つかの間の勝利
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/27 06:56 UTC 版)
「シュラクサイのディオン」の記事における「つかの間の勝利」の解説
その一方でアクロポリスの僭主の傭兵たちは食料の欠乏のために追い詰められてあわや降伏というところまでいった。ところが、ネアポリス人の将軍ニュプシオスが物資を満載した船団を率いてやってきた。彼の到着で元気を取り戻した僭主の軍勢はアクロポリスから打って出て油断しきっていたシュラクサイ人に攻撃を仕掛けて略奪、放火と狼藉を働いた。進退窮まったシュラクサイ人は、彼を追い出した舌の根も乾かぬうちにディオンに助けを求めた。ディオンはシュラクサイ人の彼への扱いを水に流して救援に赴き、ニュプシオスは4000人の戦死者を出して敗退した。 この時、ヘラクレイデスとその叔父テオドテスはディオンに罰するなら罰するよう身を差し出した。しかし、ディオンはアカデメイアで自分は怒りや妬み、競争心を押さえる訓練を積んだし、権力や知謀よりも寛大と親切と正義心で勝っていると思われたいし、その方が優れているとして彼らを許した。しかし、ヘラクレイデスは先の悔悟が嘘のようにディオンは僭主になろうとしているとして彼を演説で非難し、こともあろうにスパルタ人ファラクスを通して僭主と協定を結んだ(協定の具体的な内容は不明である)。さらにディオンは味方からもヘラクレイデスを許したことを非難された。 それらを受け、ディオンはアクラガスに陣を張っていたファラクスの許まで軍を率いて向かった。ディオンは一まずは話し合いで解決して戦うのはまたの機会にしようと考えていたが、ヘラクレイデスらがディオンは戦いを長引かせて支配を続けようとしていると騒ぎ立てたため戦ってみたものの、味方の分裂のために破れた。その後ディオンはメッセネにいたヘラクレイデスがシュラクサイに戻って市を掌握してディオンを締めだそうとしているとの知らせを受けた。さらにヘラクレイデスはシケリアを征服するためにやってきたスパルタ人ガイシュロスを迎え入れて役人にしようとしていた。ディオンはこのスパルタ人を説得して役人になることをあきらめさせ、さらに二人のシュラクサイ人を和解させて有事の際にはディオンの味方に付くことを誓わせた。 その後、アクロポリスの封鎖が完成して食料が乏しくなったため、アポロクラテスは休戦を申し入れてついにシュラクサイを退去した。この時のシュラクサイ人の喜びようはひとしおで、この日の自由の太陽を拝めぬ者は気の毒だと叫ぶ声さえあったという。しかし、懲りもせずヘラクレイデスが攻撃を始めたため、遂にディオンは再三足を引っ張ってきたこの手の施しようのない反対者を手の者に殺させた。
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