鉄道 鉄道の概要

鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/26 19:18 UTC 版)

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現在の世界の鉄道のネットワーク (2019年5月現在)
現代のイギリスのロンドン-エディンバラを結ぶ路線と、途中のと、そこを通過するイギリス鉄道802形
フランスのfr:Crisenoyあたりの鉄路(レール)と、その上を南フランス方面に向かって走るTGV。黄色い車体で側面に「LA POSTE」と表示しており、郵便物輸送専門の編成の例。
インドのMRTSの駅と列車
地下に敷設されたレールを走る地下鉄(写真は最古の地下鉄、ロンドン地下鉄

概説

鉄道とは平行に2本のレールを敷き、その上で列車などを走らせ、人や貨物を運ぶ交通機関、交通システムである。線路、旅客や貨物を載せて走る列車停車場などの施設、運行管理信号保安まで様々な要素で構成される一連の体系である。

「鉄道」は狭義には(その交通システム全体ではなく)レールを敷いた道「線路」(鉄路)だけを指すことがある[2]

鉄道は歴史的に見てまずイギリスやヨーロッパで発展した。フランス語では「chemain de fer(シュマン・ドゥ・フェール)」と言い[2]、これは直訳すると「鉄の道」である。日本語でも「鉄道」、中国語でも「鉄道」または「鉄路」と言う。なお製のレールだけでなく、たとえばコンクリート製の案内軌道などを用いるものもある[2]。また、鋼索(でできた太いロープ)で車両を支持し運転するもの(索道。ロープウェイ)も鉄道の一種としている[2]。広い意味では、懸垂式・跨座式のモノレール、案内軌条式のAGT(新交通システム)、浮上式鉄道を含む。

なお、『日本大百科全書』は定義文の冒頭部「専用の用地にレールを敷設した線路上を動力を用いた車両を運転し」としている。専用の用地でなく道路に敷設された路面電車は、日本の法制上は「軌道」とよんで「鉄道」とは区別している[2]。つまり、用地のありかたにも着目して線引きしている。

次にレールの素材に着目して線引きができるかについて検討してみると、英語では railroad(アメリカ)または railway(イギリス)と呼び、これは単に「レールの道」という意味で、語自体には「レールの材質」に関する意味が含まれていない語で造語して呼ぶようになった。だがイギリス同様に鉄道が早期から発展した欧州の大陸側のフランスでは chemin de fer(=鉄の道)、ドイツでも「Eisenbahn」(=鉄の道)と呼び、日本語でも「鉄道」、中国語でも「鉄道」または「鉄路」 等々、数多くの言語で「鉄の道(路)」という表現をする。鉄道はもともと鉄製レールの案内路を有するシステムであったので、レールの素材(材質)に焦点を当てて造語した[注 1]

なお、素材ばかりに着目しても、先に説明したようにコンクリートのレール(案内路)を用いたシステム(素材以外は駅や列車などシステム全体が同じようなシステム)を含められなくなってしまうので、レールの素材にこだわりすぎて線引きするのにも無理がある。このように交通システムはさまざまな変則的なものを開発することができる、という面もあり、また各国で法制度が異なっており、さらにトロリーバスまで含めるのか含めないのかなど、どこまでを法制上「鉄道」に含めて扱うかについても国ごとにかなりの差異があり、「鉄道」と「鉄道でないもの」の線引きのしかたはさまざまあり、世界的に見てかなり曖昧である。

よって本項では(焦点がぼけてしまわぬよう、周辺あたりの曖昧な領域は避け)できるだけ、この記事の意味の中心部、つまり専用の用地に敷いた鉄製レールを有するものについて解説することにし、鉄道に含めてよいかどうか曖昧な形態のものについては脚注などで軽く触れるにとどめる。

特徴
鉄道の(他の交通機関と比較しての)特徴としては、安全であること、(運行の)時間・時刻が正確であること、省エネであることなどが挙げられる[2]
分類・種類
鉄道はさまざまに分類することが可能で、たとえば技術的観点、経済的観点、法制的観点などに基づいて分類することができる[2]
他のさまざまな交通機関も含めた中での鉄道の役割・位置づけ
鉄道は、19世紀まで各国の主たる陸上交通機関であった[2]。だが20世紀前半からモータリゼーションが進展したり(20世紀半ばころから)航空交通が発達したので、鉄道はその役割を年々縮小してきている[2]。1980年代の欧米の(全交通機関輸送量に占める)鉄道輸送のシェアを見てみると、旅客輸送では、イギリス、フランス、旧西ドイツが7 - 11 %、アメリカが1 %、貨物輸送では12 - 38 %となっていた[2]。1997年の鉄道旅客輸送は、イギリス、フランス、ドイツが6 - 7 %、アメリカ1 %となっていた[2](つまり、さらにシェアが減少した)。1997年の貨物輸送のほうを見てみると、イギリス7 %、フランス、ドイツが20 - 22 %、アメリカ40 %である。よって、欧米の鉄道ではそれぞれの国の交通体系のなかでの「鉄道の役割」というのは、旅客輸送より貨物輸送のほうが大きい[2]。なお日本の鉄道での諸交通体系に占めるシェアも、モータリゼーションの進展とともに低下してきており、1955年(昭和30年)時点で日本の鉄道のシェアは、旅客輸送が82 %、貨物輸送が53 %であったが、1984年(昭和59年)には、旅客輸送が39 %、貨物輸送が5 %にまで減少し、1997年(平成9年)時点で旅客輸送は22 %、貨物輸送は5 %となっていた[2]。欧米のデータと比較すれば一目了然であるが、日本の鉄道では、貨物輸送より旅客輸送の役割が大きいことが特徴となっている[2]
こうした状況下で世界的に鉄道に期待されている機能と役割は、高速鉄道に象徴されるような「スピード」(移動の速さ)と、都市圏での通勤通学輸送にみられるような「輸送密度の高い大量輸送」である[2]

分類、種類

技術、経済、法制などの観点から分類可能である。

技術的分類

鉄道は、技術的には、軌道・車両の構造、軌道の敷設面、軌間、車両の動力源などに基づいて分類できる[2]

軌道・車両の構造による分類
普通鉄道特殊鉄道に分類できる。
普通鉄道は、2本のレールの上に自走する車両を運行させる一般的な鉄道である[2]。対して特殊鉄道は、普通鉄道とは異なるものをまとめて呼ぶ総称であり、たとえば普通鉄道に特別な装備を付加した歯車式鉄道(ラックレール式鉄道アプト式、シュトループ式など)と、全然別の構造の単軌条式鉄道(モノレール)、案内軌条式鉄道新交通システムを含む)、鋼索鉄道(ケーブルカー)などがあり[2]、さらに言うと「特殊鉄道」には(次第に「鉄道」なのかあいまいな領域になるが)索道(ロープウェー)、無軌条電車(トロリーバス)、磁気浮上式鉄道リニアモーターカー、マグレブトレイン 等)なども含められることになる。
軌道の敷設面による分類
大まかには、「地表に敷設する鉄道」「高架鉄道」「地下鉄道(地下鉄)」の3種にわけられる。
  • 地表に敷設する鉄道には、専用の用地に敷設する一般の鉄道と、道路上に敷設する路面電車がある。
  • 高架鉄道は、交通の頻繁な道路や他の鉄道との平面交差を避けるために、高架構造上にレールを敷設するものである。
  • 地下鉄道は、都市の地下のトンネル内に敷設する。
軌間(ゲージ)による分類
大まかには、「標準軌鉄道」「広軌鉄道」「狭軌鉄道」の3種にわけられる。
  • 標準軌鉄道は、ヨーロッパ・アメリカなど世界の70 - 75 %が採用しており、日本の新幹線や一部の私鉄も採用している、1435ミリメートルゲージである[2]
  • 広軌鉄道は、標準軌間より広いゲージで、スペインインド1672ミリメートルゲージ、旧ソ連地域の1525ミリメートルゲージがある[2]
  • 狭軌鉄道には、ニュージーランド、南アフリカ共和国、日本の旧国鉄在来線や多くの私鉄などの1067ミリメートルゲージ、またタイミャンマー、スイスの私鉄などの1000ミリメートルゲージなどがある[2]
日本の新幹線は「標準軌」で、在来線が「狭軌」である[2]

経済的分類

経営形態による分類

経営形態による分類がある。たとえば私企業による経営や、国による所有「国有」、国による経営「国営」などである。

世界の鉄道は、初期の段階においては(規模がまだ限られていたので)株式会社の形態が多かったが、やがて全国的な鉄道網の形成に伴い国有国営の形態をとるものが多くなっていった[2]。その後多くが、分割されたり、一部を分離独立させたり、民営化するなど多様な道を進むことになった。

欧州を見てみると、イギリスの鉄道1947年の法律によって国有化され、その後、1963年から公共企業体として運営されていたが、1994年に分割・民営化された。フランスの鉄道は、1937年の「公私混合株式会社」の発足以来、国有化の道を歩み始め、1983年からは全額政府出資の事業体として運営されていたが、1997年1月フランス国鉄 (SNCF) は、鉄道線路の建設と維持管理とを行うフランス鉄道線路事業公社 (RFF) を分離独立させ、フランス国鉄 (SNCF) 自体は鉄道輸送に専念する事業体となった。ドイツの鉄道は、1920年のドイツ国有鉄道の設立により国有化されたが、第二次世界大戦後1951年の東西ドイツの分裂により、西ドイツは「ドイツ連邦鉄道」、東ドイツは「東ドイツ国鉄」として国有国営の事業体となった。1990年の東西ドイツ統一以降、1994年に東西両国鉄が「連邦鉄道財産機構」として統合され、その後業務別に三つの組織に分割されていった。

アメリカの鉄道は、第一次世界大戦中に一時期、国の管理下に置かれたことがあるが、基本的には民間の運営であった。しかし、自動車や航空機に比べ鉄道による旅客・貨物輸送の需要は伸びず、1971年には国が管理・運営する鉄道として都市間の旅客輸送を行うアムトラック (Amtrak)(正式名:全米鉄道旅客輸送公社National Railroad PassengerCorporation。その通称である「Americantrack」の略称がAmtrak)が、1976年には連邦政府の援助・監督下に経営される株式会社形態の貨物輸送鉄道コンレール (Conrail)(統合鉄道会社Consolidated Rail Corporationの略称)が設立された[2]。その後、アメリカでは1980 - 1990年代に規制緩和政策が推進されるとともに鉄道会社の統廃合が進み、コンレールも「ノーフォーク・サザン鉄道」と「CSX鉄道」に分割・買収される形で1999年に姿を消した。

日本の鉄道は、1906年(明治39年)に(特定地方限定の地方鉄道を除いて)国有化され、第二次世界大戦後、1949年(昭和24年)に公社(公共企業体)「日本国有鉄道」として新たに発足したが、1987年(昭和62年)4月分割・民営化が行われ、「国鉄」は「JR」となり、6つの旅客鉄道会社(JR北海道JR東日本JR東海JR西日本JR四国JR九州)と1つの貨物鉄道会社(JR貨物)の合計7つの会社として再出発した。日本の鉄道体系は、株式会社形態をとる私鉄(民鉄)の役割が比較的大きいことが、世界的に見て特徴となっている[2]。特に旅客に関しては大きな割合を分担し[2]、1984年(昭和59年)時点での年間輸送量は、国鉄68億人、私鉄118億人で、私鉄が国鉄を上回っていた[2](その後国鉄もJRとなりすべて国有ではなくなったが、1997年(平成9年)の年間輸送量は、JR旅客会社88億5919万人、私鉄133億8582万人で、やはり旅客では私鉄の役割が大きい[2])。なお貨物に関しては、さほどではなく、1997年の貨物輸送量がJR貨物が4729万トン、私鉄2194万トンであった[2]

業務地域の広さによる分類

業務を行う地域によって、「全国鉄道」「地域鉄道」「地方鉄道」に分ける方法がある[2]

  • 全国鉄道は全国的規模の幹線鉄道[2]。主要都市間の長距離輸送を担う。フランスのSNCFや、日本の旧国鉄のようなもの。
  • 地域鉄道は、ひとつの国をいくつかのブロックに分割した程度の規模で、(次に説明する)地方鉄道より広範囲に、相互の主要都市を結ぶ直通運転も行う[2]。日本のJR北海道、JR東日本…等もこの「地域鉄道」に分類される。
  • 地方鉄道は、限られた地域内の局地的な短距離輸送が主で、大都市圏の地下鉄や郊外電車、路面電車などである[2]。経営形態としては民営鉄道や公営鉄道などがある[2]

注釈

  1. ^ 鉄製のレールによる方式は、鉄道事業法に基く国土交通省令である「鉄道事業法施行規則」において、普通鉄道と分類され、在来線、新幹線地下鉄等を含む多くの鉄道がこの形態である。英語でtramwayと呼ばれる路面電車も同じ形態であるが、日本の法律では軌道法により管轄され、「鉄道」ではなく「軌道」と区分される。ただし、例外も多く、鉄道と軌道の境界は曖昧と言えば曖昧である。
  2. ^ 国土交通省運輸部門の地球温暖化対策について によると旅客輸送では営業用乗用車・自家用乗用車・航空・バス、貨物輸送では自家用貨物車・営業用貨物車・船舶に比べて輸送量あたりの排出量が少ない。

出典

  1. ^ デジタル大辞泉「鉄道」
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am 小学館『日本大百科全書』(ニッポニカ)「鉄道」西尾源太郎
  3. ^ 鉄道なぜなぜおもしろ読本 2003/10 新鉄道システム研究会 (著) P242
  4. ^ 『電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ』宇田賢吉 中公新書1948 P168
  5. ^ 『定刻発車』三戸祐子 新潮文庫 P280
  6. ^ 鉄道建設・運輸施設整備支援機構 JR株式の処分インターネットアーカイブ
  7. ^ 東京メトロ 会社概要
  8. ^ 『実測!ニッポンの地域力』藻谷浩介 日本経済新聞出版社 2007年9月 ISBN 9784532352622
  9. ^ 『電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ』宇田賢吉 中公新書1948 P4-7
  10. ^ 『鉄道の科学 旅が楽しくなる本』丸山弘志 講談社 ブルーバックスB-431 1980年 P100
  11. ^ 『定刻発車』三戸祐子 新潮文庫 P17
  12. ^ 『定刻発車』三戸祐子 新潮文庫 P14
  13. ^ 鉄道なぜなぜおもしろ読本 2003/10 新鉄道システム研究会 (著) P90
  14. ^ 鉄道重大事故の歴史 2000/6 久保田博 (著) P3
  15. ^ 鉄道なぜなぜおもしろ読本 2003/10 新鉄道システム研究会 (著) P91
  16. ^ 『新交通システムをつくる』斎間亭 筑摩書房 P213
  17. ^ 『電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ』宇田賢吉 中公新書1948 P9
  18. ^ 『電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ』宇田賢吉 中公新書1948 P10-11
  19. ^ 『電車の運転 運転士が語る鉄道のしくみ』宇田賢吉 中公新書1948 P3
  20. ^ 『定刻発車』三戸祐子 新潮文庫 P176
  21. ^ なぜ風が吹くと電車は止まるのか 鉄道と自然災害 (PHP新書
  22. ^ 『鉄道ファン』2017年3月号、交友社、2017年、p.124
  23. ^ “<只見線>鉄路20年度にも復旧 上下分離式”. 河北新報. (2016年12月27日). オリジナルの2017年12月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20171206101545/http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201612/20161227_63006.html 2016年12月30日閲覧。 


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