格子振動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/09 01:43 UTC 版)
調和性と非調和性
3次元結晶のポテンシャルエネルギーを平衡位置からのずれ(変位)でテイラー展開すると、次のように書ける[6]。
ここではのいずれか、は結晶中の単位セルの位置、は単位セル中の原子の位置を表す。は調和ポテンシャル、は非調和ポテンシャルと呼ばれる。
振動が小さいならば、調和振動と見なすことができる。この調和近似のときは、以下のことが結論できる[7]。
- 2つの格子波は相互作用しない。1個の波動は減衰しないし、時間が経過しても形が変わらない。
- 熱膨張がない
- 等温弾性定数と断熱弾性定数は等しい。
- 弾性定数は圧力と温度に無関係である。
- (デバイ温度より)高い温度で、比熱は一定になる。
一方で振動が激しいときは、非調和振動の影響が大きくなり、モード間での相互作用が生じる。その結果、熱膨張や格子波の減衰などの現象が起こる。
- ^ a b 第2版,世界大百科事典内言及, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,デジタル大辞泉,精選版 日本国語大辞典,世界大百科事典. “格子振動とは”. コトバンク. 2021年7月1日閲覧。
- ^ 芳田 奎『固体物理-その発展と現代の焦点-』岩波書店、1976年。
- ^ M. Born, Th. von Kármán, Über Schwingungen in Raumgittern. Z. Physik 13, 297–309 (1912)
- ^ Friedrich W; Knipping P; von Laue M (1912). “Interferenz-Erscheinungen bei Röntgenstrahlen”. Sitzungsberichte der Mathematisch-Physikalischen Classe der Königlich-Bayerischen Akademie der Wissenschaften zu München 1912: 303.
- ^ a b c d W・Cochran 著、小林正一、福地充 訳『固体物性シリーズ3 格子振動』丸善、1975年。
- ^ Srivastava G. P (1990), The Physics of Phonons. Adam Hilger, IOP Publishing Ltd, Bristol.
- ^ チャールズ・キッテル 著、宇野良清ほか 訳『キッテル 固体物理学入門 第8版』丸善、2005年。ISBN 978-4621076569。
- ^ 田崎, 晴明『統計力学 I』培風館、2008年12月5日。ISBN 978-4-563-02437-6。
- ^ Mattuck, R.. A guide to Feynman Diagrams in the many-body problem
- ^ Greiner; Reinhardt. Field Quantisation
- ^ Donovan, B.; Angress, J.. Lattice Vibrations
- 1 格子振動とは
- 2 格子振動の概要
- 3 歴史
- 4 調和性と非調和性
- 5 基準振動
- 6 縦波モードと横波モード
格子振動と同じ種類の言葉
- 格子振動のページへのリンク