自然延長論
【英】: concept on natural prolongation of land territory
沿岸国大陸棚の境界画定は、当事国間の法的大陸棚が重複しているときに生ずる問題である。1969 年の北海大陸棚事件の判決で、国際司法裁判所は、大陸棚を沿岸国の領土が棚状の形で自然に(physical)延長している区域と規定するとともに、大陸棚の概念やこれに対する沿岸国の権利の性質などを説明するため、「陸地領土の自然延長」の概念を使用した。この自然延長論は、その後の大陸棚に関する国際裁判や沿岸国に大きな影響を与えた。しかし裁判所は自然延長そのものについての定義を与えておらず、後信かなり幅のある解釈を受けることとなった。ただ北海大陸棚事件の判決に関するかぎり、北海大陸棚はノルウェー舟状海盆によって分画されているとの趣旨が述べられているところから、領海海底の外側に延びる大陸棚の平坦{へいたん}地形の連続性を重視したと推測される。しかし大陸棚条約では水深 200m までの海底が法的に大陸棚であるから、200m 等深線とこれより浅い舟状海盆の上縁(棚状地形の分画される所)との間の海底をどう取り扱おうとしたのか不明である。その後の英仏海峡、チュニジア・リビア、メイン湾のそれぞれの大陸棚境界画定事件で、国際司法裁判所や仲裁裁判所は大なり小なり陸地領土の自然延長、あるいは地質学的・地形学的連続性に言及してはいるものの、これらの内容についての明確な説明は与えていない。国連海洋法条約の大陸棚の定義(第 76 条)では、「沿岸国の大陸棚とは……その領土の自然延長をたどって大陸縁辺部の外縁部まで延びている……海底およびその下……」と、自然延長の概念が示されている。ここではもはや北海大陸棚事件のときの自然延長論とは異なり、海底地形の起伏を問題とせず、深海底に達する所まで領土の自然延長は及んでいる。自然延長論は、相対・隣接国間の大陸棚境界画定に際して重視された概念であるが、ただでさえその具体的要素が明確でないうえ、国連海洋法条約の出現に及んで大陸棚の定義は陸地領土の自然延長の概念と大陸縁辺部とに基礎を置くだけではなく、領海基線から200海里という海面上の距離基準を導入して二元的構成となったことから、「自然延長概念」の持つ意義・影響力は微妙に変質したように見受けられる。 |

自然延長論と同じ種類の言葉
Weblioに収録されているすべての辞書から自然延長論を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。

- 自然延長論のページへのリンク