【R-530】(あーるごひゃくさんじゅう)
旧マトラ社(現MATRA/BAe社)が開発した、フランス製の中射程空対空ミサイル。
1957年に開発された原型弾と、その改良型として1971年に開発された「シュペル530」がある。
R-530(原型)
本ミサイルは、前作のR-510/R-511の後継として1957年から開発がスタートした。
赤外線誘導型とセミアクティブレーダー誘導型の2タイプが製造され、赤外線誘導型の方は正面を含む全方位から攻撃可能なオールアスペクト発射能力を備えたシーカーを、一方のセミアクティブレーダー誘導型には、ミラージュ用の「シラノ」シリーズレーダー(F-8はレーダーをミラージュ用に改修して搭載)で誘導されるEMD製タイプAD26シーカーを装着した。
推進装置は、オチキスブラント/SNPEアントワネット、またはより高性能のSNPEマデレーン2重推力固体推進薬ロケットモーターで、飛翔制御用に十字型のデルタ翼と尾部フィンが取り付けられている。
なお、搭載機はミラージュ3、ミラージュF1、ミラージュ2000、F-8であった。
本ミサイルは、アルゼンチン・イラク・オーストラリア・ブラジル・フランス・ヨルダン・パキスタン・南アフリカ・スペイン・ベネズエラ等に輸出されたが、現在ではいずれの国でも退役しているものと思われる。
実戦ではアルゼンチン(フォークランド紛争)、イラク(イラン・イラク戦争、湾岸戦争)、イスラエル(第三次中東戦争)、パキスタン(第二次印パ戦争)が使用したが、命中率は余り高くなかったと言われている。
【性能諸元】
全長:3.28m
直径:26.3cm
翼幅:110cm
発射重量:193kg
最大速度 Mach 2.7
推進方式:固体推進ロケットモーター
エンジン:オチキスブラント/SNPEアントワネット又はSNPEマデレーン2重推力固体推進薬ロケットモーター
最高飛行高度:21km
射程:18km(セミアクティブレーダー誘導型)/3㎞(パッシブ式赤外線誘導型)
弾頭:HE連続ロッドまたは破片弾頭
弾頭重量:27kg
誘導方式:パッシブ式赤外線誘導/セミアクティブレーダー誘導
誘導装置:Iバンド照射レーダー/パッシブIRシーカー(誘導ヘッドは交換可能)
G限界:不明
シュペル530
R-530の発展型として1971年に登場したミサイル。
フランス製の新世代戦闘機(ミラージュF1やミラージュ2000・ラファール)に搭載する目的で製作された。
本ミサイルはセミアクティブレーダー誘導型で、ミラージュF1用のF型、ミラージュ2000用のD型の2タイプがある。
最新型のシュペル530D型は、発射母機と高度差のある目標に対して発射する事ができ、最大で7000m上方又は9000m下方の目標と交戦する事が可能。
追加装備にモノパル・シーカー・ヘッド(ECCM能力)と新型推進薬(トムソンブラント製アンジェル・ロケットモーター)を備えている。
現在、本ミサイルはフランス軍の主力中射程空対空ミサイルであるが、1999年にMICAの配備が開始されたことにより、順次退役すると思われる。
【性能諸元】
シュペル530D
全長:3.80m
直径:26.3cm
翼幅:62cm
発射重量:275kg
弾頭:HE 破片調整弾頭
弾頭重量:30kg
推進装置:改良型SEPロケットモーター
最大速度:M4.6
射程:50~60km
G限界:20G
誘導方式:セミアクティブレーダー誘導
シュペル530F
全長:3.54m
直径:26.3cm
翼幅:88cm
発射重量:245kg
弾頭:HE 破片調整弾頭
弾頭重量:30kg
推進方式:固体推進ロケットモーター
エンジン:アンジェル・二重推力ロケットモーター
最大速度:M4.6
射程:35km
G限界:20G
誘導方式:セミアクティブレーダー誘導
誘導装置:AD-26CWモノパルス・ドップラーシーカー
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