術中合併症とは? わかりやすく解説

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術中合併症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/14 15:20 UTC 版)

術中合併症とは手術中におこる望ましくない生体反応のことである。これらは行う手術によって様々であるので、ここでは全身麻酔を行う場合を想定した例を列挙するが、それ以外の生体反応が現れる可能性はある。

全身麻酔における術中合併症

喉頭痙攣
喉頭筋の収縮により声帯の閉鎖が起こることである。全身麻酔の導入時や覚醒時に起こりやすいと言われている。原因としては分泌物、異物、デスフルランなどの吸入麻酔薬による気道刺激、低酸素状態、咽頭部の操作、バルビツール酸系の薬物などが考えられている。上気道の閉塞であるので吸気時に笛声音やシーソー呼吸が観察される。治療は酸素投与である。大抵は短時間で軽快するが、改善を認めない場合は筋弛緩薬の投与を行う。
気管支痙攣
簡単に言うと術中の気管支喘息のことである。気管支喘息の素因のある患者に気管支攣縮作用をもつ薬物を投与すると起こるといわれている。術中は麻酔器のリザーバーバッグが急に硬くなる、酸素飽和度の低下などによって疑う。セボフルランなどの気管支拡張作用のある吸入麻酔薬濃度を上げる、エフェドリンの投与、または気管支喘息の発作に基づいた治療を行う。気管チューブが刺激となって起こることもあるので、チューブの位置を変えてみることも重要である。
悪性高熱症
スキサメトニウムやハロタンを用いると起こりやすいといわれているが、平成19年(2007年)現在これらの麻酔薬を用いることは非常に少ないものの発生している。セボフルランといった新しい吸入麻酔薬でも起こると考えられている。初発は頻脈や不整脈であることが多く、15分で0.5度のペースで体温が上昇する。筋強直が起こるとポートワイン尿(ミオグロビン尿を伴う腎不全)が起こる。危険因子としては、家族内発生、血中CK値高値、筋ジストロフィーといった筋疾患や側弯症といった骨格疾患があげられる。こういった危険因子がある場合は麻酔計画を考え、予防することが重要である。治療にはダントロレン筋弛緩薬のひとつ)を用いる。ダントロレンによる治療がおこなわれる以前は死亡率80%を超えていたが、治療法確立以後は20%程度に抑えられている。
嚥下性肺炎[注釈 1]
メンデルソン症候群ともいう。胃に食物残渣がある状態を指すいわゆるフルストマックの患者や肥満症、妊婦、イレウス、幽門狭窄症、食道裂孔ヘルニアの患者で多いといわれている。胃の内容物で起こった場合は、化学性肺炎となり重篤となり得る。喘息様症状、チアノーゼ、頻脈をおこし、肺水腫にいたることもある。予防するために手術前には絶飲食とするが、妊婦の場合は予防が難しい。
しゃっくり
しゃっくりとは主に横隔膜への機械的な刺激などによって迷走神経が亢進状態になったときに起こるといわれている。迷走神経関与の不随意運動ミオクローヌスであると考えられている。術中は麻酔を深くしたり、筋弛緩薬を投与したり、横隔膜刺激の原因の除去などを行う。術後は消化管機能改善薬の投薬なども効果的である。
バッキング
簡単に言うと、気管挿管中のであり、気道反射の亢進によっておこる。多くの場合は浅麻酔が原因となるが気管チューブによる刺激が原因となる場合もある。麻酔薬(効果の早い静脈麻酔薬筋弛緩薬)の追加、気管チューブの位置の修正が対応治療となる。
高血圧
高血圧に関して、二酸化炭素の蓄積、軽度の低酸素血症や浅麻酔が原因と考えられている。痛みの度合いによって必要な麻酔深度は異なるため、浅麻酔による高血圧を疑ったらオピオイドをはじめとする鎮痛薬を投与する場合が多い。
低血圧
手術侵襲が低い時期の麻酔薬の相対的な過量投与で起こることが多い。体位変換、特に頭高位でも起こりやすい。他にも換気不全、心大血管操作、神経反射、アナフィラキシーなどもあり得る。出血の場合は頻脈が先行することが多い。治療は原因除去が重要である。
不整脈
不適切な換気、不適切な麻酔深度、手術操作など様々な原因で不整脈が生じる。完全房室ブロックや心室頻拍等は致命的な不整脈に移行することが多く危険である。

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 誤嚥、嚥下性肺炎は術中に起こる事もあるが、既に術前に起こっていたり、術後に起こる事も少なくない。

出典


術中合併症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/28 03:27 UTC 版)

脊髄くも膜下麻酔」の記事における「術中合併症」の解説

血圧低下徐脈起こりやすいので、昇圧薬(エフェドリンなど)や硫酸アトロピン準備しておくことが必須である。また低血圧予防として輸液が必要である。 血圧低下 交感神経節前線維(B繊維)のブロックによる静脈拡張原因考えられている。知覚運動麻痺(A,C繊維)より早く起こる。このことから静脈収縮作用のみをもつ昇圧薬が最も望ましいが2007年現在そのような薬物存在しない輸液とエフェドリンが用いられる。最低でも平均動脈血圧が50mmHgを保つように心がける徐脈 T1~5の交感神経心臓ブロック血圧低下反応した心臓の圧受容器反射よるもの考えられている。血圧維持できないような徐脈進行性認めない限り硫酸アトロピン不要考えられている。 呼吸抑制 横隔膜(C3~C5支配)は基本的に抑制されることはまずない。外肋間筋内肋間筋腹直筋といった呼吸補助筋Thレベル麻酔麻痺となるが高齢者呼吸機能障害者以外では問題となることは少ない。低血圧鎮静薬鎮痛薬によって延髄呼吸中枢抑制されたりTh4より高位麻酔がきくと喘息発作誘発されることはある。治療の基本酸素投与である。 悪心、嘔吐 交感神経ブロックよる、胃液分泌亢進消化管蠕動運動亢進、または血圧低下によるCTZ刺激によっておこる。酸素投与輸液硫酸アトロピン昇圧薬投与改善することもある。消化管機能改善薬適応がある。 全脊髄くも膜下麻酔 脊髄くも膜下麻酔の際に局所麻酔薬作用脳幹部にまで及び、血圧低下呼吸停止全身筋弛緩意識消失瞳孔散大対光反射消失が起こること。徐々に進行することが多い。呼吸補助しながら循環管理を行う。脊髄くも膜下麻酔の際、あるいは硬膜外麻酔硬膜穿刺になっていることに気づかず予定量の局所麻酔薬使用した後に起こる。正しく脊髄くも膜下麻酔されていても起こることがある

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術中合併症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 08:58 UTC 版)

全身麻酔」の記事における「術中合併症」の解説

喉頭痙攣 喉頭筋の収縮により声帯閉塞が起こる生理現象である。全身麻酔導入時覚醒起こりやすいと言われている。原因としては分泌物異物エーテルやデスフルランといった吸入麻酔薬による気道刺激低酸素状態、咽頭部操作バルビツール酸系薬物などが考えられている。上気道閉塞であるため吸気時に声音シーソー呼吸観察される治療酸素投与である。大抵は30秒ほどで軽快するが、改善傾向認めない場合筋弛緩薬投与を行う。筋弛緩薬としては作用発現早いスキサメトニウムがよいといわれている。 気管支痙攣 術中気管支喘息のことである。気管支喘息素因のある患者クラーレフェンタニル、プロプラノロールといったβ遮断薬スキサメトニウムなど気管支攣縮作用を持つ薬物投与すると起こるといわれている。術中はリザーバーバックが急に硬くなること、酸素飽和度低下することによって疑う。治療としてはセボフルラン、イソフルランといった気管支拡張作用のある吸入麻酔薬深くしたり、エフェドリンの投与、また気管支喘息発作基づいた治療を行う。気管チューブ刺激となって起こることもあるため、チューブ位置変えてみることも重要である。 悪性高熱症 スキサメトニウムやハロタンを用いると発症しやすいといわれているが、平成19年2007年)現在、これらの麻酔薬用いることは非常に少ないものの発生している。セボフルランといった新し吸入麻酔薬でも起こると考えられている。初発頻脈不整脈であることが多く、約15分で0.5程度体温上昇する筋強直が起こるとポートワイン尿(ミオグロビン尿を伴う腎不全)が起こる。危険因子としては、家族内発生、血中CK高値筋ジストロフィーといった筋疾患側弯症といった骨格疾患あげられる。こういった危険因子がある場合麻酔計画考え予防することが重要である。治療にはダントロレンナトリウム用いる。ダントロレンナトリウムによる治療が行われる以前死亡率80%を超えていたが、治療法確立以後20%程度抑えられている。 嚥下性肺炎 メンデルソン症候群ともいう。フルストマックの患者肥満症妊婦イレウス幽門狭窄症食道裂孔ヘルニア患者で多いといわれている。胃の内容物起こった場合は、化学肺炎となり重篤となる。喘息症状チアノーゼ頻脈起こし最終的に肺水腫にいたる。予防するために手術前には絶飲食となるが、妊婦の場合胎児対す栄養不足可能性もあってその予防難しい。 しゃっくり しゃっくりとは、おもに横隔膜への機械的な刺激などによって迷走神経亢進状態になったときに起こるといわれている。迷走神経関与不随意運動ミオクローヌスであると考えられている。術中麻酔深くしたり、筋弛緩薬投与したり、横隔膜刺激原因除去などを行う。術後消化管機能調節なども効果的である。 バッキング 気管挿管中の咳であり、気道反射の亢進によって起こる。多く場合は浅麻酔原因となるが、気管チューブによる刺激原因となる場合もある。麻酔薬効果早い静脈麻酔薬筋弛緩薬)の追加気管チューブ位置微調整する行為直接治療解決策)となる。 高血圧 高血圧に関して二酸化炭素蓄積軽度低酸素血症や浅麻酔原因考えられている。痛み度合いによって必要な麻酔深度異なるため、浅麻酔による高血圧疑ったオピオイドはじめとする鎮痛薬投与する場合が多い。 低血圧 体位変換による影響麻酔薬過剰投与で起こることが多い。ほかにも換気不全、心大血管操作神経反射異型輸血アナフィラキシーショックなども考えられる出血場合頻脈先行することが多い。治療原因除去が一番重要である。 不整脈 不適切換気不適切麻酔深度など、さまざまな原因不整脈生じる。完全房ブロック心室頻拍心室性不整脈致命的な不整脈である心室細動移行することが多く危険である。

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