アガラスバンク周辺の生態系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/06/14 01:41 UTC 版)
「アガラスバンク」の記事における「アガラスバンク周辺の生態系」の解説
この海域の生態ピラミッドの低層を担う者のうち、特筆すべきものは、海洋棲プランクトンとこれを餌にしている魚の代表種と言えるミナミアフリカマイワシである。ミナミアフリカマイワシの群れは、その生活環のなかで5月から7月にかけての時期、アガラスバンクを起点として西(大西洋)と東(インド洋)に分かれて北上する(cf. サーディン・ラン[en])。大きな群れでは全長7km以上・幅1.5km・深さ30m、ときに数十kmにも及ぶ莫大なものとなるこのイワシが、ケープシロカツオドリやウミウ類、ミナミオオセグロカモメ、ミナミアフリカオットセイ、サメ類、ハンドウイルカやマイルカ、オキゴンドウなど小型ハクジラ類、そして、この海域において最大級であるニタリクジラなど、その他様々な動物の直接的捕食対象となっており、西(大西洋)側には、14万羽に及ぶケープシロカツオドリが一大繁殖コロニー(Bird colony、鳥の繁殖コロニー)を形成するマルガス島 (Malgas Island) などがある。しかし先述のとおり、西の海域ではイワシの著しい減少によって捕食-被食関係に乱れ(生態系の撹乱)が生じて、同島を始めとする多くの鳥類繁殖地は荒廃し、2010年現在、打ち捨てられた巣が目立つ。この海域において、ミナミアフリカオットセイがケープシロカツオドリの雛と成鳥を、モモイロペリカンが雛と一部の成鳥を襲って食うことは恒常化しており、ケープシロカツオドリの棲息数は激減しつつある。 一方、モモイロペリカンは、農場で廃棄される家禽の臓物を餌とすることで肉食を習慣づけてしまい、数的にも増殖した後になって係る肉の供給を絶つべく対策されたことによって、魚食から肉食に傾倒したまま飢餓に追い込まれることとなった。それにより、彼らはケープシロカツオドリを襲っている。モモイロペリカンは体重2kg以下の雛鳥を主に狙う。この生態は、ケープタウン大学のパーシー・フィッツパトリック・アフリカ鳥類学研究所 (en) の鳥類学博士課程にある学生マルタ・デ・ポンテ・マチャド (Marta de Ponte Machado) によって2009年に発見され、BBCの撮影班によって動画映像に収められた。 東側へ移動するイワシの群れの規模は西側に比べれば小さいが、大きな規模であることに変わりはなく、こちらでもバード島(セーシェル諸島のバード島)などがケープシロカツオドリ等の海鳥の繁殖コロニーになっている。皮肉にも、バイオマス(生物量)が大きかったがゆえにイワシ漁の操業水域となって乱獲された西の海域で暮らす捕食動物は飢えることとなり、西に比してはバイオマスの小さかった東の海域で暮らす捕食動物は従来どおりの生態を保持しているのが現状である。
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