日本語で石綿と呼ばれ、蛇紋石や角閃石が繊維状に変形した天然の鉱石のことをいいます。その繊維の細さは髪の毛のおよそ5,000分の1程度です。耐久性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れ安価であるため、建設資材、電気製品、自動車、家庭用品など、さまざまな用途に広く使用されてきましたが、吸い込むと20年から40年の潜伏期間の後に肺がんや悪性中皮腫を引き起こすことが分かっています。国際がん研究機関(IARC)の公表している発がん性リスク一覧でもグループ1、また、アスベストは喫煙(ヒトに対し発がん性ありと判定されています)との相乗作用で、さらに肺がんを起こしやすくなることが分かっています。非喫煙者に比べ喫煙者の肺がん発症リスクが高いことはよく知られていますが、アスベスト製品の製造に従事していた人における喫煙者の肺がんリスクは一般のそれよりもさらに高くなることが分かっています。アスベストと喫煙による肺がんの発がん性は、それぞれのリスクの総和ではなく、相乗作用で飛躍的に高くなっているとみられています(アスベストで5倍、喫煙で10倍、どちらもだと5×10=50倍)。ちなみに悪性中皮腫の場合は、アスベストと喫煙の相乗作用はないと考えられています。
アスベスト【(オランダ)asbestos】
アスベスト(あすべすと)(asbestos)
熱や電気を通しにくい性質から、防火・保温などの材料または絶縁体としてさまざまな用途に使われていた。石綿(いしわた)ともいう。アスベストによる健康被害が社会問題化している。
古い住宅などでは防火・保温材としてアスベストが使われているため、解体作業をするときには、水をかけるなどしてアスベストの粉じんが飛散しないように作業する必要がある。アスベストを吸い込むと、胸膜などに中皮腫(ちゅうひしゅ)と呼ばれるガンの発生原因となるからだ。
日本では、有害性の高い青石綿と茶石綿について、1995年に製品の製造および使用が禁止された。また、2004年には白石綿も含めて全面的にアスベストの製造および使用が禁止された。ただし、代替品の手当てがつかないとの理由から、石油プラントなどの一部で液体漏れを防ぐシール材としてアスベストの使用が依然として例外的に認められている。
アスベスト製品を製造していた建材メーカーの「ニチアス」は5日、1976年から去年までの29年間に、従業員86人が中皮腫や肺がんで死亡していたと公表した。日本石綿協会は、アスベスト製品製造会社18社で、合わせて175人の従業員がアスベストが原因とみられる形で死亡していたとの調査結果を発表している。
(2005.07.11掲載)
アスベスト
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