3 
  14. ^ Sakamoto, T., Kumihashi, K., Kunita, S., Masaura, T., Inoue-Sakamoto, K. & Yamaguchi, M. (2011). “The extracellular-matrix-retaining cyanobacterium Nostoc verrucosum accumulates trehalose, but is sensitive to desiccation”. FEMS Microbiology Ecology 77: 385-394. doi:10.1111/j.1574-6941.2011.01114.x. 
  15. ^ Inoue-Sakamoto, K., Nazifi, E., Tsuji, C., Asano, T., Nishiuchi, T., Matsugo, S., ... & Sakamoto, T. (2018). “Characterization of mycosporine-like amino acids in the cyanobacterium Nostoc verrucosum”. The Journal of General and Applied Microbiology 64: 203-211. doi:10.2323/jgam.2017.12.003. 
  16. ^ 竹中裕行 & 山口裕司 (2012). “ノストック (イシクラゲ)”. In 渡邉信 (監). 藻類ハンドブック. エヌ・ティー・エス. pp. 651–654. ISBN 978-4864690027 
  17. ^ 葦付”. 越中万葉歌めぐり. 高岡市万葉歴史館. 2021年9月28日閲覧。
  18. ^ a b 万葉おもしろクイズ No.5”. ほっとホット高岡. 高岡市. 2021年9月28日閲覧。
  19. ^ 山内健生・石原貴子 (2014) 進野久五郎(1900~1984)による万葉植物研究―越中で詠まれた葦附、堅香子、および都萬麻の研究史に関連して―. 富山の生物, 53: 77-89.https://toyamaseibutu.mizubasyou.com/zassi/toyama53pdf/53_13.pdf
  20. ^ アシツキ人工栽培成功.岐阜の企業が利賀で試料採取. 北日本新聞. 2019年5月28日.
  21. ^ 「万葉そば」もちもち食感 人工栽培成功のアシツキ使用. 岐阜新聞. 2019年8月30日.
  22. ^ 北日本新聞 (2019年5月30日). “アシツキそば 利賀の名産に 城端・大福寺で試食会”. 北陸・信越観光ナビ. 2021年4月23日閲覧。
  23. ^ Genuário, D.B., Vaz, M.G.M.V., Hentschke, G.S., Sant’anna, C.L. & Fiore, M.F. (2015). “Halotia gen. nov., a phylogenetically and physiologically coherent cyanobacterial genus isolated from marine coastal environments”. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 65: 663–675. doi:10.1099/ijs.0.070078-0. 

関連項目

外部リンク


アシツキ

出典:『Wiktionary』 (2021/08/18 12:28 UTC 版)

名詞

アシツキ葦付葦附

  1. ネンジュモ目ネンジュモ科ネンジュモ属属す藻類一種学名:Nostoc verrucosum



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