ガスの地下貯蔵
【英】: underground storage of gas
天然ガスの貯蔵法の一つ。 ガス需要は冬季と夏季とで大きな差があるため、生産地から消費地に至る天然ガスパイプラインの年間平均稼働率(load factor)が悪くなる。このため不需要期に消費地近傍で余剰ガスを貯蔵しておき、需要ピーク期にこれを取り出すことによって、パイプラインの送ガス量を平均化することが、ガス事業の経済性を大きく改善する。このような需給調整のための貯蔵量は非常に大きいので、地下貯蔵または液化貯蔵(ピークシェービング用 LNG )が行われる。 特に地下貯蔵は、経済的、技術的に大容量が確保できるため、主流となっている。この地下貯蔵は消費地の近傍にいわば人工のガス田を作るようなもので、ガス鉱床が形成される条件の存在する地下の箇所、すなわちトラップをなす背斜構造などの地質構造中の孔隙{こうげき}性の地層の中にガスを圧入するものである。消費地近傍に枯渇したかつての油層やガス層があれば好都合だが、ガスをトラップする条件があれば滞水層であってもよい。圧入のためには、井戸のほかにコンプレッサーが必要だが、取り出すときはクッションガスの自圧でパイプラインに送り込まれる。このような地下貯蔵箇所は、米国では、400 カ所を超し、その総貯蔵容量は年間消費量の約 1/3 (ワーキングガス量ベースでは約 1/6 )に達する。フランスも水層を利用した地下貯蔵を行っており、西独では背斜構造のほか、岩塩ドームを溶解した空洞を利用した地下貯蔵も行っている。英国やオランダでは枯渇に至らない稼動中のガス田も用いている。わが国では、小規模であるが新潟県の枯渇ガス田において天然ガスの貯蔵と取り出しが実施されているが、太平洋側の LNG の大消費地近傍においては適当な条件を持つ地質構造が見つかっていないので、実用化されていない。最近では枯渇ガス田ではなく、岩盤掘削した空調を利用する地下貯蔵の研究も進められている。 (江波戸 邦彦、2006 年 3 月) |

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