円 (数学) 円の幾何学

円 (数学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 12:46 UTC 版)

円の幾何学

三角形や円に関する事柄を扱う幾何学(相似や面積を用いない)は円論と呼ばれ、古来非常に深く研究されてきた。最も平面幾何学らしい幾何学とも呼ばれる。

九点円の定理

三角形の

それぞれの頂点から対辺に下ろした垂線の足(3つ)
辺の中点(3つ)
頂点と垂心を結んだ線分の中点(3つ)

は全て同一円上にある。この円のことを九点円と呼ぶ。

六点円の定理

三角形のそれぞれの頂点から下ろした垂線の足から他の二辺に下ろした、合計 6 個の垂線の足は、同一円周上にある、という定理。中学で習う円の性質だけで証明することができるが、かなり難解。

パスカルの定理

円に内接する六角形の対辺の延長線の交点は一直線上にある。さらに拡張して、二次曲線上に異なる6つの点 P1~P6 を取ると、直線 P1P2 と P4P5 の交点 Q1、P2P3 と P5P6 の交点 Q2、P3P4 と P6P1 の交点 Q3 は同一直線上にある。また、Pi における接線と Pj における接線の交点を Rij とすると、3 直線 R12R45, R23R56, R34R61 は1点で交わる。一番初めの、円に内接する六角形の証明は、うまく補助円を書くことで、円の性質と三角形の相似だけですることができる。

フォイエルバッハの定理

三角形の内接円は、九点円に内接する。

一般化

球面・超球面

3 次元ユークリッド空間においてある点からの距離が一定であるような点の集合を球面という。内部を含めた球面をという。一般に、n を自然数とするとき、n + 1 次元ユークリッド空間においてある点からの距離が一定であるような点の集合のことを、n 次元球面といい、Sn と書く。円は 1 次元球面である。

円錐曲線

2つの点(焦点と呼ばれる)からの距離の和が一定であるような点の軌跡を楕円という。楕円は一般に円を潰したような形をしており、楕円のうち特別な場合――2つの焦点が一点で一致する場合――が円である(このとき、焦点は「円の中心」と呼ばれる)。一般の楕円でなく円であることを特に明示したいときには、円のことを正円(せいえん)または真円(しんえん)と呼ぶことがある。

距離円、ノルム円

異なる p に対する p-ノルム単位円を図示したもの。

「定点からの距離が一定である点全体の成す集合」として円を定義するならば、定義に用いる「距離」の定義を変えれば異なる形状の「円」を考えることができるということになる。p-ノルム英語版の誘導する距離は

で与えられる。ユークリッド幾何学における通常のユークリッド距離:
p = 2 の場合である。

タクシー幾何学で用いるマンハッタン距離L1-距離)は p = 1 の場合であり、この距離に関する円(タクシー円)は各辺が座標軸から45°ずれた正方形となる。半径 r のタクシー円の各辺の長さは、ユークリッド距離で測れば 2r だが、タクシー距離で測れば 2r である。よって、この幾何学で円周率(半径に対する周長の比)に相当するものは 4 ということになる。タクシー幾何学における単位円(半径が 1 の円)の方程式は、直交座標系では , 極座標系では と書ける。これは、その中心のフォンノイマン近傍英語版である。

平面上のチェビシェフ距離L-距離)に対する半径 r の円もまた各辺の長さが 2r の正方形(ただし、各辺は座標軸に平行)であるから、平面チェビシェフ距離は平面マンハッタン距離を回転およびスケール変換したものと看做せる。しかし L1L の間に成り立つこの同値性は他の次元に一般化することはできない。

その他の円を特別の場合として含む曲線族

円は他の様々な図形の極限の場合と見ることができる:

  • デカルトの卵形線は焦点と呼ばれるふたつの定点からの距離の重み付き和が一定となるような点全体の成す軌跡である。各距離に付ける重みが全て等しいとき楕円となり、離心率0 であるような楕円として円が得られる(これは二つの焦点が互いに重なる極限の場合であり、一致した焦点は得られる円の中心となる)。ふたつの重みのうちの一方を 0 として得られるデカルトの卵形線としても、円が得られる。
  • 超楕円は、適当な正数 a, b > 0 と自然数 n に対する の形の方程式を持つ。b = a のとき超円と言う。円は n = 2 となる特別な超円である。
  • カッシーニの卵形線は二つの定点からの距離の積が一定となるような点全体の軌跡を言う。ふたつの定点が一致するとき、円が得られる。
  • 定幅曲線は、その幅—図形の幅は、それを挟む二つの平行線が、各々その図形の境界と一点のみを共有するときの、それら平行線間の距離として定める—が平行線の方向のとり方に依らず一定であるような図形を言う。円はもっとも単純な定幅曲線形の例である。

拡幅円弧の長さ

半径 R の円弧上の始点で幅 w1、終点で幅 w2 の拡幅円弧の長さの計算

とすると、

ゆえに、拡幅円の長さは、平均半径に中心角をかけたものとなる。


  1. ^ デジタル大辞泉【半径】[1]
  2. ^ 精選版 日本国語大辞典【半径】[2]
  3. ^ もっと数学の世界、「原点はオー!」
  4. ^ 精選版 日本国語大辞典『虚円』 - コトバンク
  5. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『点円』 - コトバンク





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