山部赤人 山部赤人の概要

山部赤人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/18 04:35 UTC 版)

 
山部 赤人
山部赤人(狩野尚信『三十六歌仙額』)
時代 奈良時代
生誕 不明
死没 天平8年(736年)?
官位 従六位下上総少目[1]
主君 元明天皇
氏族 山部宿禰
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出自

山部氏(山部連・山部宿禰)は、天神系氏族である久米氏の一族・久味国造の後裔で、職業部(cf. 部民制品部)の一つである山部伴造家とされる。また、天武天皇13年(684年八色の姓の制定によって山部から山部宿禰への改姓が行われている。[2]、赤人も宿禰姓を賜与されたことが『万葉集』の詞書から確認できる[3]

概要

山部赤人像/ 蜷川式胤所蔵品

その経歴は定かではないが、『続日本紀』などの正史に名前が見えないことから、下級官人であったと推測されている。神亀天平の両時代にのみ和歌作品が残され、行幸などに随行した際の天皇讃歌が多いことから、聖武天皇時代の宮廷歌人だったと思われる。作られた和歌から諸国を旅したとも推測される。同時代の歌人には山上憶良大伴旅人がいる。『万葉集』には長歌13首・短歌37首が、『拾遺和歌集』(3首)以下の勅撰和歌集に49首が入首している[4]。自然の美しさや清さを詠んだ叙景歌で知られ、その表現が周到な計算にもとづいているとの指摘もある。

柿本人麻呂とともに歌聖と呼ばれ称えられている。紀貫之も『古今和歌集』の仮名序において、「人麿(柿本人麻呂)は、赤人が上に立たむことかたく、赤人は人麿が下に立たむことかたくなむありける」[注釈 1]と高く評価している。この人麻呂との対は、『万葉集』の大伴家持の漢文に、「山柿の門」(山部の「山」と柿本の「柿」)とあるのを初見とする[注釈 2]

平安時代中期(『拾遺和歌集』頃とされる)には名声の高まりに合わせて、私家集の『赤人集』(三十六人集のひとつ)も編まれているが、これは万葉集の巻11の歌などを集めたもので、『人麻呂集』や『家持集』とおなじく万葉の赤人の作はほとんど含んでいない。『後撰和歌集』まではあまり採られることのなかった人麻呂ら万葉歌人の作品が、『拾遺和歌集』になって急増するので、関連が考えられている。

作品

山部赤人(百人一首より)
万葉集
  • 田子の浦ゆ うち出でてみれば 真白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける[注釈 3]
  • 若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る
  • み吉野の 象山(きさやま)の際(ま)の 木末(こぬれ)には ここだもさわく 鳥の声かも
  • 春の野の すみれ摘みにと こしわれそ 野を懐かしみ 一夜寝にける
  • 吾兄子(わがせこ)に 見せむと思ひし 梅の花 それとも見えず 雪のふれれば

ストラヴィンスキーが曲をつけていることで知られる。

新古今和歌集
  • 田子の浦にうち出でてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ

新古今和歌集に収録された当歌は、後に『百人一首』に採録されている。


注釈

  1. ^ この一文では人麻呂より赤人の方を評価しているように読めるが、全文を通じて最も評価されている歌人は人麻呂である。
  2. ^ ただし、この「山柿」については、「山」を山上憶良とする説もある。
  3. ^ 大井川マラソンコース(静岡県島田市)の、蓬莱橋付近に歌碑がある。ただし「真白にそ」の部分が「まし楼にそ」となっている。

出典

  1. ^ 鈴木真年『諸系譜』第二冊、山宿禰
  2. ^ 日本書紀』天武天皇13年条
  3. ^ 原田貞義「万葉集における「山部赤人集」」『岩手大学教育学部研究年報』第31巻、岩手大学教育学部、1971年9月、47-57頁、CRID 1390853649825924352doi:10.15113/00012136ISSN 0367-7370 
  4. ^ 『勅撰作者部類』
  5. ^ - 山部神社・赤人寺 | 滋賀県観光情報[公式観光サイト]2018年10月08日 閲覧


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