Ungarische Rhapsodie S.244とは? わかりやすく解説

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リスト:ハンガリー狂詩曲

英語表記/番号出版情報
リストハンガリー狂詩曲Ungarische Rhapsodie S.244作曲年: 1846-85年 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第1番 嬰ハ短調 Nr.1 cis moll1300 No Image
2 第2番 嬰ハ短調 Nr.2 cis moll1100 No Image
3 第3番 変ロ長調 Nr.3 B dur4分30秒 No Image
4 第4番 変ホ長調 Nr.4 Es dur5分00 No Image
5 第5番 ホ短調「悲しい英雄物語」 Nr.5 e moll 'Heroide-elegiaque'8分30秒 No Image
6 第6番 変ニ長調 Nr.6 Des dur7分00 No Image
7 第7番 ニ短調 Nr.7 d moll5分30秒 No Image
8 第8番 嬰ヘ短調 Nr.8 fis moll6分30秒 No Image
9 第9番 変ホ長調ペシュト謝肉祭」 Nr.9 Es dur 'Pester Karneval'1130秒 No Image
10 10番 ホ長調前奏曲」 Nr.10 E dur 'Preludio'5分30秒 No Image
11 第11番 イ短調 Nr.11 a moll5分30秒 No Image
12 12番 嬰ハ短調 Nr.12 cis moll1030秒 No Image
13 13番 イ短調 Nr.13 a moll 9分00 No Image
14 第14番 ヘ短調 Nr.14 f moll 1200 No Image
15 15番 イ短調「ラコーツィ行進曲」 Nr 15 a moll 'Rakoczy Marsch' 6分00 No Image
16 第16番 イ短調 Nr.16 a moll5分30秒 No Image
17 第17番 ニ短調 Nr.17 d moll3分00 No Image
18 18番 嬰ヘ短調 Nr.18 cis moll3分30秒 No Image
19 19番 ニ短調 Nr.19 d moll1030秒 No Image

作品解説

2009年1月 執筆者: 岡田 安樹浩

一般にハンガリー狂詩曲」の名で親しまれている作品集は全19からなるが、その創作2期分かれている。1851年から53年にかけて出版され第1番から第15番ラーコーツィ行進曲ラコッツィ行進曲)」までの作品は、リスト1839年1846年ハンガリー訪問したことがきっかけ作られ作品群(『ハンガリーの民族旋律』S.243と『21のハンガリーの民族旋律と狂詩曲』S.242これらの詳細について各曲集の解説参照)がそのルーツとなっている。一方第16番から第19番までの作品は、晩年1882年から85年にかけて作られたものである
リストが「ハンガリー的なもの」として考えていた音楽が、厳密にはそうではないということは民謡収集などの研究によって今や明白であるが、この曲集はリストなりのハンガリー音楽研究成果であり、その内容とがめるのはナンセンスである。
リスト考える「ハンガリー的なもの」とは、ジプシー楽団によって演奏され音楽であり、彼らは聴衆求めに応じて土着の民謡の他、聴衆になじみの深い音楽などを「彼らのスタイル」で演奏したリストの「ハンガリー狂詩曲集」を考えるうえで重要なのは、このジプシー楽団の「演奏スタイル」である。
彼らの演奏スタイルルーツヴェルブンコシュ当時マジャル呼ばれていた)というもので、もともと募兵行事演奏されるものであったが、次第音楽だけが市民権を得るようになり、行事から完全に独立して当時の人々のあいだで流行した
このヴェルブンコシュはゆったりとしたテンポ始まり徐々にテンポをあげてゆき、最後熱狂的に終わるというものである。はじめのゆったりとした部分では単純な旋律がソロ・ヴァイオリンによって過度なまでに装飾され拍子感がほとんどない独特な演奏披露され速度をあげた部分ではクラリネットやツィムバロムなどが加わり技巧的パッセージ繰り広げる。このほかにもジプシー楽団緩急のはっきりとした音楽いくつも並べて演奏する習慣があり、こうしたスタイルリストは「ハンガリー狂詩曲集」の中に反映させている。曲集中には頻繁に「ラッシャンLassan(ゆっくり)」と「フリシュカFriska(はやく)」という語が登場するし、民族楽器であるツィムバロムを模倣した音楽頻繁に用いられている。また、単純な旋律を細かい装飾音符装飾しフェルマータ多用などでヴェルブンコシュ音楽スタイル記譜している。
こうしたスタイル第16番以降作品にもおおむね踏襲されているが、作品規模晩年の作品群に特徴的なようにコンパクトなものとなっている。


第1番 嬰ハ短調
冒頭レチタティーヴォ主題による緩やかなテンポ前半と、Allegro animato軽快主題による急速なテンポ後半という2部構成
冒頭主題嬰ハ短調提示されるがすぐにホ長調転調し、楽曲全体ホ長調基本としており、中間部変ニ長調嬰ハ短調の(異名同音の)同主調である。
弟子のツェルダヘリに献呈

第2番 嬰ハ短調
集中もっともポピュラー作品随所カデンツァ挿入する箇所があり、リスト自身複数カデンツァ残している。ホロヴィッツアレンジして演奏したことでも知られる
細かな装飾音符による導入部導音ジプシー音階風に用いた主題印象的なLassanが続く。Lassanの中に既にツィムバロムを模した主題あらわれており、これがFriskaの最初主題となる。この楽曲のFriska部分は、更にジプシー音階風の主題(嬰へ短調)でテンポ上げVivaceの力強い主題嬰ヘ長調)や「クシコスポスト」で耳なじみの主題次々とあらわれる。
ラースロー・テレキー伯爵献呈

第3番 変ロ長調
冒頭Andante主題極めて低い音域提示され伴奏和音変ロ短調とも変ロ長調とも思える極めて印象的なのである中間部Allegrettoト短調だが終止は同主長調向かっており、同主調関係がこの楽曲となっていることは明らかである。冒頭主題が再び回帰した後、中間部主題テンポ速めずあらわれて楽曲閉じられる
レオ・フェステティックス伯爵献呈

第4番 変ホ長調
緩やかなテンポQuasi adagioAndantino)の前半急速なテンポAllegrettoPresto)の2部構成後半部分のオクターヴ奏法連続バス和音交互に奏する伴奏組み合わせは、単純ながらも演奏決し容易ではないこのようなスタイルはこの曲集にしばしば見られる
カシミール・エステルハーツィ伯爵献呈

第5番 ホ短調「悲しい英雄物語
付点リズム伴ったアウフタクトをもつ冒頭主題の音型は紛れもなく葬送行進曲である(ベートーヴェンの『英雄交響曲』の第2楽章も同じスタイル葬送行進曲である)。この葬送行進曲ホ短調)の部分と、3連音符伴奏の上甘美な旋律歌われる部分1回目ト長調2回目ホ長調)が交互にあらわれる(A-B-A-B’-A)構成
レヴィツキ伯爵夫人献呈

第6番 変ニ長調
演奏効果の高さからしばしば演奏される作品Tempo giustoの指示決然とした開始はこの曲集では珍しい例である。変ニ長調導入部分に続いて嬰ハ長調変ニ長調異名同音のため実質的に変わらないが、リストはわざわざ調号変更行っている)で軽快主題極めて速いテンポPresto)で提示される中間部変ロ短調で、細かい装飾フェルマータ多用によって拍節感を曖昧にしている。ヴェルブンコシュ演奏スタイル記譜した好例いえよう後半では変ロ長調転じ第5番見られたようなオクターヴ奏法単純な伴奏型のスタイルによって華々しく楽曲閉じる。
アッポニー伯爵献呈

第7番 ニ短調
熱烈なジプシースタイル演奏せよ」というリスト指示のとおり、遅いテンポLento)で細かい装飾音符でうめつくされ前半部分と、急速なテンポVivace)による激し後半部分との2部構成ジプシー音楽スタイル簡潔に模倣した楽曲1つである。
フェリ・オルチ男爵献呈

第8番 嬰ヘ短調
第7番と同様、遅いテンポによる細かな装飾音型の前半Lento a capriccio嬰ヘ短調)と、テンポ速い後半Allegretto con graziaPresto giocoso assai嬰ヘ長調からなる単純な2部構成
A.D’ アウグス氏に献呈

第9番 変ホ長調ペシュト謝肉祭
ペシュトとは現在のハンガリー首都「ベダペシュト」の「ペシュト」のことである。ドナウ川挟んで西側の丘の上位置するブダ」に対し東側の「ペシュト」は平野経済的に発展したであった。「謝肉祭」はキリスト教(主にカトリック地域)のお祭りで、四旬節復活祭46日前)の前に行われる。そのメイン・イベント大規模な仮装行列で、この作品はそうした雰囲気模写していると考えられる
Moderato開始される比較緩やかな前半は、遅いLassanの音楽とは異なっており、楽曲重点Finale添えられPresto以降部分置かれている。ファンファーレ風の開始仮装行列開始告げラッパのようでもある。
緩・急2部構成ではあるが、他のジプシースタイル2部構成とは若干異なる面を見せている。
H.W.エルンスト献呈

ヴァイオリニストハインリヒ・ヴィルヘルム・エルンスト献呈

10番 ホ長調前奏曲
華やかな上昇音形が主体となって楽曲全体構成されており、冒頭急速な音階パッセージはその根源となっている。AndanteからAllegrettoVivaceへと段階的にテンポ速めてゆき、最終的にVivacessimoにまで達する。中間部に「quasi zimbalo」と指示されたツィムバロムを模した音楽挿入されている。
エグレッシー・ベニーに献呈

第11番 イ短調
ツィムバロムを模したトレモロの音型に始まる(第10番同様quasi zimbaloの指示)。楽曲構成緩やかな前半Lento a capriccioイ短調Andante sostenutoイ長調)と急速な後半Vivace assai嬰へ短調-Prestissimo嬰ヘ長調からなる2部構成である。前半部分では細かい音価による即興風の音楽が繰り広げられるが、装飾音符での記譜避けられており、32分音符64分音符などの細かな音価記譜されている。
フェリ・オルチ男爵献呈

12番 嬰ハ短調
前打音特徴的な力強い主題による導入と、この主題による遅いテンポ即興パッセージ経てAllegroジプシー主題ホ長調)、鐘を模したパッセージなどがあらわれる。冒頭前打音強調した主題回帰した後、速い変ニ長調嬰ハ短調の同主調異名同音への読み替え)の部分Allegretto giocoso-Stretta Vivace)に突入する最後に1小節だけAdagioになり、前打音を伴う主題再現されるが、すぐにPrestoとなって劇的に楽曲閉じる。
ヴァイオリニストヨーゼフ・ヨアヒム献呈

13番 イ短調
やはり遅いテンポ前半Andante sostenuto-Piu Lento)と速いテンポ後半VivacePresto assaiからなる明快な2部構成楽曲それぞれの部分イ短調前半イ長調後半からなる
レオ・フェステティックス伯爵献呈

第14番 ヘ短調
増2度進行特徴的な葬送行進曲Lento quasi marcia funebre)で開始され、同主調ヘ長調)で英雄的な行進曲Allegro eroico)へ至る。そしてニ長調ホ長調転調しながら動機発展させると、今度ジプシー風の音楽がイ短調展開されるAllegretto a la Zingarese)。更に変ニ長調即興パッセージなどを経てヘ長調急速な音楽Vivace assaiPresto assaiAllegro brioso)で締めくくられる。同曲集中で最も調性発展顕著な楽曲であり、構成多少複雑である。
ハンス・フォン・ビューロー献呈

15番 イ短調ラーコーツィ行進曲
ラーコーツィ行進曲」はハンガリー民謡として伝わっていた旋律で、ラーコーツィ・フェレンツ2世お気に入りだったことからこの名で呼ばれている。ベルリオーズも『ファウストの劫罰』の中でこの行進曲書いている。原曲無名音楽家によって17世紀後半頃に作曲されたと思われるが、正確なことはわかっていない。

第16番 イ短調
Allegro導入と遅いテンポ前半速いテンポ後半からなる2部構成導入部続いてカデンツァ挿入され遅いLassanの部分になるが、この中で幾度もカデンツァ挿入される導入主題回帰してすぐにAllegro con brio速い部分突入するイ長調嬰ヘ長調経由してイ長調終止する。
画家のミヒャエル・ムンカーチに献呈(ムンカーチ展のために作曲)。

第17番 ニ短調
遅いテンポLentoからニ長調AllegrettoUn poco piu animato徐々に加速し楽曲最後までテンポをどんどん速めてゆく(poco a poco piu animato sin al Fine指示典型的なジプシー音楽スタイル書かれている
ジプシー音階がかなり意識して用いら、終結音も変ロとなっており、調性的な音の進行選択意図的に避けられているように思われる

18番 嬰ヘ短調
遅いLentoのLassan、速いPrestoのFriss(Friska)の極めて単純明快2部構成。嬰へ短調はじまり嬰ヘ長調締めくくられる。
ブダペシュト・ハンバリー展覧会1885年に際して作曲

19番 ニ短調
アブラーニの「高貴なチャールダーシュ」による。同曲集最後の曲であり、リスト最晩年作品である。やはり遅いLentoのLassanと、速いVivaceのFriss(Friska)の明快な2部構成
調性ニ短調始まりニ長調終止するが、導音半音高められた第4音が強調されており、意識的にジプシー音階用いられている。




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