ミツバ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/26 20:16 UTC 版)
生産地
ミツバは、収穫後にすぐに品質が落ち始める軟弱野菜の一つで、消費者のもとにすぐ届くような近郊農業で生産される作物である[16]。日本の主な産地は、茨城県、埼玉県、千葉県、静岡県、愛知県などである[17]。
2019年度(令和元年度)の日本全体の年間生産量は1万4000トン (t) 、作付面積は891ヘクタール (ha) である[16]。都道府県別の収穫量割合は、千葉県 19%、愛知県 13%、茨城県 12%となっており、この3県で全国シェアの50%以上を占める[16]。市町村別では、大分市(大分県)が最も収穫量・出荷量ともに最多で、これに浜松市(静岡県)、愛西市(愛知県)が続く[18]。日本全体のミツバの生産量は年々減少する傾向にあり、過去14年で約24%の減少、作付面積も約28%減少しているが、単位面積当たりの収量は微増している[17]。
利用
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 66 kJ (16 kcal) |
4.0 g | |
食物繊維 | 2.5 g |
0.1 g | |
1.0 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(8%) 61 µg(7%) 730 µg |
チアミン (B1) |
(3%) 0.03 mg |
リボフラビン (B2) |
(8%) 0.09 mg |
ナイアシン (B3) |
(3%) 0.4 mg |
パントテン酸 (B5) |
(6%) 0.29 mg |
ビタミンB6 |
(3%) 0.04 mg |
葉酸 (B9) |
(11%) 44 µg |
ビタミンC |
(10%) 8 mg |
ビタミンE |
(5%) 0.7 mg |
ビタミンK |
(60%) 63 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(1%) 8 mg |
カリウム |
(14%) 640 mg |
カルシウム |
(3%) 25 mg |
マグネシウム |
(5%) 17 mg |
リン |
(7%) 50 mg |
鉄分 |
(2%) 0.3 mg |
亜鉛 |
(1%) 0.1 mg |
銅 |
(4%) 0.07 mg |
セレン |
(1%) 1 µg |
他の成分 | |
水分 | 93.8 g |
ビオチン(B7) | 1.9 µg |
軟白栽培品 ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した。 | |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
数少ない日本原産の野菜の一つで[12]、葉と茎、蕾が食用にされる[10]。野菜としての旬は、糸三つ葉が通年、根三つ葉が3 - 4月、切り三つ葉が12 - 2月といわれ[13]、早春のものが特に香りもよくおいしいとされる[12]。葉の緑色が鮮やかで、茎とともに変色がなく、全体にピンとして瑞々しいものが市場価値の高い良品とされる[13][8]。 昔から野生種を食用にしていたといわれ、現代では見た目のかわいらしさとさわやかな香りを生かして、様々な和風料理に彩りを添えるために重宝されている[13]。野生のものは特に香りが強く、鎮静や食欲増進に効果的といわれる[10]。野生のものを採取する際は、自然保護の観点から根際からナイフで切りとって、根を残すことが推奨されている[10]。
刻んで薬味にしたり、茹でておひたしや和え物とするほか、煮浸し、吸い物、汁の実、鍋物、茶わん蒸し、雑煮、天ぷら、丼物の具、卵とじなどにして幅広く用いられる[10][9]。調理の下ごしらえで茹でる際には、火の通りが早く茹ですぎると風味が損なわれる食材のため、短時間で手早く茹でてすぐに水にとって冷ます[14]。冷まし方が足りなかったり、水につけすぎると、緑色が変色したり、栄養素が逃げる原因となる[14]。
栄養素
水耕栽培されている糸三つ葉や切り三つ葉に比べて、農地栽培されている根三つ葉は栄養価が高く、特にβ-カロテンやカリウム、カルシウム、鉄を多く含む緑黄色野菜である[13][8]。根三つ葉のビタミンC含有量は、糸三つ葉の1.5倍、鉄は約2倍含まれている[13]。3種のミツバのうち、糸三つ葉、根三つ葉、切り三つ葉の順にカロテン量が多いが、糸三つ葉のカロテンは可食部100グラム (g) 中に3200マイクログラム (μg) 含まれ、これは同じセリ科のセリを大きく凌ぐ量で、切り三つ葉でも730 μgも含まれている[9]。ミツバに含まれるこれら栄養素は、貧血予防、疲労回復、肌荒れ予防に有効といわれている[13]。また、ミツバの香り成分には、神経を鎮める作用や不眠改善、食欲増進作用があるといわれている[13][8]。
保存
日持ちしない食材であるため、入手したらできる限り早く食べきるのが望ましい[13][8]。使い残しなどで保存する場合は3 - 4日程度を限度に、糸三つ葉は根を切り離して茎を2 - 3等分にして、濡らしたキッチンペーパーなどを敷いた保存容器に入れて冷蔵する[13]。根三つ葉は、洗わずに濡れたキッチンペーパーで根元を包み、ポリ袋に入れて乾燥防止して冷蔵する[13][8]。
薬用
9月ごろに果実がついたものを採取し、陰干ししたものが民間薬として使われる[10]。風邪の初期症状には、1日量15グラム (g) を600 ccほどの水で半量になるまで煎じ、かすをこしてから就寝前に服用する民間療法が知られる[10]。食欲増進には、お浸しを食べるとよいといわれる[10]。腫れものには生の葉をすり潰して、患部に湿布すると消炎効果があるとされる[10]。
- ^ 米倉浩司『高等植物分類表』(重版)北隆館、2010年。ISBN 978-4-8326-0838-2。
- ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis (L.) DC. subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月29日閲覧。
- ^ "'Cryptotaenia canadensis subsp. japonica (Hassk.) Hand.-Mazz.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 1704252. 2012年7月29日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia japonica Hassk. ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis auct. non (L.) DC. ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cryptotaenia canadensis (L.) DC. var. japonica (Hassk.) Makino ミツバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月20日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 170.
- ^ a b c d e f 講談社編 2013, p. 22.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 23.
- ^ 山岸 喬『北海道 薬草図鑑 野生編』北海道新聞社、1992年。ISBN 4-89363-662-6。
- ^ a b c d e 金田初代 2010, p. 36.
- ^ a b c d e f g h i j k 主婦の友社編 2011, p. 134.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 主婦の友社編 2011, p. 135.
- ^ 栽培および野生ミツバの形態ならびに生態に関する研究 園芸學會雜誌 Vol.33 (1964) No.2 P117-124
- ^ a b c “三つ葉 産地(都道府県)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
- ^ a b “三つ葉 農業”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
- ^ “三つ葉 産地(市町村)”. ジャパンクロップス. アプレス. 2022年2月12日閲覧。
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
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