κ-飽和性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 23:33 UTC 版)
飽和原理はより高次の基数を許すことによって「改良」することができる。モデルが κ {\displaystyle \kappa } -飽和であるとは、 { A i } i ∈ I {\displaystyle \{A_{i}\}_{i\in I}} が有限交叉性を持つ内的集合の族(族は外的であってよい)で | I | ≤ κ {\displaystyle |I|\leq \kappa } のときには必ず次が成り立つことをいう: ⋂ i ∈ I A i ≠ ∅ {\displaystyle \bigcap _{i\in I}A_{i}\neq \emptyset } 添字集合の条件を | I | < κ {\displaystyle |I|<\kappa } とする流儀もある。例えば、最初の流儀で ℵ 0 {\displaystyle \aleph _{0}} -飽和(可算飽和)と呼ばれるものは、後者の流儀では ℵ 1 {\displaystyle \aleph _{1}} -飽和と呼ばれる。以下の記述は最初の流儀に従う。 この原理は有用である。例えば、位相空間 X {\displaystyle X} において、全ての標準的な近傍の共通部分(モナド)が内的な(超準)近傍を含むことを保証するために 2 | X | {\displaystyle 2^{|X|}} -飽和性を用いることができる。より精密には χ ( X ) {\displaystyle \chi (X)} -飽和性があれば十分である。ここで χ ( X ) {\displaystyle \chi (X)} は X {\displaystyle X} の指標を表す。この事実は、開集合、連続写像、コンパクト性などの概念の標準的な定義と超準的な定義との同値性を示すのに使われる。一方、実数全体 R {\displaystyle \mathbb {R} } は第一可算であるので、初等的な解析学に関する限り、可算飽和性があれば十分である。 いかなる基数 κ {\displaystyle \kappa } に対しても、( κ {\displaystyle \kappa } を固定する毎に) κ {\displaystyle \kappa } -飽和的な拡大を構成できる。集合論(の十分大きい部分(例えば上部構造))の超準モデル M {\displaystyle M} が κ {\displaystyle \kappa } -飽和的なとき、 M {\displaystyle M} の内的な無限集合の濃度は κ {\displaystyle \kappa } より大きい。特に台集合 M {\displaystyle M} の濃度は κ {\displaystyle \kappa } より大きい。 一方で次の飽和原理の弱い形である広大化(enlargement)の原理は基数の制限を除くことができる。超準宇宙が広大化であるとは、 { A i } i ∈ I {\displaystyle \{A_{i}\}_{i\in I}} が有限交叉性を持つ標準集合の族のとき、必ず次が成り立つことをいう: ⋂ i ∈ I ∗ A i ≠ ∅ {\displaystyle \bigcap _{i\in I}{}^{\ast }A_{i}\neq \emptyset } この原理は | I | {\displaystyle |I|} -飽和原理から帰結する。したがって κ {\displaystyle \kappa } を標準集合全体の濃度とすれば、 κ {\displaystyle \kappa } -飽和モデルは広大化の原理を満たす。先述したモナドの性質などは広大化の原理から導かれる。 ℵ 0 {\displaystyle \aleph _{0}} を超える飽和原理はしばしば本質的に用いられる。1+1次元時空のディラック方程式の経路積分に基づく解法は超準解析を用いて測度論的に正当化できることが知られている。この超準的な解法において、光速度 c {\displaystyle c} を正の無限大超実数と置くことで、非相対論的極限である1+1次元時空のシュレーディンガー方程式の解が得られる。この解法において 2 ℵ 0 {\displaystyle 2^{\aleph _{0}}} -飽和性が本質的に用いられる。
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