日本の外国人 社会保障

日本の外国人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/14 09:53 UTC 版)

社会保障

  • 国民健康保険 - 90日以上の在留期間が決定された中長期在留者(施行規則第1条)は加入義務が生じる。
  • 国民年金 - 日本国内に住所を有する者は、加入義務が生じる。

日本における外国人問題

日本における外国人問題としては、

  • 不法滞在外国人犯罪
  • 技能実習生や留学生など外国人労働者の人権蹂躙
  • 憲法上の人権享有主体性 - 例えば、外国人地方参政権
  • 文化の違いによるトラブル - 例えば、銭湯の入場拒否事件
  • 外国人学校の学費が高いために、子供を目当ての学校に通わせられず、不就学にしてしまう
  • 派遣切りなどで出稼ぎ者が勤務先から解雇され、再就職先も見つからない

などがある。

入管プロジェクトと不法滞在者

2003年(平成15年)末、法務省や警察関係者らからなる「犯罪対策閣僚会議」で、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」が策定され12月2日から施行された。不法滞在者を「入らせない」、「来させない」、「居させない」を3本柱とした「入管プロジェクト」と呼ばれるこの行動計画は、2008年(平成20年)末までに不法滞在者を半減させることを目標としたが2008年の不法残留者は16,966人であり半減より少し多かった[17][18]

出入国在留管理庁の把握している不法残留者は過去最高であった1993年(平成5年)5月1日の29万8646人[19]であった。2021年1月1日の不法残留者は82,868人であり1位ベトナム人18.9%2位韓国人15.0%3位中国人12.5%であった[20]

法務省入国管理局は2006年(平成18年)6月1日から同月30日までの1か月間、「不法就労外国人対策キャンペーン月間」を実施し、外国人や事業主、地方自治体、関係団体及び在日外国大使館等を対象に不法就労の防止について理解と協力を求めるための呼びかけ、在留審査の際に外国人にリーフレット等を配布したり、パトロールカーを活用などによる街頭等での広報活動、ポスター及びリーフレット配布による不法滞在者の自主的な出頭の促進活動を行った[21]。また、不法滞在者に関するオンライン情報受付を開始するなど出入国管理及び難民認定法第62条や第66条に規定される報償金に対する認知向上などを図っている[22]

2007年(平成19年)11月20日から特別永住者等を除く16歳以上の外国人は、空港での日本への入国 申請時に指紋及び顔写真を提供し、その後入国審査官の審査を受けることになる。個人識別情報の提供が義務付けられている外国人が、指紋又は顔写真の提供を拒否した場合は、日本への入国は許可されず退去を命じられる[23]。ただしパトリオット・エクスプレスなど出入国審査が出来ない方法で入国した場合は対象外となる。

密航

犯罪者が捕縛を免れる目的や[24]、不法滞在をした後正規手続きにより出国すると、そのことが記録に残り次回の日本への入国時の支障となったり、成りすまし入国が発覚したりするので、これを防ぐ目的での密航もある。2016年(平成28年)海上保安庁が摘発した不法出国者は3名であった[25]

不当差別と指摘するものが多い例

「Japanese only」(外国人お断り)の看板を出している居酒屋銭湯、人種やルーツを理由にして警察が職務質問を行うレイシャル・プロファイリングなどがある。

浜松宝石店入店拒否事件

1998年(平成10年)6月16日、静岡県浜松市内の宝石店でブラジル人女性がショーケース内の商品を眺めていたところ、不自然さを感じた経営者は、原告の出身がブラジルとわかると、退店を求めた。経営者は外国人立ち入り禁止である旨を告げたが、抗議をうけると、店の壁に掛けていた「出店荒らしにご用心!」と題するはり紙(浜松中央警察署作成のもの)を外して女性にみせた。その後、女性の夫や通訳、警察官、警備員らの話し合いの元に経営者は女性の求めに応じて謝罪文を書いたが、女性は、素直な謝罪ではなく、女性に早く店から出てもらいたいことから書かれたものであるとして、これを受け入れなかった。

こうしてこの事件は、店から追い出そうとした被告の一連の行為がブラジル人である原告に対する人種差別行為であるとして民法709条の不法行為に該当し、また、店のはり紙を突き出した行為は、名誉毀損あるいは侮辱したものであるとして、損害賠償を請求した。

1999年(平成11年)10月12日、静岡地裁浜松支部は経営者側に計150万円の支払を命じ、原告側の訴えが認められた判決となった。

小樽温泉入浴拒否問題

1999年(平成11年)9月に、元はアメリカ人で1996年(平成8年)に日本の永住資格を取得し、2000年(平成12年)に日本に帰化した、北海道情報大学講師の有道出人ドイツ人のオラーフ・カルトハウス、アメリカ人のケネス・リー・サザランドと共に、北海道小樽市手宮にある入浴施設「湯の花」を訪れた際、外国人であることを理由に入浴拒否される。「湯の花」は小樽港に入港するロシア人船員の入浴マナーが悪く、石鹸の泡を流さぬまま湯船に体を沈める、女性従業員に性的いたずらを働く、備品を盗むなどの問題が起きていたために、外国人の入浴を拒否するようになったのであるが、有道らが日本に帰化して日本人となった後に訪れても入浴を断られたため、これを人種差別だとして2001年(平成13年)2月に小樽市及び小樽市内の入浴施設に対して600万円の損害賠償と謝罪広告を求め提訴した。

2002年(平成14年)11月、札幌地方裁判所の判決は、外国人の入浴を拒否するのは人種差別に当たる不法行為として「湯の花」に原告3名へ各100万円の賠償支払いを命ずる一方、小樽市については責任を認めなかった。

同月、判決を不服として有道らが小樽市を相手に札幌高等裁判所へ控訴。「湯の花」も有道らを相手取り控訴。

2004年(平成16年)9月、高裁判決は小樽市に対する有道らの控訴、および有道らに対する「湯の花」の控訴を共に棄却。「湯の花」に対する有道らの勝訴が確定。有道らは最高裁判所へ上告。

2005年(平成17年)4月、最高裁は上告を棄却。小樽市に対する有道らの敗訴が確定。

退去者の長期収容

不法滞在となった外国人が入管・出入国在留管理庁の施設に長期収容され内外から批判が出ている。特に収容期限はなく司法判断ではなく入管の判断の判断であり基準が曖昧な点が問題となっている[26]。2021年には収容者の衰弱死が起こり2010年以降14人が死亡している[27]

難民

日本中東バルカン半島アフリカなどの戦争多発地域から離れていることもあり、長らく難民と接する機会が少なかった。日本で難民認定を求める外国人は、2005年(平成17年)には僅か384人であった。しかし、その後、世界の難民の間で、日本が渡航先の1つとして選ばれることが多くなり、2013年(平成25年)には3260人と2005年(平成17年)の10倍近くとなり、2014年(平成26年)には申請者が5000人を超えるなど急増している[28]

日本では、難民だと認定する基準が厳しく、2014年(平成26年)は5000人の申請者のうち、難民として認定されたのは11人であった[28][29]

日本では難民認定の申請は何度でも可能で、申請中は本国に強制送還されず、在留資格を持てば就労することも可能であることから、出稼ぎ目的で来日した「偽装難民」も存在する[28]。近年、日本で、難民認定の申請が急増しているのも、この「偽装難民」が原因の1つとも指摘されている[30]

しかし、日本の難民認定制度が世界的に見ても非常に厳しいのは事実であり、日本国内でも、もっと難民に門戸を開くべきとの声がある[28][30]。難民認定を求め、裁判を起こす事例もある[31]

難民認定に関して基準が不透明であると批判があり2021年には基準の策定作業を進めている[32]

評価

国連世界幸福度報告は、2018年から移民の幸福度も評価するようになったが、この2018年の報告書によれば、日本移民の幸福度は、世界25位と評価された(他の主要国ではカナダ7位、アメリカ15位、イギリス20位、ドイツ28位、フランス29位、イタリア39位)[33][34]

外国人の人身売買問題

アメリカ国務省は2021年[35]現在は日本を4段階中2番目(TIER 2)「人身取引撲滅のための最低基準を十分には満たしていないが、満たすべく相当の取り組みを実施している」に位置づけている[36]。2019年は最もよい評価であったが技能実習制度の問題により2020年から引き続きこの評価となっている[37]

また飲食店水商売風俗店を中心に外国人経営者自身が外国人を連れてきて不法就労を助長し、逮捕される例も発生している[38]


注釈

  1. ^ 2012年(平成24年)に台湾と分離。 2010年(平成22年)までは台湾を含む。
  2. ^ 2015年(平成27年)に朝鮮と分離。2010年(平成22年)までは韓国・朝鮮で朝鮮を含む。過去の複雑な経緯があり韓国政府の旅券及び保護を受けていなくても日本の外国人登録上は「韓国」となっている人がいるので「大韓民国」と書くのは妥当でない。実際の登録証明書上も「韓国」または「朝鮮」となっていて「大韓民国」「朝鮮民主主義人民共和国」「北朝鮮」などの表記は使用されていない。
  3. ^ 日米地位協定第9条第2項により、パトリオット・エクスプレス軍港を通じて日本に出入境する在日米軍軍人軍属やその家族は出入国管理・外国人登録の対象外であるため、その数は含まれない。また米軍関係者の居住数は公開していない
  4. ^ a b 2012年(平成24年)に中国から分離。また、「台湾」のうち中長期在留者及び特別永住者については,既に国籍・地域欄に「台湾」の記載のある在留カード又は特別永住者証明書の交付を受けた人の数である。
  5. ^ a b 2015年(平成27年)に韓国から分離。
  6. ^ a b ロシアの1980年(昭和55年)、1990年(平成2年)は ソビエト連邦の数字。旧ソ連構成国15カ国の合計は、2015年(平成27年)で13,908人。
  7. ^ a b ドイツの1990年(平成2年)、1980年(昭和55年)は旧東独地域を含む。
  8. ^ a b 2,000人以上のトルコ国籍のクルド人を含む。
  9. ^ 2012年(平成24年)に台湾と分離。2010年(平成22年)までは台湾を含む。
  10. ^ 2015年(平成27年)に朝鮮と分離。2010年(平成22年)までは朝鮮を含む。
  11. ^ 日米地位協定第9条第2項により、パトリオット・エクスプレス軍港を通じて日本に出入境する在日米軍軍人軍属やその家族は出入国管理・外国人登録の対象外であるため、その数は含まれない。外務省の資料「在日米軍の施設・区域内外居住(人数・基準)」によると、2008年(平成20年)3月31日時点で、施設内外に居住する在日米軍軍人・軍属・家族の総数は94217人。

出典

  1. ^ 用語の解説”. 法務省. 2021年4月4日閲覧。
  2. ^ 来日外国人犯罪の検挙状況”. 警察庁. 2021年4月4日閲覧。
  3. ^ a b 令和4年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について』(プレスリリース)出入国在留管理庁、2023年3月27日https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00034.html2023年3月27日閲覧 
  4. ^ a b 令和4年末現在における在留外国人数について』(プレスリリース)出入国在留管理庁、2023年3月27日https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00033.html2023年3月27日閲覧 
  5. ^ 人口推計(平成29年10月1日現在)‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口‐”. 総務省統計局. 2018年11月24日閲覧。
  6. ^ 国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 在留外国人”. 独立行政法人統計センター. 2021年7月18日閲覧。
  7. ^ 森山博之 (2018年8月22日). “【高論卓説】外国人労働者の受け入れ拡大の現状、魅力ある制度へ「共生の視点」が必要”. サンケイビズ. https://web.archive.org/web/20180822114306/https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180822/mca1808220500006-n1.htm 2018年9月3日閲覧。 
  8. ^ “「移民流入」日本4位に 15年39万人、5年で12万人増”. 西日本新聞. (2018年5月30日). https://www.nishinippon.co.jp/feature/new_immigration_age/article/420486/ 2018年9月3日閲覧。 
  9. ^ 19年末の在留外国人数、最多の293万人 昨年末7.4%増 ベトナム伸びる”. 日経新聞. 2021年4月4日閲覧。
  10. ^ 2020年の在留外国人、8年ぶり減少 288万人”. 日経新聞. 2021年4月4日閲覧。
  11. ^ 人口推計”. 統計局. 2023年3月27日閲覧。
  12. ^ 人口推計”. 総務省. 2024年7月14日閲覧。
  13. ^ 令和5年末現在における在留外国人数について | 出入国在留管理庁”. www.moj.go.jp. 2024年7月13日閲覧。
  14. ^ 在留カードまたは特別永住者証明書の「国籍・地域」欄
  15. ^ 第1表 国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 在留外国人(令和2年(2020年)12月末日現在)” (XLS). e-Stat政府統計の総合窓口. 出入国在留管理庁 (2021年9月21日). 2022年4月18日閲覧。
  16. ^ 文部科学省 外国人の子どもの公立義務教育諸学校への受入について
  17. ^ 第1部 出入国管理をめぐる近年の状況 第2章 外国人の退去強制手続業務の状況 第2節 退去強制手続を執った入管法違反事件の概要 3 違反審判の概況 (4)在留特別許可, 平成21年版「出入国管理」, 法務省入国管理局, 2009年(平成21年)10月, p. 40.
  18. ^ 2007入管白書 急増する中国籍, 統一日報, 2007年10月3日.
  19. ^ 本邦における不法残留者数について - 平成23(2011)年1月1日現在, 法務省入国管理局, 平成23(2011)年4月5日.
  20. ^ 国籍・地域別 男女別 不法残留者数の推移 ”. 出入国在留管理庁. 2021年4月4日閲覧。
  21. ^ 「不法就労外国人対策キャンペーン月間」の実施について, 法務省入国管理局, 平成18(2006)年6月.
  22. ^ 「情報受付」, 法務省入国管理局.
  23. ^ 新しい入国審査手続(個人識別情報の提供義務化)の概要について, 法務省入国管理局, 平成19(2007)年7月.
  24. ^ JR西日暮里スプレー噴射事件 密入国ルート, 統一日報, 2006年4月12日.
  25. ^ 密航事犯について”. 2018年5月20日閲覧。
  26. ^ 「長期収容は人権侵害」入管法改正案に無言の抗議 大阪でデモ”. 毎日新聞. 2021年5月6日閲覧。
  27. ^ SOS聞き入れられず…名古屋入管で亡くなった33歳スリランカ人女性 「助けてあげたかった」支援者の無念”. 東京新聞. 2021年5月6日閲覧。
  28. ^ a b c d 太田泰彦 (2015年3月15日). “「難民で稼ぐ国」と「難民が稼ぐ国」…日本は「難民を見ない国」”. 日本経済新聞. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO84345190T10C15A3000000/ 2015年3月18日閲覧。 
  29. ^ “去年の難民申請5000人 認定わずか11人”. NHK. (2015年3月12日). http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150312/k10010012431000.html 2015年3月18日閲覧。 
  30. ^ a b “難民に冷たい国でいいのか”. 日本経済新聞. (2015年3月16日). https://www.nikkei.com/article/DGXKZO84420410W5A310C1PE8000/ 2015年3月18日閲覧。 
  31. ^ “シリア人男性4人 難民認定求め提訴”. NHK. (2015年3月17日). http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150317/k10010018461000.html 2015年3月18日閲覧。 
  32. ^ 難民の認定基準に「ジェンダー」 初の指針で規定へ”. 朝日新聞. 2021年5月6日閲覧。
  33. ^ “幸福度1位はフィンランド=日本は54位に後退-国連報告書”. 時事通信. (2018年3月15日). https://web.archive.org/web/20180315065253/https://www.jiji.com/jc/article?k=2018031500538&g=pol 2018年8月26日閲覧。 
  34. ^ World Happiness Report 2018” (PDF) (英語). 持続可能開発ソリューションネットワーク(Sustainable Development Solutions Network) (2018年3月14日). 2018年8月26日閲覧。
  35. ^ 2021年人身取引報告書(日本に関する部分)”. 在日アメリカ大使館. 2022年3月25日閲覧。
  36. ^ 2020年人身取引報告書(日本に関する部分)”. 在日アメリカ大使館. 2021年4月4日閲覧。
  37. ^ 人身売買報告で日本格下げ 米国、技能実習生など問題視”. 朝日新聞. 2021年4月4日閲覧。
  38. ^ 老舗韓国クラブのママを逮捕 入管難民法違反の疑い 警視庁2008年10月29日産経新聞


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