出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 12:46 UTC 版)
円の方程式
半径 r ≔ 1 , 中心 (a , b ) ≔ (1.2, −0.5) の円
解析幾何学 において、(a , b ) を中心とする半径 r の円は
(
x
−
a
)
2
+
(
y
−
b
)
2
=
r
2
{\displaystyle (x-a)^{2}+(y-b)^{2}=r^{2}}
を満たす点
(x , y ) 全体の
軌跡 である。この方程式を、
円の方程式 と言う。これは、中心
(a , b ) と円上の任意の点
(x , y ) との二点間の距離が
r であるということを述べたものに他ならず、半径を斜辺とする直角三角形に
ピタゴラスの定理 を適用しすることで導出できる(直角を挟む二辺は、各座標の
絶対差 |x − a |, |y − b | を長さとする)。
中心を原点に取れば、方程式は
x
2
+
y
2
=
r
2
{\textstyle x^{2}+y^{2}=r^{2}}
と簡単になる。
α, β, γ, δ は実数で α ≠ 0 なるものとし、
a
:=
−
β
α
,
b
:=
−
γ
α
,
ρ
:=
β
2
+
γ
2
−
α
δ
α
2
{\displaystyle a:={\frac {-\beta }{\alpha }},\quad b:={\frac {-\gamma }{\alpha }},\quad \rho :={\frac {\beta ^{2}+\gamma ^{2}-\alpha \delta }{\alpha ^{2}}}}
と書けば、上記の方程式は
f
(
x
,
y
)
:=
α
(
x
2
+
y
2
)
+
2
(
β
x
+
γ
y
)
+
δ
=
0
{\displaystyle f(x,y):=\alpha (x^{2}+y^{2})+2(\beta x+\gamma y)+\delta =0}
の形になる。この形(
x 2 , y 2 の係数が等しく、
xy の項を持たない)の方程式が与えられたとき、以下の何れか一つのみが成り立つ:
ρ < 0 のときは、この方程式に解となる実点は存在しない。この場合を虚円 [4] (imaginary circle ) の方程式と呼ぶ。
ρ = 0 のとき、方程式 f (x , y ) = 0 は中心となる一点 O ≔ (a , b ) のみを解とし、点円 [5] (point circle ) の方程式と言う。
ρ > 0 のときには、f (x , y ) = 0 は O を中心とする半径 r ≔ √ ρ の円(あるいは実円 (real circle ))の方程式になる。
α = 0 のとき f (x , y ) = 0 は直線の方程式であり、a, b, ρ は(射影平面上で、あるいは見かけ上)無限大になる。実は、直線を「無限遠点 を中心とする半径無限大の円」と考えることができる(一般化された円(英語版 ) の項を参照)。
別の表示法
ベクトル表示
中心の位置ベクトルを c とし、円上の任意の点の位置ベクトルを x とすると、これら二点間の距離は、ベクトルのユークリッドノルム ‖ • ‖ ≔ ‖ • ‖2 : (x , y ) ↦ √ x 2 + y 2 を用いて、‖ x − c ‖ と書けるから、半径 r の円の方程式は
‖
x
−
c
‖
=
r
{\displaystyle \|\mathbf {x} -\mathbf {c} \|=r}
となる。各点の成分表示が c ≔ (a , b ), x ≔ (x , y ) と与えられれば、
r
2
=
‖
x
−
c
‖
2
=
(
x
−
a
)
2
+
(
y
−
b
)
2
{\textstyle r^{2}=\|\mathbf {x} -\mathbf {c} \|^{2}=(x-a)^{2}+(y-b)^{2}}
は上記の円の方程式である。
媒介変数表示
(a , b ) を中心とする半径 r の円の方程式を正弦函数 および余弦函数 を用いて
{
x
=
a
+
r
cos
(
θ
)
y
=
b
+
r
sin
(
θ
)
(
0
≤
θ
<
2
π
)
{\displaystyle {\begin{cases}x=a+r\cos(\theta )\\y=b+r\sin(\theta )\end{cases}}\qquad (0\leq \theta <2\pi )}
と媒介表示できる。幾何学的には、媒介変数 θ を (a , b ) から出る (x , y ) を通る半直線 が、始線(x -軸の正の部分)に対してなす角の角度 と解釈できる。
円の別の媒介表示が半角正接置換 により、
{
x
=
a
+
r
1
−
t
2
1
+
t
2
y
=
b
+
r
2
t
1
+
t
2
{\displaystyle {\begin{cases}x=a+r{\frac {1-t^{2}}{1+t^{2}}}\\y=b+r{\frac {2t}{1+t^{2}}}\end{cases}}}
と与えられる。幾何学的には、この媒介変数 t の r に対する比を、中心を通り x -軸に平行な直線に関する立体射影 として解釈できる。この媒介表示は、t が任意の実数のみならず無限遠点においても意味を持つが、その一方で円の最も下にある一点は表せないので除かなければならない。
その他の標準形
三点標準形
同一直線上 にない三点を (xi , yi ) (i = 1, 2, 3 ) とすると、その三点を通るという条件を満たす円は一つに決まり、その方程式を
(
x
−
x
1
)
(
x
−
x
2
)
+
(
y
−
y
1
)
(
y
−
y
2
)
(
y
−
y
1
)
(
x
−
x
2
)
−
(
y
−
y
2
)
(
x
−
x
1
)
=
(
x
3
−
x
1
)
(
x
3
−
x
2
)
+
(
y
3
−
y
1
)
(
y
3
−
y
2
)
(
y
3
−
y
1
)
(
x
3
−
x
2
)
−
(
y
3
−
y
2
)
(
x
3
−
x
1
)
{\displaystyle {\frac {({\color {green}x}-x_{1})({\color {green}x}-x_{2})+({\color {red}y}-y_{1})({\color {red}y}-y_{2})}{({\color {red}y}-y_{1})({\color {green}x}-x_{2})-({\color {red}y}-y_{2})({\color {green}x}-x_{1})}}={\frac {(x_{3}-x_{1})(x_{3}-x_{2})+(y_{3}-y_{1})(y_{3}-y_{2})}{(y_{3}-y_{1})(x_{3}-x_{2})-(y_{3}-y_{2})(x_{3}-x_{1})}}}
という形に表すことができる。これは行列式 を用いて
|
x
2
+
y
2
x
y
1
x
1
2
+
y
1
2
x
1
y
1
1
x
2
2
+
y
2
2
x
2
y
2
1
x
3
2
+
y
3
2
x
3
y
3
1
|
=
0
{\displaystyle {\begin{vmatrix}x^{2}+y^{2}&x&y&1\\x_{1}^{2}+y_{1}^{2}&x_{1}&y_{1}&1\\x_{2}^{2}+y_{2}^{2}&x_{2}&y_{2}&1\\x_{3}^{2}+y_{3}^{2}&x_{3}&y_{3}&1\end{vmatrix}}=0}
と表すこともできる。
射影平面
射影平面 上の円の方程式は、円上の任意の点の斉次座標(英語版 ) を(埋め込み (x , y ) ↦ [x : y : 1] のもとで) [x : y : z ] と書くとき、その一般形を
x
2
+
y
2
−
2
a
x
z
−
2
b
y
z
+
c
z
2
=
0
{\displaystyle x^{2}+y^{2}-2axz-2byz+cz^{2}=0}
と書くことができる。
極座標系
平面の座標系として、直交座標系 の代わりに極座標系 を用いれば、円の方程式の極座標表示が作れる。円上の任意の点の極座標を (r , θ ) とし、中心の極座標を (r 0 , φ ) (つまり、中心の原点からの距離が r 0 で、φ は原点から中心へ結んだ半直線が、x -軸の正の部分から反時計回りになす角)とするとき、半径 ρ の 円の極方程式 は
r
2
−
2
r
r
0
cos
(
θ
−
φ
)
+
r
0
2
=
ρ
2
{\displaystyle r^{2}-2rr_{0}\cos(\theta -\varphi )+r_{0}^{2}=\rho ^{2}}
と書ける。
中心が原点にあるときには、方程式は r = ρ (θ は任意) という単純な形をしている(極座標系において原点は、動径成分が r = 0 かつ偏角成分 θ は任意と表されるのであった)。
原点が円上にあるとき、方程式は
r
=
2
ρ
cos
(
θ
−
φ
)
{\textstyle r=2\rho \cos(\theta -\varphi )}
と簡約される。例えば、半径 ρ が中心の動径成分 r 0 に等しいときはそうである。
一般の場合の方程式を r について解くことができて、
r
=
r
0
cos
(
θ
−
ϕ
)
±
ρ
2
−
r
0
2
sin
2
(
θ
−
φ
)
{\displaystyle r=r_{0}\cos(\theta -\phi )\pm {\sqrt {\rho ^{2}-r_{0}^{2}\sin ^{2}(\theta -\varphi )}}}
となる。ここで ± の符号を両方取らないと、半円しか記述できない場合があるので注意。
複素数平面
複素数平面 を用いれば、平面上の円は複素数を用いても記述できる。中心が c で半径が r の円の方程式は、複素数の絶対値 を用いて
|
z
−
c
|
=
r
{\displaystyle |z-c|=r}
と書ける。これは本質的に
円のベクトル方程式 と同じものである(複素数平面における複素数の加法および実数倍は、成分表示された平面ベクトルの加法および実数倍と同一であり、複素数の絶対値はユークリッドノルムと同一視できる)。
極形式 を考えれば、
|z − c | = r という条件は、
z − c = r ⋅exp (iθ ) (
θ は任意) と同値であることがわかる(これは上記の
媒介変数表示 に対応する)。
複素数の積に関して |z |2 = z ⋅z が成り立つことに注意すれば、この方程式は実数 p, q および複素数 g を用いて
p
z
z
¯
+
g
z
+
g
z
¯
=
q
{\displaystyle pz{\overline {z}}+gz+{\overline {gz}}=q}
の形に書ける(
p
:=
1
,
g
:=
−
c
¯
,
q
:=
r
2
−
|
c
|
2
{\displaystyle p:=1,\,g:=-{\overline {c}},\,q:=r^{2}-|c|^{2}}
)。この形の方程式は、円だけでなく一般には
一般化された円(英語版 ) を表すものである(一般化された円とは、通常の円となるか、さもなくば
直線 である)。
極方程式 も極形式 を用いれば複素数で記述できる。
接線の方程式
円上の点 P における接線 は、P を通る直径に垂直である。したがって、円の中心を (a , b ) , 半径を r とし、P ≔ (x 1 , y 1 ) とすれば、垂直条件により接線の方程式は (x 1 − a )x + (y 1 – b )y = c の形をしていなければならない。これが (x 1 , y 1 ) を通るから c は決定できて、接線の方程式は
(
x
1
−
a
)
x
+
(
y
1
−
b
)
y
=
(
x
1
−
a
)
x
1
+
(
y
1
−
b
)
y
1
{\displaystyle (x_{1}-a)x+(y_{1}-b)y=(x_{1}-a)x_{1}+(y_{1}-b)y_{1}}
または
(
x
1
−
a
)
(
x
−
a
)
+
(
y
1
−
b
)
(
y
−
b
)
=
r
2
{\displaystyle (x_{1}-a)(x-a)+(y_{1}-b)(y-b)=r^{2}}
の形に書ける。
y 1 ≠ b ならばこの接線の傾きは
d
y
d
x
=
−
x
1
−
a
y
1
−
b
{\displaystyle {\frac {dy}{dx}}=-{\frac {x_{1}-a}{y_{1}-b}}}
であるが、これを
陰函数微分法 を用いて求めることもできる。
中心が原点にあるときは、接線の方程式は
x
1
x
+
y
1
y
=
r
2
{\textstyle x_{1}x+y_{1}y=r^{2}}
となり、傾きは
d
y
d
x
=
−
x
1
y
1
{\textstyle {\frac {dy}{dx}}=-{\frac {x_{1}}{y_{1}}}}
である。原点を中心とする円では、各点の位置ベクトル (x , y ) と接ベクトル (dx , dy ) が常に直交 する(つまり、内積が零になる)から、
x
d
x
+
y
d
y
=
0
x{\mathit {dx}}+y{\mathit {dy}}=0
は微分形の円の方程式である。