そのほかの改正方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 13:39 UTC 版)
上に述べたような改め文方式等の溶込方式とは異なり、皇室典範増補のように、一部改正法令の文章自体が改正対象の法令と別にそのまま残るような方式を「増補方式」、「積重方式」又はアメンドメント方式といい、英米法が代表例とされるが、英米法でも、溶込方式は用いられている。 増補方式では、既存の法令と内容的に重複する新たな法令を制定する。これにより、その内容が既存の法令と接触する限度において既存法令の規範が変更される。 英米法での例が有名であるものの、わが国でも、明治前期の法令では、「「増補方式」的な法運用」がなされていた。 具体的には、海陸軍刑律中改正並増加(明治6年太政官布告第276号)などが挙げられる。 また、わが国の法令でも、附則は、被改正法令の附則(原始附則)の後に一部改正法令の附則(改正附則)が順次追加されていくことから、増補方式であるとする見解もある。 しかし、改正附則の規定内容は、改正の施行期日や当該改正限りの経過規定等に限られており、例え一時的な措置であっても、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律(令和2年法律第4号)での新型インフルエンザ等対策特別措置法附則への新型コロナウイルス感染症に関する特例の条項のようなものを改正附則で規定することはできない。 このような点から、附則を増補方式による「改正」と見ることはできない。 なお、増補方式に似た改正を行った例として、商工組合中央金庫法(昭和11年法律第14号)では、「第6条① 商工組合中央金庫ノ資本金ハ千万円トシ之ヲ十万口ニ分チ一口ノ金額ヲ百円トス」という既存の条文に対し、「第6条ノ2 商工組合中央金庫ノ資本金ヲ千四百万円増加シ之ヲ十四万口ニ分チ一口ノ金額ヲ百円トス」といった条文を新設することにより、実質的に第6条第1項を「商工組合中央金庫ノ資本金ハ千万円トシ二千四百万円トシ之ヲ二十四万口ニ分チ一口ノ金額ヲ百円トス」という条文に改正したのと同様の効果を生じている。その後、商工組合中央金庫法の一部を改正する法律(昭和39年法律第46号)により、第6条から第6条ノ7までを第6条に統合する改正が行われている。産業組合中央金庫法(大正12年法律第42号)でも同様の改正が行われている。 このほか、日本国憲法の改正に関しては、「歴史に責任を持つためにも本文は残し不足部分をこれに加える」べきであるとする主張もある(参議院憲法調査会「日本国憲法に関する調査報告書」(平成17年4月)参照)。もっとも、溶込方式の場合にも法典編纂上旧条文を併載することは妨げられないであろうし、逆に増補方式でも法典編纂上新条文を溶け込ましてしまうことは考えられる。
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