レッドストーンロケットからの改良点とは? わかりやすく解説

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レッドストーンロケットからの改良点

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/26 23:03 UTC 版)

マーキュリー・レッドストーン・ロケット」の記事における「レッドストーンロケットからの改良点」の解説

NASA弾道飛行のために陸軍レッドストーン液体燃料弾道ミサイル選んだのは、当時アメリカ保有していたミサイルの中では最も古く1953年運用され以来多く試験飛行成功収めてきたからであった標準的な軍事用レッドストーンマーキュリー宇宙船計画で必要とされる弾道軌道に運ぶには推力不足していたが、レッドストーン改良し長いタンクを持つジュピターC第一段は、望まれる軌道到達するのに十分な燃料搭載することができた。そのためこのジュピターC第一段が、マーキュリー・レッドストーン設計出発点として使用された。だが陸軍ジュピターCエンジン使用終了していたため、設計者らは部品の不足や設計の変更などの混乱が起こるのを防ぐべく最新軍事用レッドストーン使用されロケットダイン社のA-7エンジン選んだ有人飛行使用するためA-7安全性と信頼性高めるよう任命されたのは、陸軍弾道ミサイル局 (Army Ballistic Missile Agency, ABMA) 技術者のハンス・ポール(Hans Paul) とウィリアム・デヴィッドソン (William Davidson) だった。 1959年は、ABMA職員のほとんどはサターンロケット開発計画追われていたが、スケジュール十分な余裕を見つけることのできた技術者らはジュピターC人間搭乗用の改良作業携わった。その出発点としてまずやらなければならなかったのは、マーキュリー・レッドストーン上段使用しない単段式であったため、切り離し機能除去することだった。またジュピターCが持つ多くのより発達した機構も、信頼性理由マーキュリー計画には必要ないために取り除かれた。 標準的なレッドストーンは、 エタノール (エチルアルコール) 75パーセント水溶液25パーセント混合液を燃料使用していた。これはV2ロケット燃料本質的に同じものだったが、ジュピターC第一段非対称ジメチルヒドラジン (unsymmetrical dimethylhydrazine, UDMH) 60パーセントジエチレントリアミン (diethylenetriamine, DETA) 40からなるハイダイン (hydyne) を使用していた。これはエチルアルコールより強力な燃料だったが、毒性もまた強いものであり、緊急時には飛行士危険にさらす可能性があった。さらにハイダインは、新型A-7エンジンでは使用されたことがなかった。このため設計者らはハイダインを退け標準的なエチルアルコール採用した燃料非力さを補うため、タンク長くして容量増やすことが求められた。 アルコール採用したことにより、新たな問題発生したレッドストーンロケットノズルのすぐ下に黒鉛製の推力偏向板があるが、燃焼時間著しく長くなったためにそれが損傷してしまう可能性出てきたのである。そのためNASA偏向板の品質高め要求出した。 またマーキュリー・レッドストーンはレッドストーンミサイルよりも長い燃料タンク持っていたため、内部圧力加えるための窒素タンクと、燃焼時間長くなったことに備えエンジン潤滑するための過酸化水素タンク追加された。 機体宇宙飛行士搭乗可能なものに変更する際、最も重要だったのは自動飛行中検知システム追加することだった。破局的事故至りそうな緊急事態陥った際は、中止システム宇宙船取りつけられている緊急脱出ロケット作動させ、直ち本体から切り離すことになっていた。このシステム飛行士地上双方作動させることができたが、飛行中大惨事に至るような潜在性秘める事態陥ったときは手動発動されることもあり得たマーキュリー・レッドストーン自動飛行中検知システムは、飛行中ロケット状況監視することによってこの問題解決した飛行制御エンジン推力電力の喪失など、飛行士を脅かす可能性のある何らかの異常を感知した場合エンジン停止し宇宙船脱出システム作動させ、自動的に飛行中止することになっていた。また異常を発生させたロケット発射台上や付近に落下してくるのを避けるため、発射から少なくとも30秒以内エンジン停止することはできず、この間飛行中止させることができたのは射場安全管理官だけだった。さらに1953年以来60以上にわたって行われたレッドストーンジュピターC飛行データ分析され、この系統ロケットで最も可能性のありそうな事故パターン検討された。簡素化要求のためシステムはできる限りシンプルにされなければならず、ロケット操作必須数値だけがモニターされた。自動中止システムは、ロケット下記いずれか状況陥った際に発動された。これらはすべて機体何らかの危機的な故障あり得ることを示すものであったピッチヨーまたはロール角度飛行手順プログラムか大きく逸脱した場合 ピッチあるいはヨー角度過度に急速に変化した場合 エンジン燃焼室内の圧力危機的水準よりも低下した場合 飛行制御システム電力失われた場合、あるいは 全電力 (発射中止検知システム自体電力を含む) が喪失した場合。これは危機的な事故陥った可能性があることを示すものであった 1954年5月レッドストーン第三回試験飛行発生した上昇中の推力喪失のような特定のケースでは即座に破滅的な状況陥る可能性があったため、直ち飛行中止できる能力を持つことが重要だった一方で適切な飛行コースからの逸脱上昇中のエンジン燃焼室内の圧力低下など、その他のケースでは必ずしも飛行士安全にすぐにリスク発生するわけではなくパイロット船内にあるレバー引いて緊急脱出ロケット点火し手動脱出試みることができたし、あるいは地上管制官指令信号送って作動させることもできた。 射場安全管理システムわずかに変更され脱出ロケット宇宙船ロケット本体から引き離すのに十分な時間与えるために、エンジン停止本体破壊の間に3秒のインターバル設定された。 ジュピターC第一段マーキュリー・レッドストーン視覚的に最も大きく異なるのは、宇宙船のすぐ下と燃料タンク上部の間にある区画である。この部分は「機尾区画 (Aft Section)」と呼ばれ、名称は軍事用レッドストーン由来する (実際ロケット後端は『尾部区画 (Tail Unit)』と呼ばれていた。左図参照)。機尾区画には、誘導システムマーキュリー宇宙船との接続装置などを含む、ロケットのほとんどの電子機器装置収められていた。軍事用レッドストーンジュピターC第一段では、燃焼終えるとエンジン燃料タンクを含むロケット下部は機尾区画から分離し投棄され、機尾区画慣性弾道飛行をしている間、誘導システムとともに上段部分誘導した一方マーキュリー・レッドストーンでは機尾区画ロケット下部最後まで接続され燃焼停止した宇宙船は機尾区画から分離され、独自の誘導システム飛行した信頼性高めるため、他にも各種の変更なされた慣性航法装置レッドストーンではST-80という装置標準装備していたが、マーキュリー・レッドストーンではより簡素なLEV-3自動操縦装置置きかえられた。LEV-3は設計ドイツV2ロケット遡り、ST-80ほど高性能で正確ではなかったが、マーキュリー飛行では十分正確であり、またその簡素さのためより信頼性高かった。「機尾区画」には、誘導システム飛行中止および自爆システム遠隔装置電源などの最も重要な装置電子機器収めるための、特別な機器区画設けられた (左図Instrumental Compartment部分)。装置故障発生する危険性を減らすため、この区画発射前冷却され、また飛行中与圧保たれていた。 信頼性上のため、プレバルブ (prevalve) と呼ばれる燃料バルブ取り除かれた。もしこれが発射時に閉じてしまったら、緊急脱出装置作動する可能性あったからである。過去3回無人飛行で、マーキュリー・レッドストーン一時的に秒間8度割合ロール運動したことが判明した。レッドストーンミサイルでは4度だった。この値は脱出装置作動させる1秒間12度よりは低いものだったが、後の2回の有人飛行では不用意に脱出ロケット点火してしまうリスク避けるため、ロール変化センサー取り除かれた (10度変化装置作動させるロール姿勢センサー取りつけられたままだった)。 マーキュリー・レッドストーン1A号2号では、ともに飛行中加速度超過発生させていた。前者加速度計異常によるものであり、後者液体酸素調節器がエンジン過剰に酸化剤供給し予定より1.2早く燃焼停止させたことによるものであった2号ではASIS呼ばれるシステム作動して脱出ロケット宇宙船ロケット本体から引き離し搭載していたチンパンジー大きな加速度与えた第三回飛行であるマーキュリー・レッドストーン・ロケット開発飛行は、ロケット人間搭載できるだけの能力持っているかどうか判定する前に、それらの問題点修正するための技術試験充てられた。 与圧され機器区画宇宙船の間の空間 (図のBallast Section部分) は、元々はロケット回収パラシュート収めるためのものだったが、パラシュート廃止された後もこの部分空間のまま残された。3回無人飛行では、接合部分 (図のAdapter部分) に大きな振動構造的なゆがみが発生した。そのためアラン・シェパード飛行では、この部分に鉛を注入され340ポンド (約154キログラム) のプラスチックが、追加支柱補強材とともにバラスト (重り) として置かれた。だがシェパード飛行中にまだ明らかに振動感じられる報告したため、ガス・グリソム打ち上げ時にはバラストの量が増やされた。この問題軌道飛行使用されアトラスロケットでも発生しマーキュリー・アトラス1号ではロケット宇宙船接続器の接合部分が過度にゆがんだため構造破壊起こし機体空中分解するという重大な結果招いたマーキュリー計画レッドストーン使用する当たっては、トータル800箇所ほどの修正が行われた。レッドストーン人間搭乗用に変更する過程広範囲わたったため、NASA既成のものは使用せず事実上全く新しいものを使用することを直ち決めた。そのためそれ以前レッドストーンジュピターC発射使用された、すべての機器飛行データ無効とした。このことはフォン・ブラウン率いABMAチームNASAの間で論争巻き起こした前者脱出システム可能な限りシンプルなものにして、飛行士確実に故障したロケットから脱出できるよう保証することを志向し一方で後者ロケット信頼性最大限高め脱出しなければならないような機会発生するのを最小限化することを望んでいた。

※この「レッドストーンロケットからの改良点」の解説は、「マーキュリー・レッドストーン・ロケット」の解説の一部です。
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