腰椎穿刺
腰椎穿刺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/19 01:39 UTC 版)
腰椎穿刺(ようついせんし)は脊椎穿刺(英語: Lumbar puncture又はspinal tap [注釈 1])とも呼ばれ、診断・検査のために脳脊髄液(または髄液)を採取するために、脊柱管に針を挿入する医療処置である。腰椎穿刺の主な理由は、脳や脊髄を含む中枢神経系の病気の診断に役立てることである。これらの状態の例には、髄膜炎およびくも膜下出血などがある。条件によっては疾患の治療目的に行われることもある。頭蓋内圧(頭蓋骨内の圧力)が既に上昇している場合は、脳実質が圧力により脊髄に向かって押し出される(脳ヘルニア)リスクがあるため、禁忌である。場合によっては、腰椎穿刺を安全に実施できないことがある(たとえば、重度の出血傾向)。安全な処置と見なされているが、硬膜穿刺後頭痛(Post Dural Puncture Headache: PDPH)は、細い非カッティング針[注釈 2]を使用しない場合によく起こる副作用である[1]。
- 1 腰椎穿刺とは
- 2 腰椎穿刺の概要
腰椎穿刺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 02:42 UTC 版)
腰椎穿刺では患者を横向きに寝かせ、局所麻酔後、脳脊髄液(CSF)を採取するため針を硬膜嚢(脊髄を包む嚢)に挿入する。針を差し込んだらまずマノメータを用いてCSF初圧を測定する。初圧は通常6~18 cm water (cmH2O)で、細菌性髄膜炎ではこれより高値を示すことが多いクリプトコッカス髄膜炎では頭蓋内圧が著明に亢進する。 髄液の外観によって感染の性質を確認することができる。白っぽく濁っている場合、蛋白や白血球および赤血球、細菌数の高値を表し、細菌性髄膜炎を示唆する。 このCSFサンプルを用いて白血球と赤血球の存在および種類、蛋白量およびグルコース 濃度を調べる。細菌性髄膜炎の場合グラム染色を実施する場合もあるが、細菌が確認されないからといって細菌性髄膜炎を除外できるわけではない。なぜなら細菌が確認されるのは細菌性髄膜炎の60%にとどまるためであり、サンプル採取前に抗生物質を投与している場合、この数値はさらに20%下がる。グラム染色はリステリア症をはじめとする特定の感染に対しても信頼性が低い。サンプルの微生物培養はこれより感度が高い(症例の70~85%で微生物を確認できる)が、結果が出るまで48時間かかる。優勢な白血球の種類によって細菌性(通常、好中球優勢)であるかウイルス性(通常、リンパ球優勢)であるかがわかる(表を参照)。ただし感染の初期段階では、これは必ずしも信頼に足る指標とは言えない。さほど一般的ではないが、好酸球が優勢だと寄生虫や真菌等が原因であることを示している。 脳脊髄液中グルコース濃度は正常値だと血中濃度の40%を超えるが、細菌性髄膜炎では典型的に低くなる。そこで脳脊髄液中グルコース濃度を血中グルコース濃度で割って表す(脳脊髄液中グルコース濃度:血清中グルコース濃度)。この比が≤0.4であると細菌性髄膜炎であることを示す。新生児では通常脳脊髄液中グルコース濃度が成人より高いため、この比が0.6 (60%)より小さい場合を異常とする。 脳脊髄液中乳酸が高値を占めす場合、白血球数の高値と同じく細菌性髄膜炎の可能性が高い。乳酸値が35 mg/dlより低く、検査前に抗生物質を投与していない場合、細菌性髄膜炎を除外できる。 さまざまな種類の髄膜炎を鑑別するため、これ以外にもさまざまな試験法が使用される。肺炎レンサ球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ菌、Escherichia coli、B群レンサ球菌を原因とする髄膜炎ではラテックス凝集試験陽性となる。その結果によって治療法が変わるようなものではないためルーチン使用は推奨されていないが、他の試験では診断ができない場合に使用することができる。 同じように、グラム陰性細菌による髄膜炎ではリムルス試験が陽性となるが、これも他の試験法が有用でないような場合に限り実施される類のものである。 ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)は、脳脊髄液中に細菌またはウイルスのDNAが存在するかどうかを確認するため、細菌のDNA断片を増幅させる手法である。病原体のDNAのほんの断片さえあれば確認できるため、感度、特異度ともに高く、細菌性髄膜炎の細菌を特定し、ウイルス性髄膜炎のさまざまな原因(エンテロウイルス、単純ヘルペスウイルス2型、ワクチン未接種の場合の流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)等)を識別する助けとなる。 ウイルス性髄膜炎には血清学(ウイルスに対する抗体の特定)も有用である。結核性髄膜炎が疑われる場合、サンプルは感度の低いチール・ネールゼン法および非常に時間がかかる結核菌培養に回されることになるが、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR)が広く用いられるようになってきている。 クリプトコッカス髄膜炎の診断にはCSFの墨汁染色が低コストで使用できるが、血液またはCSFのクリプトコッカス抗体検査の方が感度が高く、特にAIDS患者には顕著である。 診断、治療ともに困難となるのが、抗生物質投与後(推定副鼻腔炎の加療によるものなど)に髄膜炎の症状がみられる髄膜炎の「不完全治癒」状態である。この場合、CSF所見はウイルス性髄膜炎に似るが、ウイルス性であると断定できるエビデンス(PCRによるエンテロウイルス陽性等)が得られるまでは抗生物質による治療を続ける必要がある。
※この「腰椎穿刺」の解説は、「髄膜炎」の解説の一部です。
「腰椎穿刺」を含む「髄膜炎」の記事については、「髄膜炎」の概要を参照ください。
腰椎穿刺
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 09:52 UTC 版)
腰椎穿刺により血液混入(急性)やキサントクロミー(英語版)(陳旧性)を肉眼で認める。ただし、徐脈や眼底乳頭浮腫などの脳圧亢進症状がある場合には腰椎穿刺は脳ヘルニアを助長する恐れがあるため、禁忌である。 腰椎穿刺にて髄液にキサントクロミーがみられず、赤血球数2000×106/L未満であれば、動脈瘤性クモ膜下出血を除外できると報告された。(感度100%、特異度91.2%)
※この「腰椎穿刺」の解説は、「クモ膜下出血」の解説の一部です。
「腰椎穿刺」を含む「クモ膜下出血」の記事については、「クモ膜下出血」の概要を参照ください。
「腰椎穿刺」の例文・使い方・用例・文例
腰椎穿刺と同じ種類の言葉
- 腰椎穿刺のページへのリンク