鉄道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/03 19:01 UTC 版)
分類、種類
技術、経済、法制などの観点から分類可能である。
技術的分類
鉄道は、技術的には、軌道・車両の構造、軌道の敷設面、軌間、車両の動力源などに基づいて分類できる[2]。
- 軌道・車両の構造による分類
- 普通鉄道と特殊鉄道に分類できる。
- 普通鉄道は、2本のレールの上に自走する車両を運行させる一般的な鉄道である[2]。対して特殊鉄道は、普通鉄道とは異なるものをまとめて呼ぶ総称であり、たとえば普通鉄道に特別な装備を付加した歯車式鉄道(ラックレール式鉄道。アプト式、シュトループ式など)と、全然別の構造の単軌条式鉄道(モノレール)、案内軌条式鉄道(新交通システムを含む)、鋼索鉄道(ケーブルカー)などがあり[2]、さらに言うと「特殊鉄道」には(次第に「鉄道」なのかあいまいな領域になるが)索道(ロープウェー)、無軌条電車(トロリーバス)、磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー、マグレブトレイン 等)なども含められることになる。
- 軌道の敷設面による分類
- 大まかには、「地表に敷設する鉄道」「高架鉄道」「地下鉄道(地下鉄)」の3種にわけられる。
経済的分類
経営形態による分類
経営形態による分類がある。たとえば私企業による経営や、国による所有「国有」、国による経営「国営」などである。
世界の鉄道は、初期の段階においては(規模がまだ限られていたので)株式会社の形態が多かったが、やがて全国的な鉄道網の形成に伴い国有・国営の形態をとるものが多くなっていった[2]。その後多くが、分割されたり、一部を分離独立させたり、民営化するなど多様な道を進むことになった。
欧州を見てみると、イギリスの鉄道は1947年の法律によって国有化され、その後、1963年から公共企業体として運営されていたが、1994年に分割・民営化された。フランスの鉄道は、1937年の「公私混合株式会社」の発足以来、国有化の道を歩み始め、1983年からは全額政府出資の事業体として運営されていたが、1997年1月フランス国鉄 (SNCF) は、鉄道線路の建設と維持管理とを行うフランス鉄道線路事業公社 (RFF) を分離独立させ、フランス国鉄 (SNCF) 自体は鉄道輸送に専念する事業体となった。ドイツの鉄道は、1920年のドイツ国有鉄道の設立により国有化されたが、第二次世界大戦後の1951年の東西ドイツの分裂により、西ドイツは「ドイツ連邦鉄道」、東ドイツは「東ドイツ国鉄」として国有国営の事業体となった。1990年の東西ドイツ統一以降、1994年に東西両国鉄が「連邦鉄道財産機構」として統合され、その後業務別に三つの組織に分割されていった。
アメリカの鉄道は、第一次世界大戦中に一時期、国の管理下に置かれたことがあるが、基本的には民間の運営であった。しかし、自動車や航空機に比べ鉄道による旅客・貨物輸送の需要は伸びず、1971年には国が管理・運営する鉄道として都市間の旅客輸送を行うアムトラック (Amtrak)(正式名:全米鉄道旅客輸送公社National Railroad PassengerCorporation。その通称である「Americantrack」の略称がAmtrak)が、1976年には連邦政府の援助・監督下に経営される株式会社形態の貨物輸送鉄道コンレール (Conrail)(統合鉄道会社Consolidated Rail Corporationの略称)が設立された[2]。その後、アメリカでは1980 - 1990年代に規制緩和政策が推進されるとともに鉄道会社の統廃合が進み、コンレールも「ノーフォーク・サザン鉄道」と「CSX鉄道」に分割・買収される形で1999年に姿を消した。
日本の鉄道は、1906年(明治39年)に(特定地方限定の地方鉄道を除いて)国有化され、第二次世界大戦後、1949年(昭和24年)に公社(公共企業体)「日本国有鉄道」として新たに発足したが、1987年(昭和62年)4月分割・民営化が行われ、「国鉄」は「JR」となり、6つの旅客鉄道会社(JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州)と1つの貨物鉄道会社(JR貨物)の合計7つの会社として再出発した。日本の鉄道体系は、株式会社形態をとる私鉄(民鉄)の役割が比較的大きいことが、世界的に見て特徴となっている[2]。特に旅客に関しては大きな割合を分担し[2]、1984年(昭和59年)時点での年間輸送量は、国鉄68億人、私鉄118億人で、私鉄が国鉄を上回っていた[2](その後国鉄もJRとなりすべて国有ではなくなったが、1997年(平成9年)の年間輸送量は、JR旅客会社88億5919万人、私鉄133億8582万人で、やはり旅客では私鉄の役割が大きい[2])。なお貨物に関しては、さほどではなく、1997年の貨物輸送量がJR貨物が4729万トン、私鉄2194万トンであった[2]。
業務地域の広さによる分類
業務を行う地域によって、「全国鉄道」「地域鉄道」「地方鉄道」に分ける方法がある[2]。
- 全国鉄道は全国的規模の幹線鉄道[2]。主要都市間の長距離輸送を担う。フランスのSNCFや、日本の旧国鉄のようなもの。
- 地域鉄道は、ひとつの国をいくつかのブロックに分割した程度の規模で、(次に説明する)地方鉄道より広範囲に、相互の主要都市を結ぶ直通運転も行う[2]。日本のJR北海道、JR東日本…等もこの「地域鉄道」に分類される。
- 地方鉄道は、限られた地域内の局地的な短距離輸送が主で、大都市圏の地下鉄や郊外電車、路面電車などである[2]。経営形態としては民営鉄道や公営鉄道などがある[2]。
注釈
出典
- ^ デジタル大辞泉「鉄道」
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am 小学館『日本大百科全書』(ニッポニカ)「鉄道」西尾源太郎
- ^ “Spurbreiten - Im Spurbreitengewirr: cargo-partner”. www.cargo-partner.com. 2023年9月25日閲覧。
- ^ a b “7”. www.cc.matsuyama-u.ac.jp. 松山大学. 2023年9月25日閲覧。
- ^ 鉄道なぜなぜおもしろ読本 2003/10 新鉄道システム研究会 (著) P242
- ^ 『電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ』宇田賢吉 中公新書1948 P168
- ^ 『定刻発車』三戸祐子 新潮文庫 P280
- ^ 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 JR株式の処分(インターネットアーカイブ)
- ^ 東京メトロ 会社概要
- ^ 『実測!ニッポンの地域力』藻谷浩介 日本経済新聞出版社 2007年9月 ISBN 9784532352622
- ^ 『電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ』宇田賢吉 中公新書1948 P4-7
- ^ 『鉄道の科学 旅が楽しくなる本』丸山弘志 講談社 ブルーバックスB-431 1980年 P100
- ^ 『定刻発車』三戸祐子 新潮文庫 P17
- ^ 『定刻発車』三戸祐子 新潮文庫 P14
- ^ 鉄道なぜなぜおもしろ読本 2003/10 新鉄道システム研究会 (著) P90
- ^ 鉄道重大事故の歴史 2000/6 久保田博 (著) P3
- ^ 鉄道なぜなぜおもしろ読本 2003/10 新鉄道システム研究会 (著) P91
- ^ 『電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ』宇田賢吉 中公新書1948 P9
- ^ 『電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ』宇田賢吉 中公新書1948 P10-11
- ^ 『電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ』宇田賢吉 中公新書1948 P3
- ^ 『定刻発車』三戸祐子 新潮文庫 P176
- ^ なぜ風が吹くと電車は止まるのか 鉄道と自然災害 (PHP新書)
- ^ 『鉄道ファン』2017年3月号、交友社、2017年、p.124
- ^ “<只見線>鉄路20年度にも復旧 上下分離式”. 河北新報. (2016年12月27日). オリジナルの2017年12月6日時点におけるアーカイブ。 2016年12月30日閲覧。
- ^ 『新交通システムをつくる』斎間亭 筑摩書房 p.213
- ^ 2040年にディーゼル列車廃止 英政府、大気汚染の軽減に向け - NNA EUROPE・英国・運輸
- ^ EPA ディーゼル機関車・船舶から排出される大気汚染物質を規制へ|環境ニュース[海外|EICネット ]
- ^ Pandemic May Have To Wait For Vaccine, But Technology To Deal With Air Pollution Is Ready
- ^ FoE Japan | シベリアタイガプロジェクト
- ^ アマゾン熱帯雨林、幹線道路がもたらす開発と破壊 ブラジル 写真14枚 国際ニュース:AFPBB News (2019年12月21日)
- ^ "地中の環境改変"だけでは済まないリニア工事の実態 〜トンネル残土があちこちに山積み、大鹿村の現状を視察しました - 日本自然保護協会オフィシャルサイト
- ^ 長野)リニア工事に「ブナ伐採しないで」 住民が抗議:朝日新聞デジタル (2020年8月18日)
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