ごく野菊らしいもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/15 09:12 UTC 版)
一般に野菊と呼ばれるのは以下のようなものと思われる。 キク属 Dendranthema キクと同属のものは日本に15種ばかりある。舌状花を持たない菊らしくない花もあるが、多くは野菊と言えるものである。株立ちになり、茎は立ち、あるいは斜めに伸び、葉を互生する。葉は丸みのある概形で、大きな鋸歯があったり、やや深く裂けるものが多い。どれも管状花は黄色、舌状花は白のものと黄色のものがある。冠毛は無い。 代表的なのは山野に生えるものでは白い花のリュウノウギク D. japonicum、黄色い花のシマカンギク D. indicum 、キクタニギク D. boleare 、海岸に生える白い花のノジギク D. occidentali-japonense 、コハマギク D. arcticum subsp. maekawanum などがあるが、特に最初の二つが標準的な野菊らしいものである。この属のものはキクと同属なだけに、菊らしいものが多いが、イソギク D. pacificum など、舌状花のない花をつけるものもある。さらに、種間の雑種も知られるのでややこしい。 シオン属 Aster 単独の茎が高く伸びるものが多い。葉は根出状のものと茎の葉がつく。茎の先端が多数枝分かれして、菊の花が多数つく。舌状花は白いか紫を帯びる。種子(実際には痩果)には長い冠毛がある。 よく知られているのはシオンである。非常に大きくなるもので高さは2mに達する。これはよく栽培され、野菊扱いされない。しかし、野生で小型の場合は野菊と認識されるだろう。ただし数は多くない。 野菊としては最もそれらしいのがノコンギク A. ageratoides subsp. ovatus である。山間の沢から人里まで広く分布するごく普通の野菊で、花は薄紫の、非常にヨメナに似た花である。コンギクの名で栽培品としての扱いも受けてきた。北海道にはエゾノコンギク var. yezoensis Kitam. がある。種としては他にも変異が多く、いくつもの亜種がある。中でもヤマシロギク A. a. subsp. amplexifolius 、シロヨメナ A. a. subsp. leiophyllus などは山野に生える背の高い野菊である。 他に、シラヤマギク A. scaber やゴマナ A. glehni 、サワシロギク A. rugulosus なども山野でよく見かけるもので、背が高く、花の小さい野菊である。 特殊なものとしては、塩性湿地に生育するウラギク A. tripolium (英: Sea aster)や海岸の岩場に生えるイソノギク A. asa-grayi 、関東の河原に生えるカワラノギク A. kantoensis 、紀伊半島の瀞峡周辺の川岸にだけ生えるホソバノギク A. sohayakiensis など、他にもいくつか野菊らしい姿の植物がある。同属の最も普通なもののひとつ、ホウキギク A. subulatus はやや湿ったところでよく見かける帰化植物であるが、花が小さいので野菊という印象はない。 ヨメナ属 Kalimeris 地下茎があり、群落になる。葉は細い形のものが多い。冠毛はごく短く1mm以下で肉眼では無いように見える。なお、この属をシオン属に入れる考えもある。 何と言ってもヨメナ K. yomena が代表である。薄紫の花をつける、道端に最もよく見かける野菊と言ってよい。ただし、本州中部以西のことである。近縁種は似たものが多く、カントウヨメナ K. pseudoyomena やオオユウガギク K. incisa など地域によっても違う種がある。すべて野菊と言ってよいだろう。 ハマベノギク属 Heteropappus 乾燥した原野に生え、細い葉をもち、白い野菊の花をつけるヤマジノギク H. hisidus 、海岸の砂地に生え、茎は這い、葉はサジ型のハマベノギク H. h. subsp. arenarius など。 ハマギク属 Nipponanthenum ハマギク N. nipponicum が東北地方の海岸線に生育する。江戸時代より栽培されていた。 他にも、若干の希少種がある。以上を、成育環境別にまとめると、以下のようになる。 道端ではノコンギクとヨメナ、それにこれらの近縁種がよく見られる。 より自然の豊かな野外では、上記二種のほかに、背が低くて花の大きなリュウノウギク(白)やキクタニギク(黄)、背が高くて花数の多いヤマシロギク、シラヤマギク、ゴマナなどが見られる。現在ほど都市化が進んでいなかった時代には、里山に生えるこれらの野菊ももっとなじみ深かったはずである。 海岸線の岩場や砂浜には多くの種があるが、地域によって異なり、またそれほど頻繁には見られない。 これらの大部分は本州産である。北海道には海岸性のもの以外ではシラヤマギク、サワシロギク、エゾノコンギクなどがある。沖縄では海岸の種を除くと野菊はコヨメナくらいしかない。
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