隅田川
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/20 15:22 UTC 版)
橋梁
江戸期において防備上の視点から架橋が制限されたこともあり、明治期ごろまでは多くの渡しによって両岸が結ばれていたが、交通量の増加に伴い次第に木橋などで架橋が進んだ。大正期の関東大震災でその多くが被害を受けたために、国の予算による震災復興事業として鋼橋に架け替えられた。政府は東京復興のシンボルとして隅田川の架橋を全体的な構想の下に実行し、復興事業の技術面での総帥であった帝都復興院土木局長の太田圓三の部下で同院橋梁課長だった田中豊により、統一的なデザインモチーフのもと、それぞれ異なる橋梁形式が採用された[7]。さらに、自動車時代の幕開けとともにより多くの橋の建設が行われた。
それぞれが特徴のあるデザインとなっている(#画像参照)。なかでも、下流側に位置する永代橋と清洲橋が震災復興時に架け替えられたときは、永代橋を上に張り出すアーチ橋とし、清洲橋を吊橋形式にして際だった対比性を持たせ、構造技術面と環境デザイン面を両立させることに成功を収めている[8]。近年では災害対策連絡橋を主とした橋や遊歩道的な歩行者専用橋なども架けられ、よりバリエーションが豊かになっている。徒歩で渡れるのは26橋で、上流から下流まで歩くと6時間ほどを要するとされる[9]。
橋梁一覧
歩行者通行 ○ - 可能 × - 一般不可 ◆ - 歩行者専用
橋梁名 | 並列路線 | 自治体 (区 - 区) |
備考 | |
---|---|---|---|---|
荒川より分岐 | ||||
新河岸川合流 | ||||
○ | 新神谷橋 | 東京都道318号環状七号線(環七通り) | 北 - 足立 | |
○ | 新田橋 | 北 - 足立 | ||
○ | 新豊橋 | 北 - 足立 | ||
○ | 豊島橋 | 東京都道501号王子金町市川線 | 北 - 足立 | |
× | 首都高速中央環状線橋梁 | 北 - 足立 | 首都高速中央環状線用の橋梁 | |
石神井川合流 | ||||
○ | 小台橋 | 東京都道458号白山小台線(小台通り) | 荒川 - 足立 | |
○ | 尾久橋 | 東京都道58号台東川口線(尾久橋通り) | 荒川 - 足立 | |
× | 日暮里・舎人ライナー隅田川橋梁 | 荒川 - 足立 | 東京都交通局■日暮里・舎人ライナー | |
○ | 尾竹橋 | 東京都道313号上野尾竹橋線(尾竹橋通り) | 荒川 - 足立 | |
× | 荒川 - 足立 | 東京都水道局の上水管。老朽化と耐震性問題により2013年5月に撤去。 | ||
× | 京成本線隅田川橋梁 | 荒川 - 足立 | 京成電鉄 || 本線用の橋梁 | |
× | 荒川 - 足立 | 東京電力パワーグリッドの送電用。耐震性問題により2021年に撤去。 | ||
× | 千住水管橋 | 荒川 - 足立 | 東京都水道局の工業用水管 | |
○ | 千住大橋 | 国道4号(日光街道) | 荒川 - 足立 | |
× | 常磐線隅田川橋梁 | 荒川 - 足立 | JR || 常磐線用の橋梁 | |
× | つくばエクスプレス隅田川橋梁 | 荒川 - 足立 | TXつくばエクスプレス用の橋梁 | |
× | 日比谷線隅田川橋梁 | 荒川 - 足立 | 東京地下鉄○日比谷線用の橋梁[注釈 21] | |
○ | 千住汐入大橋 | 東京都道314号言問大谷田線(川の手通り) | 荒川 - 足立 | |
旧綾瀬川合流 | ||||
○ | 水神大橋 | 東京都道461号吾妻橋伊興町線支線 | 荒川 - 墨田 | |
○ | 白鬚橋 | 東京都道306号王子千住夢の島線(明治通り) | 台東 - 墨田 | |
◆ | 桜橋 | 台東 - 墨田 | ||
○ | 言問橋 | 国道6号・東京都道319号環状三号線(言問通り) | 台東 - 墨田 | |
○ | 東武花川戸鉄道橋 すみだリバーウォーク |
台東 - 墨田 | 東武鉄道■伊勢崎線(東武スカイツリーライン)用の橋梁 歩行者専用橋「すみだリバーウォーク」を併設 | |
北十間川合流 | ||||
○ | 吾妻橋 | 東京都道463号上野月島線支線(雷門通り) | 台東 - 墨田 | |
○ | 駒形橋 | 東京都道463号上野月島線(浅草通り) | 台東 - 墨田 | |
○ | 厩橋 | 東京都道453号本郷亀戸線(春日通り) | 台東 - 墨田 | |
○ | 蔵前橋 | 東京都道315号御徒町小岩線(蔵前橋通り) | 台東 - 墨田 | |
× | 蔵前専用橋 | 台東 - 墨田 | NTT電話通信線・東京都水道局の水道管 | |
× | 総武線隅田川橋梁 | 台東 - 墨田 | JR■総武線用の橋梁 | |
神田川合流 | ||||
○ | 両国橋 | 国道14号(京葉道路) | 中央 - 墨田 | |
竪川合流 | ||||
× | 両国大橋 | 両国ジャンクション | 中央 - 墨田 | 首都高速6号向島線・7号小松川線用の橋梁 |
○ | 新大橋 | 東京都道50号東京市川線(新大橋通り) | 中央 - 江東 | |
小名木川合流 | ||||
○ | 清洲橋 | 東京都道474号浜町北砂町線(清洲橋通り) | 中央 - 江東 | |
仙台堀川合流 | ||||
○ | 隅田川大橋 | 水天宮通り・首都高速9号深川線 | 中央 - 江東 | |
日本橋川合流 | ||||
○ | 永代橋 | 東京都道10号東京浦安線(永代通り) | 中央 - 江東 | |
大横川合流 | ||||
○ | 相生橋 | 東京都道463号上野月島線(清澄通り) | 中央 - 江東 | |
○ | 中央大橋 | 東京都道463号上野月島線支線(八重洲通り) | 中央 - 中央 | |
亀島川合流 | ||||
佃川支川に分流 | ||||
○ | 佃大橋 | 東京都道473号新富晴海線(佃大橋通り) | 中央 - 中央 | |
月島川に分流 | ||||
○ | 勝鬨橋 | 東京都道304号日比谷豊洲埠頭東雲町線(晴海通り) | 中央 - 中央 | |
新月島川に分流 | ||||
○ | 築地大橋 | 東京都道50号東京市川線支線(環二通り) | 中央 - 中央 | |
東京湾に流水 |
注釈
- ^ 水神大橋より上流300メートルの地点。
- ^ 石浜の地名が残る。
- ^ 待乳山、浅草弁天山、鳥越など
- ^ さらにその西側の上野台地との間は江戸時代に埋め立てられるまでは沼沢地だった(千束池、姫ヶ池)。
- ^ 隅田川東岸が下総国葛飾郡(隅田、寺島、小村井、亀戸島など)だった。
- ^ 西岸は江戸時代に橋場と呼ばれた。
- ^ 桜橋より上流500メートルの地点。
- ^ 牛嶋、請地(浮地)、柳島などの中洲があった(どれも武蔵国豊島郡に属した)。牛嶋は浅草・柳橋の対岸に2キロメートル以上細長く延び、現在の墨田区横網から古墳時代の壺が出土している。
- ^ 縄文時代までの旧利根川が現在の東京湾へ注ぐ主河道であり、澪筋が海底に残る。
- ^ 請地村飛木稲荷はこの河道の中洲に当たる。
- ^ この下総国と武蔵国の国境を流れる旧利根川の河道は、現在の古利根川の埼玉県加須市琴寄、川口より下流、埼玉県春日部市の古隅田川、越谷市の元荒川、三郷市・八潮市の中川、東京都足立区・葛飾区境界の古隅田川、足立区・墨田区境界の旧綾瀬川であり、部分的に「隅田川」の名が残っている。その後、荒川瀬替え後の1683年(貞享3年)もしくは一説によれば寛永年間(1622年-1643年)に下総国と武蔵国の国境が変更された。
- ^ 埼玉県の古隅田川も併せて考えると、「隅田川」とは、古くは旧利根川が春日部付近から南流し旧入間川と合流し東京湾へ注ぐまでを指していたらしい。
- ^ 江戸時代の橋場の渡し。
- ^ なお鎌倉時代以降になると、奥州へ向かうには、『吾妻鏡』によれば、岩渕から川口へ旧入間川を渡り北上する鎌倉街道#中路および奥大道(後に日光御成道)の経路が使われている。
- ^ 伊勢物語(東下りの段)で主人公が赴いている。
- ^ 日本武尊の一行が渡河した伝説も当地に伝わっている。
- ^ 治承4年〈1180年〉10月2日に隅田に宿泊)。
- ^ 今でも古典落語などでは「大川」が出てくる。また、大川右岸、特に吾妻橋周辺から佃周辺までを
大川端 ()と称する。今でも佃に、大川端リバーシティ21にその名が残る。 - ^ 荒川に面せず、隅田川に面している荒川区が「荒川」の名を持つのは、こうした事情による。
- ^ 足立区と葛飾区の境界を流れ、現在は多くの区間が暗渠化されている
- ^ 隅田川を渡る鉄道路線では唯一の地下鉄路線である。
出典
- ^ a b “荒川水系隅田川流域河川整備計画”. 東京都. 2021年12月24日閲覧。
- ^ 谷口栄「低地の景観と開発」『水の中世 治水・環境・支配』(高志書院、2013年)
- ^ 『特別展 隅田川流域の古代・中世世界 水辺から見る江戸東京前史』の図録本(足立区立郷土博物館, すみだ郷土文化資料館, 宮本記念財団編、2007)では、現隅田川を宮戸川(別称ではなく正式名称として)、分流を(中世の)隅田川と位置づけ、中世においてはこの定義での隅田川(最下流は横十間川付近の河口)を国境としている(関連リンク 中世から江戸初期にかけての隅田川 - 消えた隅田川/ スカイツリー634m 一考 - 武蔵・下総の国境、隅田川)。
- ^ 下川耿史 家庭総合研究会 編『明治・大正家庭史年表:1868→1925』河出書房新社、2000年、414頁。ISBN 4-309-22361-3。
- ^ 『明治・大正家庭史年表:1868→1925』p.417
- ^ 東京都建設局・隅田川はどんな川?
- ^ 武部健一 2015, p. 171.
- ^ 武部健一 2015, pp. 171–172.
- ^ 隅田川の「歩ける橋」をぜんぶ渡る朝日新聞社withnews
- ^ 石飛徳樹「渋い外見の奥に在る弱さと温かさ」『2021 キネマ旬報 11月上旬特別号』通巻2692号第1878号、キネマ旬報社、2021年11月1日、31頁、ASIN B09HG6KDDX。
- ^ ウォーターフェア・隅田川レガッタ開催記念展墨田区 2022年6月18日閲覧
- ^ (社)東京都ボート協会 設立以来の歩み一般社団法人 東京ボート協会 2022年6月18日閲覧
- ^ 下川耿史『環境史年表 明治・大正編(1868-1926)』(河出書房新社刊、2003年11月30日) 317頁 全国書誌番号:20522067
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