順延開催決定をうけ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 08:39 UTC 版)
「第44回世界遺産委員会」の記事における「順延開催決定をうけ」の解説
1年遅れでの開催決定から、オンライン開催への変更と紆余曲折を経たが、開催に漕ぎ着けたことになどに対し、各方面から談話が出されている。 〔開催決定時〕 中国教育部は委員会開催時の世界の感染状況に関わらず、委員会開催に際しては万全の疫学的対策と緊急医療体制を提供することを確約した。 委員会開催地となる福建省にて中国世界遺産観光振興同盟会議が開催され、新型コロナウイルス感染症流行後の外国人による中国の世界遺産観光再開のきっかけを委員会参加者による視察(上掲「中国の準備状況」参照)としたいとし、特に文化遺産に関しては漢詩の世界観を前面に押し出す「詩的旅游(Poetical Tourism)」を推進することを決めた。 中国文化遺産研究院(中国語版)の中国世界文化遺産センター主催で中国世界文化遺産年次会議が開催され、各世界遺産所在地の省・県・鎮単位までの保護に携わる人員が文化遺産と複合遺産だけで合計で3万6千人もおり、世界最高の管理体制であることを確認し、世界遺産委員会でも報告するとした。また、2012年の世界遺産条約40周年記念会議で採択された「京都ビジョン」で世界遺産保全に地域住民の協力が不可欠とされたことから、人民参加型の保全を促進することも決めた。 2021年3月5日より、世界遺産委員会をエスコートする市民ボランティアの研修が福建省で始まった。 2021年3月5日より始まった第13期全人代において、昨年福建省長(知事に相当)に就任した王寧は、福建省に17年勤務した習近平国家主席(総書記)から世界遺産委員会の成功を強く求められ、その後福建入りした習主席から再度念押しされた。 中国政府により抑圧されているウイグル族の国外を拠点とする反政府活動団体が、「本来であれば世界遺産に推薦すべきカシュガルにおいて文化遺産(主としてモスク)の破壊活動(文化浄化)が行われており、世界遺産委員会を中国で開催すべきでない」と訴えた。 中国のSNSのWeChat(微信)で「武漢華南海鮮卸売市場や武漢市中心医院を世界遺産にしたほうがいい」という投稿があると当局が削除している(中国のネット検閲も照会)。 奄美大島と徳之島の登録審査を待つ鹿児島県知事が「(学術的評価を下す諮問機関の中間報告が出されていないことをうけ)気を緩めず着実に進める」とコメント、奄美市長は「コロナ禍を克服した上で委員会が開催されることを願う」と期待した。 縄文遺跡の登録審査が予定通り2021年に行われる可能性が高まったことに関して、青森県知事は「正式な連絡はないがチャンスがあるなら嬉しい」とした。 2021年1月20日に発足したアメリカのバイデン政権はリベラルで国際協調路線を取る姿勢を示していることから、世界遺産委員会が2018年末に脱退したユネスコに復帰するきっかけになるのではとして、オブザーバー参加を呼び掛けるなどの勧誘を模索する。また、アメリカのユネスコ不在中に、現在ジュネーブに置かれているユネスコ国際教育局を上海へ誘致する動きが活発化するなどしており、文化・外交政策での対中政策の観点から早期のユネスコ復帰を上級顧問や主席補佐官から大統領に対して具申されており、世界遺産委員会への参加は良い機会であるとする。 〔オンライン開催変更後〕 オンライン開催について、ブラジルでの第34回世界遺産委員会で開催国(議長国)の委員を務めた文化人類学者のChristoph Brumannは、「近年苛烈さを極めている登録のためのロビー活動が出来なくなり、公正な審査になるであろう」とした。 結党100周年を迎える中国共産党が新たな人民奉仕政策を掲示し、その中に有形無形の文化遺産の保護も含まれた。上掲「中国の準備状況」にあるように農村家屋・集落景観の世界遺産候補地化を推進するにあたり、農村における貧困撲滅と経済格差の解消やインフラ整備も進めつつ伝統文化が失われないよう最大限配慮するとした。この取り組みを委員会開催中に公開される動画配信の公式サイト内に特設のバナーリンクを貼って公開することも検討。 オンライン開催ということで、回線接続中のハッキングなどを警戒し、インターネットセキュリティを高める必要があるとして、ネット警察による管理と監視を行うとした。 運営効率化のため、文化遺産と自然遺産のように個別議題の分科会で出席者が重複しない場合は同時開催するとし、輻輳防止のため、メイン会場とは別に拠点を複数設けることとした。委員会の議長を務める田学軍が、委員会を福州市から200Km以上離れた廈門市の廈門大学と共同開催するとした。 武夷山麓に新設された兴田欢迎您馆(興田歓迎您館)で自然遺産の、城村漢城遺跡に設けられている闽越王城博物馆(閩越王城博物館)で考古学関係の文化遺産に関する議題の一部を主導する副会場とするとした。 上記以外でも副会場となる福州海上絲綢之路展示館(福州海のシルクロード展示館)・福州辛亥革命紀念館(福州辛亥革命記念館)・福建省科技档案館(福建省科学技術館)などが会場整備のため改修工事に入り、5月1日の労働節から当面休館や時短営業となった。 2024年パリオリンピックの開催に合わせた再建を目指すノートルダム大聖堂に関して、前委員会では議題として取り上げられなかったため(第43回世界遺産「委員会に対する批評」の節参照)、再建の責任者である建築家のフィリップ・ビルヌーブ(フランス語版)や世界遺産センターに勤務した経験からアドバイザーを務めるFrancesco Bandarinらが再建案について世界遺産委員会の場で公式な議論と承認を下すよう促した。 4月18日にコロナ下で二度目となる「世界遺産の日」を迎え(前回に関しては上掲「ユネスコの状況」参照)、ICOMOSはオンラインによる拡大委員会を全面的に支持。また、本年の活動テーマを「複雑な過去と多様な未来」とし、歴史認識の違いから起こる文化摩擦を見つめ(複雑な過去)、その解決策を思案すること(多様な未来)に重きを置き、同時にコロナ禍による混乱もいずれ複雑な過去になるとし、コロナ後の多様な未来を起草する。さらに今年は日曜日になったことから視聴者が多いと踏み、各国のICOMOS組織がウェビナーを実施した(日本や中国はなし)。 4月22日にコロナ下で二度目となるアースデーを迎え(前回に関しては上掲「各国・機関の反応・対応」参照)、本年の活動テーマを「地球の回復」とし、さまざまな環境破壊からの回復を目指すとともに、コロナ禍からの回復も目指し、世界遺産委員会でもレジリエンス(回復)について協議するとした。 2021年11月にイギリスで開催予定の第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)において、地球温暖化の原因の一つとされる二酸化炭素の吸収源として炭素固定作用があり、ボーリング調査によって過去の気温変化のサンプルを回収することもできる泥炭地の保護を議題とすることが決まっており、気候変動枠組条約機構(UNFCCC)が泥炭地の世界遺産登録による保護を世界遺産委員会に打診した。 委員会開催(7月16~31日)に先立ち、7月7~13日に世界遺産管理者(サイトマネージャー)育成のためのウェビナーを中国が開催することになり、委員会の予行演習的な位置付けとなった。上掲本節「開催決定時」にもあるように、中国は充実した管理体制を取っており、人員数に頼らないノウハウを各国に伝授する。 福建省の伝統芸能高甲劇の演目『玉珠串』を映像として撮影し、オンライン開催の世界遺産委員会開期中にストリーミング発信することになり、京劇・崑劇・粤劇(中国語版)に続く無形文化遺産への登録の足掛かりとする。 開催地名の福建省・福州と縁起文字としての「福」の字を旧字体篆刻書体であしらった委員会のエンブレムを作成し、オンライン会議での休憩中や議事中断時の待機画面やスプラッシュスクリーンとしても使用するほか、市中に貼り出すポスターでは倒福も認める。 開会式は福州海峡文化艺术中心(福州海峡文化芸術センター)で挙行する。 一度は会場周辺の誘導や交通整理を担うボランティアを募集したが、オンライン開催になったことから、通訳・メディア対応・記録・ネットワークシステム管理など専門知識を専攻する大学生を対象に再募集した。 在中国海外メディアを対象とした国際メディアレビューを2021年は5月24~28日に実施し、日程の中に福州市訪問を組み込み、「A date in Chine meets Fujian」として福州の史跡や文化に触れつつ、プレスセンターを含む委員会開催の準備状況や当日の取材の仕方に対する注意事項(主として感染対策)のレクチャーを行った。 6月の第2土曜日を文化・自然遺産の日および無形文化遺産の日と定めている中国は、委員会開催を前に例年にない大規模な記念日として祝うことにした。 委員会初のオンライン開催となったことに対して、習近平主席(総書記)が「中国のIT技術を世界に喧伝する良い機会であり、成功を収めるように」との談話を出した。 初のオンライン開催ということでユネスコが6月15日にオンラインでのオリエンテーションを開催。 中国の世界遺産委員会開催準備委員会が6月23日に予行演習となるオンライン形式のデモンストレーションを各副会場とリレーして開催。
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