ε環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/10 15:42 UTC 版)
ε環は、天王星の環で最も明るく密度が濃い部分であり、環からの光の反射の3分の2を占める。天王星の環で最も離心率が大きいが、傾斜角は無視できるほど小さい。離心率が大きいため、天王星の軌道上の位置によって大きく明るさが変化し、遠点付近で最も明るく、近点付近で最も暗くなる。最も明るい時と最も暗い時の比は、約2.5から3.0である。このような明るさの変化に伴い、環の幅も変化し、遠点付近では96.4 km、近点付近では19.7kmとなる。環が太くなると、粒子の影が少なくなり、明るさが増す。ε環は、ボイジャーのカメラによって解像された2つの環の1つであり、その幅の変化は、ボイジャー2号の撮影した画像によって直接測定された。このような振舞いは、この環が光学的に薄くないことを示している。実際、地上や人工衛星からの掩蔽の観測により、その光学的深さは0.5から2.5であり、近点で最大になることが示された。ε環の等価深さは約47kmで、軌道上の場所によっては変わらなかった。 ε環の厚さは正確には分かっていないが、非常に薄く、150 mという推定もある。その薄さにも関わらず、ε環はいくつかの粒子の層で構成される。また、充填定数は、遠点で、出典により0.008から0.06と推定される。粒子の平均直径は0.2から20 mであり、平均で直径の4.5倍程度離れている。恐らく天王星の大気に引きずられたため、塵はほとんど存在しない。またその薄さのため、 ε環は真横から見ると消失したように見える。この現象は2007年に環が平面を横切った際に観測された。 ボイジャー2号は、電波掩蔽の観測中に、ε環からの奇妙なシグナルを観測した。このシグナルは、環の遠点付近で、波長3.6 cmの強い前方散乱をしているようであり、このような強い散乱には階層構造の存在が必要だと考えられた。ε環がこのような微細構造を持つことは、多くの掩蔽の観測によって裏付けられた。ε環は、いくつもの狭いリングレットで構成され、そのうちの幾つかは不完全なアークを持つ。 ε環は、内側と外側に羊飼い衛星(コーディリアとオフィーリア)を持っている。環の内端はコーディリアと24:25の、外端はオフィーリアと14:13の共鳴軌道の位置にある。その境界を保つためには、衛星の質量は少なくとも環の質量の3倍以上が必要であり、ε環の質量は、約1016kgと推定されている。
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