さかなぜの顔さおれだつ縞梟(suma fuguro)
作 者 |
|
季 語 |
|
季 節 |
冬 |
出 典 |
|
前 書 |
|
評 言 |
2010年10月1日 死去(100歳)。北海道新聞の社会面に顔写真と記事が掲載され、残念でならなかった。 九糸郎は俳名であり、小樽を拠点に活躍し、現代版画の鬼才との異名をとった版画家の一原有徳氏である。一原氏とは二度程お会いし、後日氏の所属していた俳誌「未完現実」No.176号(1999年2月25日発行)が送られてきた。「未完現実」は、稲葉直氏が代表の同人誌で、表紙は一原氏の独特の版画作品で、作品1ページ目の上段には、稲葉直、阿部完市氏の作品五句が並び、下段に三名の同人の一人、一原氏の作品五句、その中の一句が掲句である。 近年「地貌季語」等への取り組みが盛んであるが、一原氏の方言の句は意欲的で、しかもローマ字表記でルビを振って表現するのは頗る挑戦的であり面白い試みでもある。 掲句の「さかなぜ」は「逆撫で」の訛で、縞梟(シマフクロウ)のあの鋭い眼差しの他を寄せ付けない存在感は、まるで自分達の顔(存在)そのものが相手を苛立たせる存在である。と自嘲的に言い放つ。勿論自らの顔の面を手で逆撫でして見せるふてぶてしさもあるのだ。シマフクロウは自然がまだ残されている北海道の最北端の地ですら、絶滅の恐れのある野生動植物に指定されている。人間の住む空間が拡大すればするほど動植物の生存する地域が狭められて行く。方言も同じように、いつか標準語と呼ばれる言葉に馴らされて行くのか。一原氏の反骨の精神がせめても一句を成り立たせているのである。 2001年10月30日に発行の一原有徳句集『メビウスの丘 九糸郎』では〈さかなぜの顔さ おもすろくねえ日ンだやだらホーホケキョ やっぱり |
評 者 |
|
備 考 |
- さかなぜの顔さおれだつ縞梟のページへのリンク